話題沸騰〈東急歌舞伎町タワー〉内に設置された現代アートを徹底案内!

話題沸騰〈東急歌舞伎町タワー〉内に設置された現代アートを徹底案内!

  • カーサ ブルータス
  • 更新日:2023/05/26

May 26, 2023 | Art, Architecture, Design | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano

4月に開業した〈東急歌舞伎町タワー〉。永山祐子が外装デザインを手がけたタワーにはあちこちで現代アートが出迎えます。ホテルなど、施設を利用しないと見られないエリアも含めて新宿のエネルギーが凝縮された空間を紹介します。

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2階のフードホール〈新宿カブキhall~歌舞伎横丁〉のエントランスに設置されたChim↑Pom《ビルバーガー》。2018年、解体が決まっていた〈歌舞伎町ブックセンタービル〉の全フロアを切り抜き、残置物を挟み込んだオブジェ。 photo_Housekeeper

〈東急歌舞伎町タワー〉は西武新宿駅に隣接した元映画館〈新宿TOKYU MILANO〉の跡地に開業した高さ約225メートル、国内最大級の超高層複合施設だ。地上48階、地下5階、塔屋1階の建物にラグジュアリーホテル〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel〉とエンターテインメントホテル〈HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel〉の2つのホテルとレストランやバー、映画館、劇場、ライブホールなどが入っている。

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1階、パブリックエリアにある篠原有司男のボクシング・ペインティングによる《オーロラの夢》。尾形光琳《燕子花図屛風》へのオマージュだ。シネシティ広場と西武新宿駅をつなぐ通路に面した場所にあり、日々ここを行き交う多くの人が目にする。 photo_Keizo Kioku

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17階ワンフロアを占めるレストラン〈JAM17 BAR〉に設置された西野達《新宿》。彼の屋内恒久設置作品を見られるのは世界中でここだけだ。 photo_Keizo Kioku

このビルでは写真や映像を含む26組の作家がアートを設置している。ビルが大きい分、作品もダイナミックなものが多い。中でも17階のレストランの吹き抜けに設置された西野達《新宿》は圧巻だ。敷地近くに立っていた街灯、新宿区役所や紀伊國屋書店で使われていた家具、新宿に関する書籍などが積み上げられ、天井から下がる。旅行カバンは旅や宿からの着想だ。
「江戸時代の宿場開設に始まる新宿の歴史は、旅籠や遊郭や茶屋から始まる。形態は変われども300年以上も歓楽街としての独自性を保ちながら発展してきたこの地区に俺は興味を持ち、それをテーマにすることにしたんだ。結局重量1トンの歴史になってしまったけどね」(西野達)

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〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉46階「PENTHOUSE Lounge」の青木野枝《空の光》。アンティークガラスの色が壁に映る。 photo_Housekeeper

新宿は水と縁の深い場所だ。〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel〉46階のペントハウス宿泊者専用ラウンジには、青木野枝の《空の光》と題された作品が設置されている。鉄の輪とアンティークガラスで作られた、水の粒を思わせるオブジェだ。

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〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉「PENTHOUSE Lounge」にある青木野枝《空の光》(写真左)。作者は制作中の溶けた鉄も光のように見える、という。 photo_Keizo Kioku

「昼間に陽の光が入ると、壁にアンティークガラスの色が映る。その色合いに自分でもびっくりしました。金色のガラスが陽光を受けてきらめく水玉のようにも見えて」(青木野枝)
39〜44階のエレベーターホールには《水の光》が設置された。こちらも水に宿る光をそのまま結晶化させたようだ。微妙に色合いの異なるアンティークガラスは見る角度によって表情を変える。

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〈THEATER MILANO-Za​​〉6階ロビー、SIDE CORE《Patchwork my city》。この写真のどこかにネズミが写っている。 photo_Housekeeper

6〜8階にある劇場〈THEATER MILANO-Za​​〉のホワイエの床には地図のような模様が描かれているが、よく見ると巨大な手の形をしている。別の場所にはこれもまた巨大な足跡がある。これはストリート・カルチャーを思わせる作品を多く制作しているアーティスト・ユニット、SIDE COREによるもの。さまざまな属性の人が行き交う新宿の街を凝縮したような作品だ。この作品には小さなネズミがいて、そのネズミが街を見下ろしているようにも見える。どこにネズミがいるのかは現地で実際に探してみてほしい。

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〈THEATER MILANO-Za​​〉6階ロビー、SIDE CORE《Patchwork my city》。シアターのホワイエの床を見下ろしたところ。大きな手の形が見える。 photo_Keizo Kioku

このほかにSIDE COREは3つの壁をキュレーション、鹿児島の「しょうぶ学園」工房の作家やSIDE COREのコミュニティの作家の作品をコラージュのように展示した。サイズも手法もモチーフもさまざまな作品が並列され、和音やノイズが混ざった音楽を奏でるように見える。

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〈109シネマズプレミアム新宿〉10階Premium Lounge「OVERTURE」の壁面に設置されたのは、竹中美幸による《ミラノ座の記憶》。35ミリフィルムを素材に、新宿ミラノ座で使われていたアイテムや昔の歌舞伎町の記録写真などをモチーフにしている。 photo_Keizo Kioku

