男性産休で本当に“休んじゃう”人続出、趣旨は「育児出向」です

男性産休で本当に“休んじゃう”人続出、趣旨は「育児出向」です

  • JBpress
  • 更新日:2021/06/11
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(篠原 信:農業研究者)

「男性版産休」(改正育児・介護休業法)が衆議院で可決、成立した。施行時期は2022年10月を想定している。これはこれで、大変大きな前進だ。

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「過酷な」出産直後の育児、男性によるサポート促す法整備

子どもが生まれてから8週間以内に計4週分の休みを取れる育休の特例措置。夫のみ利用することができ、2回まで分けて取得できる。

女性は産後、出産によるダメージから回復もままならないまま、3時間おきの授乳がスタートする。この授乳期は昼も夜もまともに眠ることができず、強烈な睡眠不足でフラフラになる。ワンオペ育児だと、極めて過酷なものとなる。

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男性でも体験を発信する人が増えてきて、ようやく産後の強烈な睡眠不足についても認知度が上がってきたように思う。以下は、私が訴えてきた記事の例だ。

「笑顔で育児ができる社会」にするには何が必要か
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52688

「産後クライシス」回避のコツは母親の睡眠時間確保
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61343

授乳不眠に思う、子育て世帯への社会のまなざし
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61092

男親は知らない、乳児期の子育てはこんなに「過酷」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58559

父親も育児の当事者として、産休を取得することが自然視される空気が醸成され始めたのは、好ましい流れだ。「男性版産休」の法律は、こうした社会の変化を受けたものだろう。

「休暇=休める!」って本気?

ところが、インターネット上でしばしば話題になるのは、産休をとった男性がスマホばかり触っていて、実際には育児も家事もせず、まるで「休暇」をとったかのようだ、という声だ。

「産後休暇」というように「休暇」という名称が「あ、休みをもらえるんだ、ラッキー」という思考を促している側面があるかもしれない。

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オンライン飲み会でそんな話をしていたところ、ある方が「休暇という名前がよくない、『出向』と呼び替えればいい」とおっしゃって、私は思わず膝を叩いた。「そのアイディア、記事にさせてもらっていいですか」とお願いし、快諾いただいたので、今回の記事を書いている次第。

「休暇」ではなく育児現場に「出向」

産前休暇、産後休暇、育児休暇。これらはすべて「休暇」という名称になっている。私も含めて男性は、どうも「休暇」と聞いてしまうと「休めるんだ、ラッキー」と考えてしまいがち。職場も、育児の大変さを十分に理解せず「休みを取って赤ちゃんの世話をするだけなんて気楽でいいよな」と誤解して送り出す場合もあるようだ。

そこで、これを「産前“出向”」、「産後“出向”」、「育児“出向”」、と言い換えてみてはどうだろう。あ、これはしっかり心構えをもって取り組まなければ、という気がしてこないだろうか。

育児の現場は24時間体制、休憩なし。知らぬ間に呼吸が止まりはしないかと不安を抱えながらか弱き命をつなごうと必死になり、その不安から睡眠もろくにとれず、疲労困憊の中で家事もこなさねばならない。検診や予防接種の日程も管理する。上の子がいると赤ちゃん返りも起きたりして、赤ちゃんの世話だけでは済まなくなる。そう、とてつもなく過酷な業務に従事することになる。体力を削られながらマルチタスクをこなす能力を24時間鍛えているのが「産後出向」の実態。

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啓発活動で産後クライシスを防げ

産後出向や育児出向を選択する男性には、行政機関による説明会参加を義務づけるのもよいだろう。

自治体や病院が提供するいわゆる「ママパパ教室」は、産後の生活の変化や沐浴の指導、公的機関による支援の説明を行っているが、いまひとつ、産後の授乳期の過酷さが伝わっていない気がする。

そこで「出向」説明会では、パートナーが苦しむことになる、授乳期の極端な睡眠不足を軽減することの重要性や、男性パートナーが女性パートナーと密に連携することによってこの時期を乗り切ることが、その後の夫婦仲を決定的に変えることをデータで示すのもよいだろう。

産後2年間が最も離婚率が高くなることを、みなさんご存じだろうか。

(外部リンク)産後夫婦ナビ <産後2年が別れ道!産後クライシスを乗り越えた夫婦に共通する3つの特徴>
https://www.3522navi.com/guide/archives/19

昔は男性の間で「女は子どもを生むと変わる」というように理解されていたようだが、私は違う見方をしている。上で述べたように、女性パートナーが拷問の中でも一番きついとされる、極度の睡眠不足で苦しんでいるときに「オレのメシは?」などと言えば、離婚を決意されても仕方がない。男性側が、この時期の過酷さを十分に把握しておく必要がある。

家庭生活の充実は、社会を強くする

夫婦2人だけで頑張ろうとせず、利用できる行政サービスについて紹介することも重要だろう。

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また、母親を対象としがちな育児情報の交換・交流の場とは別に、「子育てなう・男性版」のようなSNSアカウント等を立ち上げて、父親たちに情報交換の場を提供するのも手だろう。こうした予備知識を備えて産後出向、育児出向を迎えれば、心構えも整っているはずだ。

前述の記事のとおり、極端な睡眠不足に陥りやすい授乳期に、男性がパートナーを上手にサポートできれば、その後の夫婦仲も非常に良好になるようだ。家庭が安定すれば、当然、仕事も充実した気持ちで取り組める。職場復帰を予定している妻も、前向きに一歩を踏み出せる。

子育てや介護など、家族は様々な困難に直面する。その都度、家族の課題を、力を合わせて乗り切る。そんな家庭生活を大切にできる社会は、底力のある共同体になると思う。

篠原 信

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