「絶対返すから立て替えてほしい」$7860の送金リクエスト

「絶対返すから立て替えてほしい」$7860の送金リクエスト

  • 幻冬舎ゴールドライフオンライン
  • 更新日:2021/10/14
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来訪者 PART1

2019年1月8日

Wilson AndrewからFacebookの友達リクエストが届いた。

明るい栗色の巻き毛優しそうな碧色の瞳プロフィール写真のウイルソンはわたしに微笑んでいた。

わたしはひと目見て彼を気に入った。即、ウイルソンからの友達リクエストを承認した。

ウイルソンは、彼自身のことをメッセージで知らせてきた。ウイルソンはドクター。現在はシリア駐在のアメリカ軍で働いている。アメリカに帰って医療センターを開業することが彼の夢。

彼は今44歳。今から10年前に日本人女性と結婚した。つかの間の結婚生活で、奥さんは結婚2年後白血病で亡くなった。

ウイルソンはシングルファーザー。Aliceという10歳の娘がいる。Aliceはアメリカ、フロリダのプライベートスクールに入っている。テルヨフロンベルク、ステキな名前だね。

LINEのIDを教えてくれないか。

ウイルソンとわたしはそれ以降、LINEを使って話をするようになった。ウイルソンから聞かされる話は、シリアの軍の様子。テロリストによって軍人が死んでいく様。

今日は10人、軍人がテロリストに殺された。

今日は2人、軍人がテロリストに殺された。

今日は3人。

今日は……、今日は……。

ウイルソンは自分の心情を語った。あと任務は4ヶ月ほど残ってる。

シリアで死にたくない!

任務が終わるまでに僕は殺される!

シリアから逃げたい!

同時にウイルソンは彼の荷物をわたしの家に送ってもいいか、と聞いてきた。

荷物をわたしの住所に送りたいと言われた時、わたしは戸惑った。一日考えさせて、と告げた。

結局、翌日、自分の住所、電話番号を彼に送った。ウイルソンは任務が終わったら、わたしの家まで荷物を取りに来るという。

そのすぐ後、シリアのR&XDeliveryという運送業者からウイルソンの荷物の運送料金の振込口座がわたしに送られてきた。

運送料金$7,860(約82万円)。――すごく高い運送料!

ウイルソンに運送料金のことを言ったら、ウイルソンいわく、シリアは銀行が閉鎖されている。自分で運送料金を払うことが出来ない。

フロンベルクに会った時に絶対返金するから立て替えてほしい。

ウイルソンから聞かされた荷物の中には、ウイルソンのドクター記録書、貴金属、沢山の本。特にドクター記録書は大事な物。この先もドクターをしていくには、ドクター記録書は必要な物。

わたしは翌日銀行から$7,860を振り込んだ。ウイルソンから友達リクエストを受けて、その2週間後には彼の荷物にかかる運送料金を振り込んでいた。

振り込んだ翌日、銀行からウイルソンへの振込はストップしたとの電話がきた。銀行員は言った。

世の中詐欺師が多い。知らない人には100ドルたりとて振り込まない方がいい。銀行員はわたしのことを心配してそんなアドバイスをしてくれた。そしてウイルソンへの振込をストップした。

そんな銀行員のアドバイスにも耳を貸さず、翌日わたしは他の銀行の支店からウイルソンの荷物の運送料金$7,860を振り込んだ。

まだウイルソンと知り合って間もないのにこの頃にはわたしはウイルソンに夢中になっていた。

来訪者 PART2

2019年3月わたしは東京にいた。

ウイルソンはわたしが東京にいることを知って、彼は東京に行きたいと言ってきた。シリアを出たい。

シリアから東京までは近い。フロンベルクと東京で会ったらアメリカに一緒に帰ろう。フロンベルクと東京で会ったらシリアにはもう戻らない。

ウイルソンは事前にShipping Nation(船会社)の船長と交渉して、わたしが費用を払うと伝えていたらしい。

Shipping Nationからわたし宛にメールが届いた。振込先はみそら銀行。東京までの船賃が50万円。その内訳は乗船費用と燃料費。

その時銀行員のアドバイスが、わたしの頭を過(よ)ぎった。

――知らない人に100ドルたりとて振り込まないほうがいい。

ウイルソンから頼まれた荷物。まだわたしの所に届いてない。荷物の運送料金は1月に、とっくに振り込んだのに。

わたしはその要求を無視した。

ロサンゼルスには日本時間4月1日に戻った。アメリカ時間同日、わたしはロサンゼルスに着いた。

そして同日4月1日、ウイルソンからシリアを脱出したと知らされた。ウイルソンはシリアからトルコのイスタンブールにたどり着いた。

彼がわたしに伝えてきたのは、イスタンブールに着いた時、友達のBrian Davisから$3,000を借りたこと。今はイスタンブールのホテルに宿泊していること。

それから10日後くらいにウイルソンはわたしに少しばかりのお金を送ってほしいと伝えてきた。

彼はホテルに数日泊まって食事してお金を使い切った。Brianに再度お金を貸してほしいとメールを出したけど返事は来ない。手元には一銭も残ってない。iPhoneの電源ももうすぐ切れる。お金が必要とのこと。

銀行員のアドバイスがまた頭を過ぎった。わたしはウイルソンの要求を無視した。ウイルソンは諦めたのか、その時はじめて自らLINE IDを消して、わたしから去った。

もうわたしからは彼に連絡するのは不可能。

テルヨ・フロンベルク,テルヨ フロンベルク

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