社員2人の会社が年600万トンの食品ロスに挑む!生産者とハイブランドを“つなぐ”フードロスバンクの取り組み

社員2人の会社が年600万トンの食品ロスに挑む!生産者とハイブランドを“つなぐ”フードロスバンクの取り組み

  • テレ朝POST
  • 更新日:2021/09/15

テレビ朝日が“withコロナ時代”に取り組む『未来をここからプロジェクト』。

『報道ステーション』では、多岐にわたる分野で時代の最先端を走る「人」を特集する企画『未来を人から』を展開している。

今回取り上げるのは、社会の食品ロスを解決すべく、人と人をつなぐ株式会社FOOD LOSS BANK(フードロスバンク)の社長・山田早輝子(さきこ)さん。

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日本では年間に約2531万トンの食品が廃棄されるなかで、まだ食べられるのに捨てられる“フードロス”が年間約600万トンにのぼる。さらにコロナ禍で出荷先を失った農水産物が増加。

行き場のなくなった食品を、「アルマーニ」や「ブルガリ」といったラグジュアリーブランドが展開するレストランとつなぎ、新たな使いみちを模索する。

国連や各国のVIP、セレブリティとの華麗な人脈を武器に社会問題に取り組む山田さんは、どのような未来を見据えているのか――。

◆ハイブランドと組むことで食材の安心・安全をアピール

ある日、山田さんが訪れたのは東京・銀座にある「アルマーニリストランテ」。世界的に有名なファッションブランドであるジョルジオ・アルマーニが手がけるこのレストランでは、フードロスバンクの協力で規格外の野菜やコロナ禍で出荷先を失った食材が振る舞われている。

傷ついて販売できない岐阜の大根をソテーにしたり、サイズが不揃いのトマトをカプレーゼにしたり…。フードロス食材を取り入れたコース「LOSS FOOD MENU」が、さまざまな工夫を凝らして提供されているのだ。

「本当は食べられるのに、産地で捨てられてしまっている食材がたくさんあります。ちょっと傷がついているだけでもダメ。魚に関しても、入れる箱より少し大きいだけで捨てられてしまっている。そういう食材をきちんとレストランで使ってもらって、皆様に食べていただく。産地で捨てられてしまう食材を少しでも減らしたいというところから始まりました」(山田さん)

味に問題がないのに廃棄される食材をハイブランド企業に紹介し、ほぼ正規の値段で買い取ってもらう事業を展開している。社員はわずか2人。起業からたった1年の小さな会社ながら、数々の有名レストランとコラボしてきた。

高級ブランドと食品ロス。この一見遠い世界にある2つの点を結ぼうと考えた理由とは。

「この規格外品が安心・安全な品質であると分かってもらうためには、ハイブランドの方と組ませていただくのが分かりやすいと思いました。人間はだれでも食べないと生きていけないですし、衣食住のファンダメンタルの部分で変えていけることってすごく大きいですよね。

ただおいしいものを作るだけではなく、こうした取り組みを続けることで他のシェフの人たちもそういうチャレンジをしていってくれるのではないかなと期待しています」

この取り組みに真っ先に賛同したのが、アルマーニリストランテの料理長であるカルミネ・アマランテシェフだった。

「これはチャレンジでした。食材の質も毎回違いますが、同じ味を提供しなければいけないから、料理するのは本当に難しい。だからこそ、私は誇りをもってこのプロジェクトに取り組んでいます」(カルミネさん)

今回は「LOSS FOOD MENU」の一皿を作る工程を見せてもらった。メイン料理のひとつ、魚料理はコロナ禍により出荷先が失われた金目鯛と枝豆を使用した「金目鯛 枝豆 ライムの香りのコンソメ」だ。

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傷などで規格外となった枝豆は塩茹でして、ニンニク、エシャロットとともに炒めていく。野菜でとった出汁で味付けしたら、ミキサーに入れて濃厚な枝豆のソースに。さらにもうひと工夫、炭を使って香りを整える。

「もし全てが完璧な枝豆だったら最終的に全体が甘くなります。でも規格外だと、料理になったときにばらつきが生まれる。だからこそ燻製で少し苦味を入れることで甘い香りとのバランスを取るのです」

この枝豆に合わせるのは、軽く炙った金目鯛。規格外ゆえの複雑さが味のスパイスになり、夏を感じさせるエシャロットの爽やかな酸味が枝豆の甘みを引き出す一皿となった。

「これらの食材は質が悪いわけではないです。むしろ違った食感や、それらをまとめることで、料理にしたときにとても良さが出てくるんです」

◆小泉環境大臣「山田さんは“つなぐ人”である」

山田さんは紹介する食材を探すにあたって必ず現地を訪れ、自分の目で確かめる。この日向かったのは、新潟県・三条市。アルマーニリストランテでも使われた枝豆を出荷する農家の飯塚さんだ。

