欧州委EV電池版エアバス設立で始まる世界大競争

欧州委EV電池版エアバス設立で始まる世界大競争

  • アゴラ
  • 更新日:2017/10/12

今日の日経夕刊に以下の記事が載ったことで、私は2010年に財務省の高官と彼の執務室で交わしたある議論を思い出した。

欧州委、EV電池版エアバス設立へ 来年初めに行程表【ミュンヘン=深尾幸生】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は11日、電気自動車(EV)用電池の欧州企業による大規模生産に向け2018年2月にロードマップを策定すると発表した。仏独などの航空機産業がひとつになって誕生したエアバスの成功を念頭に、欧州企業の知見を結集する「電池版エアバス」を目指す。EVの主要部材ではアジア企業が先行しており、地域間の主導権争いが激しくなりそうだ。 日本経済新聞

当時はまだ民主党政権だったが、「質の高いインフラ輸出」の議論は既に起きていて、「太陽光発電パネルの製造で日本は勝ち残れるか?そこに政府として輸出支援をすべきか」という話をした。彼は否定的だった。曰く「太陽光パネルは半導体シリコンウエファーの半製品のようなもの。品質での差別化などとてもできない。価格競争力で劣る日本企業に勝ち目はない。」

当時、世界シェアの首位の座をシャープとドイツのQセルズが争っていて、アメリカのファーストソーラーと残りの日本勢、すなわち京セラ・ソーラーフロンティア・サンヨー(後にパナソニックに買収される)・東芝がそれを追っていた。大規模な需要のある市場に立地する企業は強い。グリーンニューディール政策(ドイツが道筋をつけてオバマが加速させた)の下で、ドイツで太陽光発電がブームに湧いた。伝統的に需要のあった日本企業も強かった。

それから7年後の現在、その政府高官の言ったことは概ね正しかった。安い生産コストと大規模な設備投資を仕掛けた中国企業の製品が世界市場を席巻した。

こんな逸話がある。当時私はインド市場でメガソーラー発電プロジェクトの組成をしていたのだが、ある日本メーカーの方が愚痴をこぼされていた。中国企業と価格競争しても勝てないと。彼によれば、中国企業は納入先に金額部分を空白にした見積書を渡すのだそうだ。お客の言い値でいいと、いくらでも良いから買ってほしいと。真偽のほどは定かではないが、ありそうな話だ。なぜならば、彼らは国を挙げてシリコンの山元から抑えて、想像を絶する規模の生産設備を作り、それを国内の発電会社に販売する。それでも捌けない過剰在庫を外国にばらまく。いってみれば、限界費用ゼロである。ただでもいいから引き取ってほしいという世界だ。

こうしたダンピングといってもいい、熾烈な価格競争と倍々投資のチキンレースについていけなかったドイツQセルズは倒産した。シャープも堺新工場の中途半端な設備投資が祟り、鴻海精密工業に買収されるきっかけを作った。今、日本・米国・欧州にあるメガソーラーのほとんどは中国製だといっても差し支えない。中国以外の企業はどこも青色吐息だ。米国のファーストソーラーも例外ではない。だから、トランプ大統領はその事実をもって、中国とオバマをツイッターで罵っている。

しかし、興味深いことが一つだけあった。それは日本の住宅の屋根に置かれた太陽光パネルの6割は依然として日本製だったということだ。2017年の今でもである。だから、日本のメーカーは採算はかなり厳しいはずだが、まだ生き残っている。

ここからいくつかの仮説が得られる。例えば、「日本の消費者は国内製品指向が強く、中国製品がかなり安くても振り向かないこと。BtoBのメガソーラーとは真逆。」あるいは「太陽光パネルの販売チャネルがオープンでないため、外国企業の非関税障壁となっている。」ということだ。

では翻って蓄電池はどうだろうか。消費者が使う蓄電池は概ね3つに分けられる。一つはスマホなどに搭載される小型電池。二つ目は、電気自動車(EV)に搭載されるリチウムイオン電池。三つ目は、太陽光発電で余った電気を貯蔵してあとから使う住宅用蓄電池である。

EV用の電池を選ぶのは、消費者ではなく完成車メーカーである。だから、メガソーラーのそれと同様、BtoBの価格競争市場原理が成り立つ世界なのかもしれない。実際、日本製EVは日本製電池を搭載するが、欧州の高級EVの多くは既に中国(CATLとBYD)と韓国(サムソンSDIとLG化学)の電池が使われている。

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一方で、業界を主導するテスラにはパナソニックがしっかりと食い込んでいて、共同でギガファクトリーを米国に建設し、今現在はこのチキンレースの先頭を走っている。しかし、少しでも気を許せば中国・韓国勢にガブりと食いつかれるかもしれない。パナソニックにどこまで倍プッシュの連続でメガファクトリーからギガファクトリー、さらにはテラファクトリーと掛け金を積み上げるポーカーのような終わりのない競争を続ける覚悟と資金力があるかが鍵となる。そして今、反撃の狼煙を上げた欧州エアバス連合という新たな強敵が現れたわけだ。

テスラ・パナソニック連合の命運はさておき、日本で近未来にEVが普及するとして、そこに搭載される電池が日本製であるとは全く限らない。下手をしたら、EV自体が日本製ではないかもしれない。我々はi Phoneやi padを有り難く使っているが、その電池が中国製であっても全くこだわらない。EV完成車メーカーが車というハードウエアあるいは車につながるデータやら充電やらのシステムといったアプリケーションがしっかりしていれば買うのだ。もはや「もの消費」の時代は終わっていて、「使用感で買う」時代に移っているので電池のスペックは気にしない。

では、家庭用蓄電池はどうだろうか?こちらは、EVとは話がかなり違う。2019年に、太陽光発電の固定価格買い取り制度が終了するいわゆるFIT切れ顧客が40万軒近く出てくる。その多くが余剰電力を貯めて自家消費するために蓄電池システムを購買するだろうと業界は予想している。3割が100万円のシステムを買うとして、1200億円市場が2019年に突如出現するのだ。これはかなりの規模のビジネスである。

消費者の日本製品に対するロイヤリティと閉鎖的な販売プラットフォームに守られて、案外日本製品はいけるかもしれない。今、名乗りを上げているのは、パナソニック・テスラに加えて、東芝・日立マクセル(先日マクセルに改称)・京セラ・GSユアサ・NGK・長州といったところ。実は、この中にも中身は韓国サムソンSDI社製を使っていてロゴだけ日本製とか、あるいは大手商社筋が自社ブランドで中国製品を売っていたりするので、話はそう簡単ではないのだけれど。

それでは、その販売プラットフォームは誰が握るのだろうか。私は株式会社電力シェアリングというベンチャーを運営していて、その波に乗りたいと真剣に考えている。

実は、10月19日(木曜日)に神奈川県川崎市のNEDOで経済産業省が主催されるエネルギー・環境分野ベンチャー企業ミートアップで弊社の蓄電池関連ビジネスプランを発表させていただく機会を得た。ご興味のある事業者の方はぜひご参加いただき議論をさせていただきたい。

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