森喜朗氏回復 がん新薬オプジーボ、60kg患者は年間3500万円

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2016/10/18

今、がん治療には大きな希望が生まれている。世界中が「夢の新薬」として「免疫チェックポイント阻害薬」(商品名・オプジーボ)に注目しているからだ。

最近、この「オプジーボ」という言葉を耳にした人は多いかもしれない。10月上旬、新聞各紙が1面で一斉に〈オプジーボ25%値下げへ〉と報じた。オプジーボは画期的ながん治療薬だが、100mgで約73万円という価格の高さがネックだ。体重60kgのがん患者が1年間使うと年3500万円かかる計算になる。

そこで国はオプジーボの価格を来春にも最大25%引き下げる方針を固めたのだ。医学界が大きな期待を寄せるオプジーボとはどんな薬か。

従来のがん治療では、手術などの「外科療法」、放射線でがん細胞を破壊する「放射線療法」、抗がん剤を投与する「化学療法」が3大療法といわれてきた。ところが、最近では人間の免疫力を利用してがんを退治する「免疫療法」に頼る患者が増えている。

オプジーボは免疫療法の一種だ。これまでの免疫療法では、人間が本来持つ免疫細胞の攻撃力を高めてがんを撃退する治療法だったが、オプジーボは、「逆転の発想」を取り入れた。

「患者の体内では、がん細胞対免疫細胞の戦いが繰り広げられます。この時、がん細胞は免疫細胞の攻撃力を弱める『ブレーキ』を踏んでいます。オプジーボは、このブレーキを無効にして、免疫細胞の攻撃力を復活させる働きがあるんです」(医療ジャーナリスト・田辺功さん)

現在、オプジーボの保険適用は皮膚がんと肺がんの一種に限られている。その効果は絶大だ。悪性の皮膚がんでは、余命半年と思われた患者の体からがん細胞を消し去るなど、劇的な効果を上げている。また、米国の肺がん研究では、抗がん剤が効かない患者、または他の臓器から転移した末期の肺がん患者の死亡リスクを、既存の抗がん剤より4割減らした。

日本の有名人でオプジーボに命を救われたのは、森喜朗元首相(79才)だ。

「昨年、森さんは肺がんの除去手術を受けた後、再発が見つかって抗がん剤治療を始めたものの副作用に苦しみ、体調が悪化していたそうです。ところが12月に保険適用されたオプジーボを投与すると、徐々に体力が回復した。今年初めは自力で階段も上れなかったが、春ごろから急激に改善して現在にいたります」(全国紙政治部記者)

現在、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長として小池百合子都知事と「対決」する森さんからは、重い病を患った様子はうかがえない。

前述の通り、年間3500万円という費用が最大のネックとなるが、保険が適用されれば患者が全額を負担するわけではない。

「日本には、医療費の自己負担が一定限度を超えると軽減される『高額療養費制度』があります。自己負担額は収入によって異なりますが、月15万円を超えることはまずないでしょう。残りの年3000万円ほどは国の負担になります」(前出・田辺さん)

ただし、保険の利かない自由診療では、全額が患者の自己負担になる。乳がんが肺に転移した麻央のケースではどうだろうか。前出の田辺さんは「保険は適用されない」と指摘する。

「(今年6月にがんを公表した)小林麻央さんの場合、肺に転移してもがんの種類はあくまで『乳がん』です。肺にあるがんは『転移性肺がん』と呼ばれ、現在のルールでは、オプジーボを使っても保険は適用されません」

現在、腎細胞がんや悪性リンパ腫の一種などでオプジーボの保険適用を申請中だ。さらに胃がん、食道がん、子宮頸がんなど多くのがんで臨床試験が進んでいる。今のところそれらのがんには保険は利かないが、一定の効果が見込まれているということに他ならない。

米国でオプジーボと同様の仕組みの薬が、乳がんに効くかどうかの研究が行われた。研究チームは、それまでの治療法では手の施しようがないタイプの乳がんに侵され、しかもすでに他部位に転移している患者21人に新薬を投与した。

その結果、4分の1以上の患者に効果があり、そのうち2人はがん細胞が縮小、2人は検査でがん細胞が検出されない「寛解」と呼ばれる状態になったという。今までの医療では太刀打ちできなかった末期の乳がん患者のがん細胞が、体から消えたのである。

もし麻央が自由診療でオプジーボを使うなら、体重など考えると薬代だけでも年間2500万円ほどの治療費が必要となる。しかも1年で治療が終わるとは限らない。簡単に払える金額ではない。また、自由診療はリスクを伴うことも無視できない。

「オプジーボには血球が減って感染症になるなど、さまざまな副作用の危険があります。個人経営のクリニックなどが海外から輸入した免疫チェックポイント阻害薬を患者に適切に投与せず、予期せぬ副作用に対応できないケースもあります。保険適用外の薬は安全性が確立されておらず、さまざまなリスクがあるんです」(グランドハイメディック倶楽部理事で、元国立がんセンターがん予防・検診研究センター・センター長の森山紀之さん)

もし自由診療で使用するにしても、副作用への対応ができるような設備の整った病院で行わなければならない。医療は日進月歩で進化するが、まだまだ限界も多い。

末期がんを明かしたブログで麻央はこう綴った。

《5年後も10年後も生きたいのだーっ》

※女性セブン2016年10月27日号

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