「甲子園常連校が独立リーグチームと提携」の衝撃

「甲子園常連校が独立リーグチームと提携」の衝撃

  • JBpress
  • 更新日:2017/11/13
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独立リーグBFLの「兵庫ブルーサンダーズ」「和歌山ファイティングバーズ」が2つの高校と教育提携した。11月7日に行われた記者発表の様子(筆者撮影、以下同)

2013年、関西の独立リーグBFL(ベースボールファーストリーグ)所属の「兵庫ブルーサンダーズ」が芦屋学園(兵庫県芦屋市)と提携し「兵庫ブルーサンダーズ育成軍」を作ったことが、野球界で大きな話題となった。

芦屋学園は中高一貫教育の学校法人で、大学も併設している。芦屋学園の高校、大学の野球部に所属すると、育成軍入りして、実力次第でBFLの試合に出場することができる。

高野連に加盟していないから甲子園に出ることはできないが、高野連加盟の他の高校では得られない「プロの指導」を受けることができる。全くこれまでとは違う、プロ野球への道が開かれたのだ。

育成軍の実質スタートは2014年度からだが、2016年には育成枠で2人、今年は楽天のドラフト5位で芦屋大学所属の田中耀飛選手が指名された。育成軍は順調に実績を積み重ねている。

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提携相手は通信制高校と甲子園常連校

そうした中、11月7日、2013年を超える衝撃的なニュースが入ってきた。BFLの2球団が、芦屋学園以外の2つの高校と新たに教育提携した。おまけにそのうち1校は甲子園常連校だ。

提携内容の骨子は以下の5点である。

(1)高校との提携を行うBFL球団は、高下沢(こうげ・たく)が球団代表を務める「兵庫ブルーサンダーズ」と「和歌山ファイティングバーズ」の2球団。

(2)提携先の高校は、大阪の「早稲田大阪学園向陽台高等学校」と、鹿児島の「神村学園高等部」の2校である。向陽台高校の学生は兵庫ブルーサンダーズに所属し、神村学園高等部の学生は和歌山ファイティングバーズに属することになる。

(3)両校の学生は、通信制を使って兵庫なり和歌山で学びつつ、野球練習を積む。

(4)両校の学生は、入団テストに合格して育成チームに入る必要がある。育成チームに入ると各球団から統一書式の契約を結ぶ。育成チームの人数は31人を上限とし、教育リーグを形成する。

(5)キャッチフレーズは「成功の道は1つではない」。プロ野球を目指す学生に、もう1つの選択肢をという願いが込められている。

向陽台高等学校は通信制高校で、もともと日本紡績協会が会員企業の従業員に教育機会を作ってやろうとして創立された学校である。作った当時の繊維工場は3交代制で24時間稼働していたため、定時制では対応が難しいとして通信制が採用されたという。

その後、全日制の高校がなじめなかったり、世界中に転戦するプロスポーツ選手など全日制の学校に行きづらい学生の教育に力を尽くしてきた。現在は早稲田大学の係属校(法人としては別だが、早稲田の名前を冠する学校のこと)である早稲田摂陵高校と同じ早稲田大阪学園のグループに所属する。

通信制高校と言えば、2012年に長野県から地球環境高校が春のセンバツに通信制高校として初めて出場し、昨年は夏の大会に北海道のクラーク記念国際高校が出場した。都道府県予選で甲子園まで手が届かなくとも、相当なところまで勝ち進んできている他の高校もあり、近年の通信制高校の躍進に注目する野球関係者は多い。

鹿児島の神村学園高等部は野球部創設から14年で春に5回、夏に4回甲子園に出場している。2005年春の大会で初出場した時にはいきなり準優勝したこともある、今年の夏の大会の鹿児島県代表校でもある。いわゆる「甲子園常連校」の1つと言って良いだろう。

神村学園は今回の提携によって、通常の甲子園を目指す野球部と、通信制を使って和歌山で学ぶ、2つの野球部を持つことになる。

プロ野球経験者による指導も

この提携によって、これまで禁じられてきたプロ野球経験者による高校生への直接指導ができるようになる。

なぜプロ野球経験者が高校生の指導ができなくなっているのかというと、戦前は学生とプロとの交流戦は自由にできたが、1932年に政府から野球統制令が出て学生の本分は勉強だということでプロとの交流戦を禁じられたところから始まっている。

戦後、野球統制令はなくなったが、1958年に大阪明星高校が元松竹ロビンズの真田重蔵を野球部監督して招き、真田は1963年同校野球部を甲子園で優勝させた。これが高校生の教育としていかがなものかと批判する大新聞があり、その批判を受けて学生がプロ野球経験者から指導を受けることを禁じられたのである。

兵庫ブルーサンダーズの代表、高下は大学野球部から四国の独立リーグ球団である香川オリーブガイナーズに入り初めてプロの指導を受けた時のことが忘れられない。高下自身はプロ野球には上がれなかったが「もし自分がもっと早くからプロの指導を受けられていたなら、自分もプロ野球に上がれたかも知れない」と思うほどに実践的だったのだ。

だからこそ、自分にできなかったプロ野球選手になるという夢を持つ学生たちに、自分が求めていた環境を与えてやりたい。また、野球を続けたいが、さまざまな理由で高校野球部を去らねばならなかった球児たちに続けられるチャンスを与えたかった。そう思って始めたのが芦屋学園との提携による兵庫ブルーサンダーズ育成軍である。

育成軍はNPB(日本プロ野球)との交流戦も行い、プロと自分たちの差を目の当たりにすることもできる。そうした環境が生徒の向上心を刺激するのは想像に難くない。育成軍を始めて2年目で結果を出したことが、今回提携する2校の背を押したのだろう。

11月7日に行われた記者会見では、向陽台高校の井上副校長と神村学園の神村理事長が出席したが、今回の提携に魅力を感じた理由が違うのが興味深かった。

向陽台高校の井上副校長は、兵庫ブルーサンダーズが野球による教育で地域を担う人材の育成に力を入れているところに魅力を感じているという。今の高校生は年代の違う人と交流するのが先生と親だけになりがちだ。この提携によって年代の違う「大人」と交流することで生徒が社会性を早くから身に付けられることに期待を寄せた。

神村学園の神村理事長は、同校は15年で何度も甲子園に出たが、自校のみならず、他校でもプロになれる人はごくわずかである現実に忸怩たる思いを抱いていたようだ。これまでとは違う「新しいスタイル」の選択肢を持つことで、生徒の夢が実現できる可能性が増えることを素直に喜んでいるように見えた。

全ては学生の可能性を広げるため

最後に1つ、今回の記者会見は大阪の近畿医療専門学校で行われたが、この学校も野球チームを持ち、今回の提携に参加する。

同校の小林理事長によれば、生徒に野球をしていた者が比較的多く、野球を続けさせてやりたいと思ったのと、もしケガなどで野球ができなくなった時にはスポーツトレーナーなどでプロスポーツと関わっていけることから提携を決めたと言う。

多くのプロをサポートする人材を育成してきからだろう。同校玄関には、オリンピックのトレーナーなど、同校卒業生がサポートしたとおぼしき多くのスポーツ選手のサインやユニフォームが飾られている。

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近畿医療専門学校の玄関

独立リーグであるBFLが核になって、これまでにはなかった選択肢を用意して「成功の道は1つではない」を実現しようとしている。全ては学生の可能性を広げるために多くの大人が共同歩調をとるのは、見ていて気持ちの良い記者会見であった。

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