〈109シネマズプレミアム新宿〉はかつて〈新宿TOKYU MILANO〉内にあった「新宿ミラノ座」の遺伝子を受けつぐ映画館。この〈109シネマズプレミアム新宿〉では先ごろ逝去した坂本龍一が音響を監修、9階・10階のメインラウンジと各シアター内に流れるオリジナル曲も制作した。1960年代に新宿の高校に通っていた坂本は、新宿のジャズ喫茶や映画館を訪ね歩いたという。熱い時代の息吹が氏の音楽で甦る。

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〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉の1階エントランス「BELLUSTAR ONE」に設置された佐々木類《忘れじの記憶》。 photo_Housekeeper

佐々木類の作品は板ガラスの間に植物を挟んで焼成したもの。植物は灰となり、その植物が取り入れていた水分や空気、土は泡となって残る。今回使われた植物は、新宿や作者のアトリエがある金沢市近郊で採取した。土地の記憶と植物の生命の痕跡を封じ込めたアートだ。

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ライブホール〈Zepp Shinjuku (TOKYO)​​〉地下3階のダンスフロア「RING」で私たちを踊らせてくれる安立喜一朗《Hollow Moon (Ring)》、《Hollow Moon (Donut)》、《Hollow Moon (Washer)》。 photo_Keizo Kioku

ライブホール〈Zepp Shinjuku (TOKYO)​​〉地下3階のダンスフロアには安立喜一朗がかつてバブル期のディスコにあったミラーボールのようなオブジェを設置した。が、実際にはそれは球体ではなく、リング状になっている。闇の太陽のように妖しく周囲を照らすオブジェは、穴を通じて過去と現在をつなぐ。

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〈Zepp Shinjuku (TOKYO)​​〉地下2階ラウンジ「R Bar」、淺井裕介《大地のこだま》。壁3面を覆っている。 photo_Keizo Kioku

〈Zepp Shinjuku (TOKYO)​​〉、地下2階のバーラウンジの壁は淺井裕介が現場で描いた泥絵で覆われている。〈東急歌舞伎町タワー〉の建設現場や花園神社など、歌舞伎町とその周辺で採取した土が素材だ。音楽と地層、水脈をテーマにした絵は地下にうごめく微生物の生命がリズムに合わせて脈動しているようにも感じられる。

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〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉45階のレストランにある大巻伸嗣《Gravity and Grace: Lusidus (Lucida)》。頭上に月が上ってきたようなSF的な光景が広がる。 photo_Keizo Kioku

〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉45階にある天井の高いレストランとバーでは大きな窓からの景色と大巻伸嗣の作品が同時に楽しめる。モチーフはかつての新宿の水景からインスピレーションを得た水紋や花など。屋内に星か月が浮かんでいるような、奇妙な感覚におそわれる。

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〈HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel​​〉、鷲尾友公アートルーム《Nobody’s studio DISC-32》。鷲尾は音楽やストリートカルチャーとの関わりも深い。 photo_Keizo Kioku

18〜38階のエンタテイメントホテルにはアーティストが手がけたスペシャルな客室がある。その一つ、鷲尾友公の部屋はモザイクタイルなどによるレトロな雰囲気の壁画が印象的な空間。鷲尾がセレクトしたレコードをヴィンテージのスピーカーで聴くこともできる。

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〈HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel​​〉、鷲尾友公アートルーム《Nobody’s studio DISC-32》。新宿の現在・過去・未来を表現したレトロなモザイクタイルと、備え付けのレコードが聴けるレコードプレイヤー。 photo_Housekeeper

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〈HOTEL GROOVE SHINJUKU , A PARKROYAL Hotel〉、開発好明アートルーム《カセットテープ》。窓際の、ラジカセをプリントしたスツールに腰掛けてカセットテープを聴くのも一興。開発が採集した街の音や懐かしい記憶がよみがえるプレイリストを楽しめる。 photo_Keizo Kioku

開発好明の客室を埋め尽くすカセットテープには多種多様なジャンルの音楽や、作家が新宿で採集した音が収められている。カセットテープは部屋に3台ある、これもまたレトロなラジカセで再生できる。壁面と床とが逆転したかのような部屋は玉山拓郎によるもの。空間の感覚を揺らがせる。

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〈HOTEL GROOVE SHINJUKU , A PARKROYAL Hotel〉、玉山拓郎《Unfamiliar Presences : Room (Red)》。壁から飛び出すフロアランプがベッドサイド・ランプになる。 photo_Housekeeper

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〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉ペントハウス客室には荒木経惟《花曲》が。新宿は荒木が愛する街の一つだ。 photo_Keizo Kioku

上階を占めるラグジュアリーホテル〈BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel​​〉ペントハウス客室内にも写真作品などが飾られている。荒木経惟、森山大道ら、新宿と縁の深い作家の写真や、細倉真弓が歌舞伎町の街を撮り下ろしたシリーズなどが眼下に広がるリアルな街の眺めとは違う新宿の姿を見せてくれる。

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〈東急歌舞伎町タワー〉外観。歌舞伎町のエネルギーが吹き上がるよう。ⒸTOKYU KABUKICHO TOWER

永山祐子が担当した外装デザインも吹き上がる噴水をモチーフにしている。下層部などには波打つ広い海を現す「青海波」をアレンジした意匠をあしらった。煩悩を空に向かう水で吹き飛ばしてくれそうな建築が歌舞伎町の新しいランドマークになる。

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