
◆明治安田生命J1リーグ▽第5節 川崎0―0C大阪(18日・等々力陸上競技場)
【川崎担当・岡島智哉】疑惑の判定により、川崎のゴールが取り消される事象があった。
0―0で迎えた後半ロスタイム。川崎のFW宮代大聖がゴールネットを揺らした。しかし、直前に主審がオフサイド・ディレイにより試合を止めていたとして、ゴールが認められなかった。
この局面において、審判団のミスが疑われるシーンは2つあった。
まず1つ目。副審は(副審から見て)ファーサイドのオフサイドを示していた。そのため、DF登里享平からのボールを斜めに走り込んで受けたFW小林悠の動きをオフサイドと判定したとみられる。しかし映像上で見る限り、オフサイドはなかった。
しかし、審判団はオフサイド・ディレイ(プレーオン)を選択したため、小林の動きを見誤ったとしても、ゴールが決まった後に判定を正すことは可能…なはずだった。
そんな状況で、2つ目の疑惑。川崎のオフェンスターンが続く中、主審は川崎の攻撃が終わったと判断してオフサイドの笛を吹いてしまった。
その後5秒も経たずに川崎がゴールネットを揺らしたことから鑑みて、この判断が正しかったかどうかは疑わしい。C大阪守備陣も、笛の音を聞いて足を止めたようには見えなかった(そもそも自信なさげに吹いているので笛の音が聞こえない)
鬼木達監督は「あまり自分がどうこう言うことはないかもしれないですが」と前置きした上で「ジャッジのところで、どのタイミングで笛を吹くのか、吹かないのか、そういうところ(判断)で得点になったかもしれない。選手の頑張りを、何とかできれば良かったなという思いはあります」と首をかしげた。
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現行のルール上、このシーンにおいてVARは介入できない。主審よりも副審よりも“見えている”はずのVARルームに、判定を覆す権限がない。
VARに委ねられるはずのオフサイド・ディレイを主審が切ってしまったことで、ルール上の盲点に入り込んでしまった形。VAR側も地団駄を踏んだに違いない。主審の判断ミスと言える。
また、このプレーの直前、川崎のDF大南拓磨にハンド疑惑があった。これについても、主審よりも副審よりも“見えている”はずのVARルームが判定を覆すためには「明白な間違い」だと主張するだけの根拠が必要となる。川崎の番記者が見てもハンドにしか見えなったが、根拠なしと判断されたとみられる。
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現在のサッカー界は、アナログからデジタルへの過渡期と言える。言い換えれば「不完全」。さらに言えば、日本だけで独自ルールを作るわけにはいかず、その運用や権限については、世界が決めたものに従うだけである。
そのことは重々承知の上で、である。
まず、デジタルの存在意義が問われる、後味の悪い90分となってしまったことは否めない。そして、主審の裁量はまだまだ大きく、何台の専用カメラがピッチを捉えていようが、オフサイドを3Dで処理しようが、主審にはいつ何時も正しい判断が求められることを再認識させられる90分にもなった。