少しでも傷がついているものにくわえて、豆が1つしか入っていないものは規格外として扱われ、廃棄されてしまう。

「結局、誰かが決めたルールで選別されていくわけで、我々もいつしかそれが当たり前になっていました。でも、私が一生懸命小さい頃から面倒見て育て上げた子どもに対して、どこかの大きい組織や何か大きな力で“お前は不適合者だ”と言われている感覚と同じだと思います。その子にはその子の良さがあるし、そこに焦点をあてていただいたことは、すごくありがたいです」(飯塚さん)

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そこへ新型コロナの影響が追い討ちをかけた。

「居酒屋さんなど枝豆を使っていただける主要なお客さんが営業をうまくできないってなってきて、値段が大暴落したんですよ。もうひどい価格になっちゃって、本当は一番高い時期なのに、最安価で取引されるようになってしまいました」

コロナ禍の飲食店が休業で農家は大打撃。価格調整のため多くの食料が捨てられたという。その話を聞いた山田さんが農家とアルマーニをつないだ。

「我々のような一般の第一次産業者としては、なかなかつながれないようなところにも、フードロスの企画として間に入っていただいて、すごくありがたいです」

この他にも山田さんは現在、全国16県の生産者と取引している。皮に傷がついて売れなくなったオレンジジュースや普段捨ててしまうようなトウモロコシの芯、カボチャのタネを使った丸ごと野菜スティック。

さらに神奈川県で開発されたオレンジ「湘南ゴールド」を使ったマドレーヌなどを製作。それらのプロダクトに“醜さを愛する”という意味の「UGLY LOVE」というブランド名をつけた。

そして今年6月には高級ブランド「ブルガリ」とのコラボ商品「チョコレート・ジェムズ・フォー・サスティナビリティ」も手がけている。

廃棄される予定だった神奈川県・小田原産の梅や、福井県産の唐辛子を使用。包装紙は日本の伝統工芸である佐賀県の手漉きの和紙だ。この和紙をよく見ると、印象的な押花が施されている。

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「(コロナ禍で)結婚式などいろいろな会がなくなってしまって、お花もロスになってしまった。そのお花を和紙に入れ込んで使うことを提案しました」(山田さん)

ブルガリが手がけるレストラン、ブルガリ東京・大阪レストラン総支配人、ファビオ・テスタさんは、このコラボの経緯をこう語る。

「私たちは以前からの知り合いで、彼女が新しいプロジェクトについて話してくれたとき、すぐに賛同しました。私たちにも実行が必要です。何かを変えたいなら一緒に取り組むべきだと思ったのです」

これらのフードロスバンクの取り組みは海外からも高く評価され、日本で初めて国連の教育プログラムの題材にも選出された。そのプログラムの映像には、小泉進次郎環境大臣も出演。フードロスバンクの取り組みについて、どう感じているのかを聞いた。

「山田さんは“つなぐ人”だと思いますね。世界と日本のフードロスの取り組みをつなぐ。そしてラグジュアリーブランドと、農家さんたちが頑張って作ったけど、報われないものをつなげてくれる。

環境問題や気候変動対策において、もちろん国や自治体、企業の取り組みは不可欠ですが、最後は一人ひとりの行動が重要です。そこに足並みを揃えてついてきてもらうために、積極的に発信をしてくれる人を少しでも増やしたいと思っています。

そのなかで、いままでつながらなかったものがつながる。それが相乗効果を生むので、山田さんのような方に世界や日本の中で、これまでつながらなかったところをつないでもらいたいです」(小泉環境大臣)

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彼女の人脈は幅広い。その理由のひとつが食に対する好奇心。

食の知識を総合的に研究する「日本ガストロノミー学会」の代表も務めており、「スペインと日本の関係を発展させるために私を助けてくれている」と語るホルヘ・トレド駐日スペイン大使など、さまざまな人物と公私ともに良い関係を築いているのだ。

華やかな人脈を持つ彼女は一体、何者なのか。

◆早朝から夜遅くまで動き続ける“現場主義”

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東京出身の山田さんは大学卒業後、23歳で単身アメリカに渡り、その後ハリウッドで映画プロデューサーとしての仕事を開始。

