講談社の校閲部には約100年の歴史があります。校閲は、印刷物のゲラ(校正刷り)や原稿の誤植・体裁の誤りを正し、書かれていることの根拠を調べて編集者や著者に提示する、大変奥深い仕事です。
そんな講談社校閲部からの「校閲クイズ」。次の文章のうち、間違っている箇所があります。皆さんは、分かりますか?

<正解> × いぎたなく
決して恵まれた幼時体験とは言えませんね。哀切な気分にとらわれながらも、用語としては気になるところ。
「いぎたない」を漢字で書くと「寝穢い」、要するにむさぼるような眠りとか寝起きの悪さとか、醜い寝相などを形容することばです。この「い」は「眠り」の意であることが次第に忘れられ、「居」と意識されるようになったのか、あるいは「意地汚い」と混同されているのか、そう解釈すれば自然な例がこのところ散見されます。いつまでも重い腰をあげず、ぐたぐただらだらというつもりなんでしょうね。
え、ねそべって半分眠りながら酒を飲んでるシチュエーションは考えられませんか、ですって? ……うーん、可能性としてありえないと言い切ることはできない、といったところでしょうか。あまり想像したくない光景ではありますね。(鷹)
—『熟練校閲者が教える 間違えやすい日本語実例集 (講談社文庫)』講談社校閲部著
構成/mi-mollet編集部

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