「2022年はここ数年で最もゲームが面白い1年になる」今年注目のゲームとトレンドを予習しよう【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(11)

「2022年はここ数年で最もゲームが面白い1年になる」今年注目のゲームとトレンドを予習しよう【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(11)

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  • 更新日:2022/01/15

2022年のゲーム業界には、ここ数年で最大規模の嵐がやってくる。

そう予感せずにいられない。筆者は長らく批評家としてゲーム業界を取材し、報道してきた。しかし2022年ほどの嵐はそうそうやってこないだろう。それほどまでに、2022年には多種多様なビッグタイトルの到来、そして、トレンドの変化を予感させている。あなたがどれほど普段ゲームを遊んでいるにせよ、何だっていい。2022年の衝撃には十分備えておくべきだ。

Jini

ゲームジャーナリスト

note「ゲームゼミ」を中心に、カルチャー視点からビデオゲームを読み解く批評を展開。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」準レギュラー、2020年5月に著書『好きなものを「推す」だけ。』(KADOKAWA)を上梓。
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ついに始まる。任天堂による大攻勢

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「Pokémon LEGENDS アルセウス」より

2022年の大イベントといえば、何よりも国内ビデオゲームにおける王者、任天堂の帰還だ。

任天堂といえば、2017年のNintendo Switchリリース、そして同時に発表した作品『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『スプラトゥーン2』『スーパーマリオ オデッセイ』の立て続けの大ヒットにより、海外市場を含め大きく躍進を遂げたことは印象深い。

2018年も『Nintendo Labo』『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』、2019年は『ポケットモンスター ソード・シールド』、『リングフィット アドベンチャー』、そして2020年には規格外のヒットとなった『あつまれ どうぶつの森』など、依然、その勢いは衰えを見せていないものの、2022年にはこれらを上回る「大攻勢」が計画されている。

まず2022年1月には『Pokémon LEGENDS アルセウス』が発売を予定している。こちらはポケットモンスターの新作でありながら、立体的なオープンワールドをポケモンと共に自由自在に駆け巡り、野生のポケモンを見つけては実際にモンスターボールを投げて捕まえられる、まったく新しい時代のシームレスなポケモンとなる予定だ。

2022年内には他にも、『スプラトゥーン3』も注目が集まる。銃弾ではなくインクを使ったシューティングゲームで独自の世界観とアートスタイルを一人で堪能できるヒーローモード、さらには友達と遊べるサーモンランなど、様々な遊び方ができる点も特徴的だ。

今作では様々な時代の建築物が合体したようなバンカラ地方で、新たなバトルやファッションのスタイルを挑戦できるとされる。一人用モードのテーマは「哺乳類の帰還」と題され、存在しなかった人類の到来を予期させる(実はただの猫かも)SFチックなテイストなど含め、任天堂の新たな挑戦を垣間見ることができるだろうか。

最後に、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』続編を楽しみにするファンも多いだろう。2021年末に放映された「テレビゲーム総選挙」でも堂々1位を獲得するなど、国内外から高く評価された『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。イマーシブシムなど海外のゲームデザインを取り込みながら、一方で任天堂らしい職人芸を思わせる緻密なレベルデザインと相まって、『ゼルダ』の新地平を拓いた。

もはや行けぬ場所などない、そう思わせるほど広大かつ自由な冒険ができた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』だが、新作ではついに「空」という新たな領域を開拓。空に浮かぶ様々な大陸をパラセイルを駆使して攻略していく様子をトレイラーで見せ、まさに続編にふさわしい冒険譚となることが期待される。

他にも、ハル研究所から『星のカービィ ディスカバリー』、スクウェア・エニックスから『トライアングルストラテジー』、カプコンからは『モンスターハンターライズ サンブレイク』など、サードパーティからの供給も豊富だ。そして昨年10月にはこれらの大作をより快適にプレイするための新型Nintendo Switch(有機EL)も発売された。2022年は任天堂とNintendo Switchハードによる大攻勢に期待せずにはいられない。

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PlayStation 5の逆転

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Photo by Unsplash

このような任天堂の大攻勢に黙っていないのが、同じくゲーム業界の重鎮、ソニー(以下、SIE)だ。2020年11月に新ハードPlayStation 5を発売したSIEだが、その出だしは好調と言い難かった。世界的な半導体不足によって(Xbox Series S/X同様に)供給不足に苦しみ、今も店舗で在庫を見かけることは少ない。