エグゼクティブプロデューサーを務めたアル・パチーノ監督主演の『ワイルド・サロメ』は、2011年にヴェネチア国際映画祭でクィア獅子賞を受賞。セクシャルマイノリティの題材に贈られる賞である。

自宅の一室には、アル・パチーノ監督を含め、歌手のスティービー・ワンダーやライオネル・リッチーとのツーショットなど数多くの写真が飾られている。

「マーベル社の創始者のスタン・リーは、私のゴッドファーザーみたいな人で。すごく親しくさせていただいていて、ずっとお互いの誕生日をホストし合っていました。この写真はほんの一部で、いまはコロナで行ったり来たりできないので、みんなが写真を送ってくれたりしたものがとりあえず置いてあります」

映画の世界にいた山田さんが環境問題に向き合うようになったのは2012年。きっかけは長男の誕生だった。

「環境問題は知識としてはあったけど、実際に次世代の子どもたちがどう生きていくのかを考えるようになって。自分がビジネスをしていても、自分たちの子どもたちの世代が、外で遊べるような地球じゃなかったり、おいしいものが食べられる環境になかったら、あまり意味がないのではないかなと思ったんです」

わが子を思う心から、環境問題を自分ごとに捉えるようになったのだ。

「海外生活が長かったので多様性があると思い込んでいたけど、私はただ国際的だっただけでした。ただ、私が海外で学んできたという個性はひとりでは生かせない。いろいろな人たちの自分とは違う個性があるからこそ、自分が多様性の輪に入れるとわかったんです」

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自分はひとりでは何もできない。だからこそ、人と人との縁をつむいでいくことに心血を注ぐ。

「なぜロスになってしまうのかなど、農家さんにいろいろと教えていただいて。レストランでは料理人のみなさんから教えていただいて、つなげられるところからつないでいく。ひとりじめするよりも大義に向かって巻き込んで、みなさんにウィンウィンになってもらいたいんです」

周りを巻き込み、つないでいく。がむしゃらに走り続ける山田さんのある1日を密着取材した。

早朝に降り立ったのは滋賀県。朝6時に東京を出発し、向かったのは比叡山延暦寺。寺の中にある喫茶店とフードロスバンクがコラボするため、打ち合わせにやってきた。

梵字(ぼんじ)を模したメニューに廃棄される食材が使われる予定だ。「自分のお守り本尊を知ってもらったり、仏様、またお寺を身近に感じていただくきっかけに」と住職が考案。

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山田さんは「そこに食品ロスを入れることによって、いろんな環境問題とかに目を向けていただければ」との思いを込める。

現場主義の山田さんは14時に延暦寺での打ち合わせを終えると、すぐさま横浜へ。

向かった先は慶應大学・大学院。システムデザイン・マネジメント研究科の社会課題解決ワークショップを行う授業で、特別講師も務めている。

白坂成功教授は講師として招いた狙いについてこう語る。

「我々がやってきたこととは、全然違うアプローチをお持ちの方だと思います。その切り口の新しさが刺激になるので、我々のやり方と山田さんのやり方を合わせると相乗効果が出ると思い、組ませていただきました」

日も暮れた21時、帰路に着く山田さん。帰宅後にはすぐイギリスとのリモート会議をこなす。

「短く終わって良かったです。あとは国連との打ち合わせが入りそうだったんですが、半分くらいの人が時間が合わないということで、結局延期になりました」

ほっとした表情でこう語る彼女の手元のスマートフォンには、世界各地の時刻が表示されている。

「海外とのやりとりが多いので、やっと日本のことが終わって、今度はヨーロッパの時間になって、今度朝になるとロサンゼルスとかが開く…。この時差があるから寝られなくなるっていう状況です」

怒涛のスケジュールを終え、やっと一息つくも「急に連絡が来ることもあるんですよ。向こうの人って普通にFaceTimeで電話してくるから」と、スーツを着替えずに取材に答え続ける。

寝る間も惜しんで、人と人をつなぐ山田さんの見る未来とは――。

「やっぱり地球の資源は有限なので、環境の悪化をどうやって食い止めるか。そこに個々人がどれだけ共感できるかについては、まだまだこれからだと思います。大企業でもないうちの会社にできることなんて限られているから、まずは自分とその周りから、少しでも共感してもらって一緒にやっていくのが大事です。

つながりがひとつずつ増えていくことによって、みんなが“自分ごと”化して、いつか“物差しが変わったんだ”と感じられるのかなと思います」

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<構成:森ユースケ>

※関連情報:『未来をここからプロジェクト

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