さらに追い打ちをかけるのが、ハード同様にソフトも供給不足だったことだ。2021年はInsomniac Gamesの『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』が傑作と呼ぶべきクオリティを見せたものの、同年発売を予定していたPS5エクスクルーシブ(限定)のタイトルが、コロナ禍の環境変化やキャストの健康事情(※)により延期。結果、インパクトのある初動を迎えることができなかった。

(※)PS4/PS5『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』クレイトス役俳優が“発売延期は自分のせい”と、突如告白。その背景とは

言い換えれば、2021年にリリースできなかったタイトルが、2022年に続々と到着し、PS5の幅が大きく広がるということ。

その最たる例は、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』だ。こちらは2018年最高の評価を受けた『ゴッド・オブ・ウォー』の続編で、シリーズ恒例の力強く迫力に満ちたアクションに加え、新たに父として息子をもうけ、二人三脚で冒険する上で、これまでにない父親としての心情の揺れや過去への葛藤などの機微を描ききった物語が、ビデオゲームとして稀な例だと評価を受けた。

『ラグナロク』はその続編として、いよいよ北欧の神々との対峙を予定しており、前作で印象深かった俳優たちの演技、さらには、考え込まれたカメラワークによる長回しの演出が、PS5の表現力により進化することを期待できる。

もう一つ、同じく2021年から発売が延期されながらも依然として注目されているのが『Horizon Forbidden West』だ。本作はタカラトミー『ZOIDS』のごとく機械化された獣たちが跋扈する大陸を、残された人類の部族として冒険するSFオープンワールドアクションゲーム『Horizon Zero Dawn』の続編となる。

今作からはアメリカ大陸のうち、「禁じられた西部」西海岸が舞台となることもあり、前作と比べて美しい海や広大な平原などの地域が拝める一方、これまで以上に強大かつ巨大な機械獣との戦闘も予期される。こちらもやはり、PS5のスペックを最大限に引き出しつつ、SF的なイマジネーションと冒険のプレイアビリティを拡張しそうだ。

さらに、Xboxハードを含めたサード・パーティも2022年は大いに充実している。まず筆頭に挙げるべきは、世界各国で絶賛されるフロム・ソフトウェアの最新作、『ELDEN RING』だろう。稀代のゲームクリエイター宮崎英高と、伝説的なファンタジー作家ジョージ・R・R・マーティンとコラボもさることながら、シームレスな世界で展開される死闘がどのようなものになるのか、筋金入りのゲーマーたちは涎を垂らしながら悶々とする日々を過ごしている。

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「エルデンリング: ELDEN RING」より

その他にもスクウェア・エニックスとプラチナゲームズによる『バビロンズフォール』、東京を舞台に怪奇的なテーマとなる『Ghostwire: Tokyo』、「ハリー・ポッター」を再話した『ホグワーツ・レガシー』、セガが手掛ける『ソニックフロンティア』、ストラテジーゲームの老舗が作る『Homeworld 3』など、任天堂・SIEに限らず注目の作品は無数に存在し、いよいよ財布と時間が保たない。

インディーゲームも忘れてはいけない。恐竜たちの高校生活『Goodbye Volcano High』、かわいらしい黒猫として冒険する『Stray』、死ぬほどに老いて強くなるカンフーアクション『師父―Sifu―』、インドの母として料理をしながら物語を読み解く『VENBA』、ノワールとサイバーパンクが融合した『CHINATOWN DETECTIVE AGENCY』など、どれも個性的なコンセプトでワクワクする。

今年こそメタバースがやってくるのだろうか?

今回はビデオゲーム産業の中核となるコンテンツを軸に2022年を展望してきたが、一方でビデオゲーム業界全体としての流れやトレンドについても軽く触れておこう。

一つが「ゲームのサービス化(Game as a Service)」である。ゲームのサービス化とは、従来のパッケージごとの販売ではなく、無料ないし有料でゲームを提供した後もアップデートや課金要素を継続的に続け、収益化するビジネスモデルのことを指す。

多くの成功したモバイルゲームはサービス化されたゲームであり、近年ではPC、コンソールでも『Apex Legends』の成功もあり、すでにGaaSは定番化されたと言える。中でも、近年Microsoftが展開するビデオゲームのサブスクリプション「Xbox Game Pass」はその価格から想像できないほどに充実したラインナップで、もはや従来のパッケージ型ゲームさえもサービス化する離れ業を実現。今後、「ゲームを買う」という言葉は稀になっていくかもしれない。既に2010年代から一貫して進められてきたゲームのサービス化は、2022年で一層注目が集まる。

関連記事:Xboxの「サブスク×クラウド」はゲーム業界を変革するか【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(9)

そのような一環で登場が予期されるのが、今話題のメタバースだ。2020年の『あつまれ どうぶつの森』の大ヒットを例に上げるまでもなく、すでにゲームは「ゲーム」としての輪郭を持たない新たなメディアとなっている。さらにはXR、5Gなどの新たな 技術が加わり、メタバースは「ゲームのサービス化」と化学反応を起こして一般化していくと予測される

もっとも、NFT、XR、そしてメタ社(Facebook)など「新しい言葉」を闇雲に繋げてメタバースを正確に捉えることは難しいと筆者は考える。むしろビデオゲームを含む現代のサービスが徐々に変化、進化した末に、メタバース的なものが存在しうるというだけで、コンテンツの形は常に枝分かれしていくものと捉えるべきだろう。

関連記事:バズワードとなるメタバースに生じた「3つの誤解」。時制と媒体、そして正統性への課題点【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(10)

その点でむしろ注目するべきは、YouTube、Twitchなどの動画配信サービスとのシナジーだ。esports分野では昨年『League of Legends』の世界大会「World Championship」が、全世界で合計23億2638万8700時間視聴される驚異的な数字を叩き出し、二次的なコンテンツとしてのゲームの可能性をありありと見せつけた。

また同『League of Legends』原作のアニメ『Arcane』はNetflixで配信がスタートされると51カ国で1位を獲得し、Rotten TomatoesではAVERAGE TOMATOMETER(同サイト公認の批評家によるスコア)が100%と、各方でとてつもない大絶賛を受けたこともあり、「ゲームの二次的な可能性」を大いに見いだせた。

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次ページ:持続可能な開発環境をどう構築するか

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持続可能な開発環境をどう構築するか

このように単にコンテンツのみならず、サービス化されて広がる可能性、二次的な創作を生む可能性など、もはやエンタメという言葉でさえ分類不可能な規模にまで成長したビデオゲーム産業。ただし、このような成長に期待するだけではなく、その裏側にも十分憂慮したい。

その一つが、ビデオゲーム産業における労働環境だ。2021年にはアメリカ大手のゲーム企業Activision Blizzardが、複数の重役によるセクハラ、パワハラを理由にカリフォルニア州の公正雇用住宅局による調査を受けるなど、ゲーム業界における長時間労働やセクハラの指摘が相次いでいる。

事実、2021年から延期をした『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の延期理由に開発者は「素晴らしいチームの健康や福利を犠牲にしないため」と述べており、また2021年に発売した『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』の開発者の一人も、「(少なくとも自分の知る限り)一度も残業することなく最後まで開発を終えられた」と述べている。延期によりPS5の出だしは芳しくなかったが、持続可能な開発環境を作るためにはむしろ英断だと言える。

I'd appreciate ppl sharing this positive. Because it's important. #RatchetPS5 is at 89 avg score & I can't speak for anyone on the team but myself, but I didn't crunch once. 40h weeks the whole time.

It is possible to work on a great game w/o suffering. https://t.co/8GOzukf2sh
— Grant Parker (@GrantPDesign)
June 8, 2021
from Twitter

一貫して成長を続けるゲーム産業。2022年は任天堂とSIEによる艦隊決戦に加え、サードやインディーからも期待の新作が続々と参戦。まさにコンテンツの大嵐なのだが、そこに加え、ゲームのサービス化、二次的なコンテンツの応用、新たなテクノロジーとの合流、そしてそのような素晴らしい夢の数々を誰もが公平に作れる環境作りが少しずつでも実現することを鑑みれば、今年一年ひたすらゲームがトレンドを持っていくのだと断言できる。

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