学術会議の「大誤報」を露呈したフジ平井文夫・上席解説委員、その知られざる素顔

学術会議の「大誤報」を露呈したフジ平井文夫・上席解説委員、その知られざる素顔

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/16
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「誤解を一部に与えてしまった」

「だって、この(日本学術会議の)人たち、6年ここで働いたら、そのあと(日本)学士院ってところに行って、年間250万円の年金をもらえるんですよ。死ぬまで」

フジテレビの平井文夫・上席解説委員(61)は10月5日放送の情報バラエティー『バイキングMORE』でこう解説し、学術会議メンバーの驚くほどの好待遇を暴いた。司会の坂上忍(53)たちから「えーっ」と一斉に驚嘆の声が上がったのも無理はない。政権に反発する学術会議のエゴが露わになった。

もっとも、この解説が誤りだったのはご存じだろう。学術会議出身者が無条件で学士院の会員になれるわけではない。学士院会員の選考において学術会議出身者かどうかは関係のないことだ。

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photo by iStock

文献等を調べたら簡単に誤りだと分かるので、平井氏はすぐに謝罪・訂正するものと見られた。誰にでも誤りはある。だが、実際にはちょっと違った。

翌6日朝、平井氏はワイドショー『とくダネ!』に出演。「誤解を一部に与えてしまった」と発言したものの、間違いと認めなかった。そして、今度はこう解説した。

「学術会議の会員は学士院の会員に推薦されますが、ならない人もいます」

これも正しい表現とは言えなかった。そもそも学術会議は内閣府の所管である一方、学士院は文部科学省の特別機関で、まるで別組織。2つの組織を関連付けて解説すること自体、無理がある。

平井氏が誤りを認めず、訂正内容も妥当なものとは言い難かったこともあって、朝日新聞、毎日新聞、SNSなどが厳しく批判した。大学教授らも怒りの声を上げた。解説委員の言葉が、ここまで騒動となるのは前代未聞に違いない。平井氏の誤った解説が政権側に利することになるはずだったのも騒ぎが大きくなった背景にはあるだろう。

杉田水脈議員の発言を受けて

平井氏の解説が物議を醸すのは今回が初めてではない。最近では、自民党の杉田水脈・衆院議員(53)が性暴力問題に絡み、「女性はいくらでも嘘をつけますから」と漏らした件の解説も議論を呼んだ。やはり政権寄りと思える内容だった。

杉田議員による発言の後の10月1日、平井氏は『バイキングMORE』で、「かばうわけじゃないが」と断った上で、「杉田さんは非常にちゃんとした保守政治家」と評価を与えた。さらに、杉田議員の発言がたびたび批判にさらされる背景をこう解説した。
「この人は保守なので、反対の人たちから凄く責められる。みんな待っている、失言を。待ってて、カッと来る」

これに反発する声がSNSなどで上がったのだが、確かにレトリックに聞こえた。失言や暴言に保守も左翼も関係ないはず。発言の罪深さに応じて責められるものではないか。

解説委員というと、過去には日本テレビの福富達氏(90)ら何人かのスター的存在がいたが、基本的には目立たぬ立場。だが、平井氏は解説が刺激的ということもあり、耳目を集め、どんどん知名度を上げている。

平井氏は一体、どんな人なのだろう?

「ずっと報道畑を歩み、社会部、外信部、政治部やニュース番組のプロデューサーなどを幅広く経験した。その点、解説者向きと言える。記者として有能だったためかプライドが高い人で、それが発言の誤りを認めなかったことに関係するかも知れない」(元同僚)

社会部時代は医療ネタに強かった

入社年次は立命館大経済学部卒業後の1982年。元ドラマプロデューサーで新卒時にはやはり報道局に配属された大多亮常務(61)の1期後輩である。

「高名な医師の子息で、そのせいもあるのか、社会部時代は医療ネタに強かった。特に1988年から89年にかけての昭和天皇のご病状取材の正確さには報道局内の誰もが舌を巻いた。宮内庁病院とのパイプも太かった」(同・元同僚)

その後はワシントン特派員や報道センター編集長、政治部長などを歴任。そして非ラインの報道局専任局長を経験した後、2011年には解説副委員長に就いた。

「ラインの報道局長になったのは同期のライバル。それまでのサラリーマン人生は順風満帆でしたから、これは蹉跌だったかも知れません」(同局報道マン)

それでもフジ社内での立場は人が羨むものであった。ずっと報道局内のエリート。加えて「報道局内に夫人がいて、仲睦まじい」(同・同局報道マン)というから、やっかまれるくらいなのだそうだ。

2019年には定年となったものの、雇用延長。あらためてフジに迎えられた。2020年4月からは母校・立命大の客員教授も務めている。ちなみに出身高校は安倍晋三前首相(66)のお膝元でもある山口県の名門・県立防府高だ。

「政界情報に通じているのみならず、報道局内の細かな事情にも明るい。いろいろと目が行き届いている人。気さくで明るく、物腰は柔らかい」(同・同局報道マン)

こう聞くと身近に感じてくるが、気になるのは発言内容が押し並べて政権寄り、右寄りに聞こえること。メディアの事情に詳しいある野党議員は以前から「フジの組織的な意図を感じる」と不快感を隠さない。

左に寄っても右に寄っても

もっとも、平井氏の一連の発言やスタンスはフジの指示ではないようだ。

「現在の報道局長は山口真さん。平井さんの3期下で、温厚実直な人。実績のある先輩の平井さんに指示を出すなんて、あり得ない」(同・同局報道マン)

平井氏は自由な立場にあるという。ちなみに山口報道局長の姿は多くの日本人が過去に見ている。1985年のことだ。日航ジャンボ機が御巣鷹の尾根に墜落するという大惨事が起きた時、現場に真っ先に到着し、自衛隊による生存者救出の緊迫した模様を単独生中継したのが、当時は新入社員だった山口局長である。

前出・野党議員は「TBSとテレビ朝日が反自民党的とも受け取れる報道をすると、途端に政府や自民党から追及されるが、その逆と思われることをフジの平井氏がやってもお咎めなし。これはおかしい」と、憤る。

なるほど、放送法の4条2項には「政治的に公平であること」とある。テレビは左に傾くとたちまち矢面に立たされるが、右に寄ってもダメなのである。

だから、新聞社は社説等で政治的意見をぶち上げる論説委員を置いているものの、テレビ局の場合は解説委員しか配せない。テレビ局が政治的意見を唱えたら違法なのである。

もっとも、この放送法4条2項はここ数年ですっかり形骸化したと言っていい。政府がテレビによる政権寄り、右寄りの主張を責めることは皆無なのだから。

4条撤廃が実行されなかった理由

ところが、4条2項の機能が完全に失われたわけではないので、ややこしい。反政権、左寄りの放送を行うテレビ局があろうものなら、前出の野党議員の指摘の通り、政府は途端に動くはず。つまり、この法律は事実上、政権が都合良く使える奇特な法律と化している。

約2年前、安倍前首相は4条すべての撤廃を検討した。その理由の1つは、憲法改正の必要性など政府の考え方をテレビで流しやすくするためと見られた。しかし民放連会長でもある日本テレビの大久保好男会長(70)が難色を示したことなどから、安倍前首相は思い留まったとされる。

だが、4条撤廃が実行されなかった真の理由は違うのではないか。おそらくは4条を残したままでも自分たちの主張は広められると考えたからだろう。反政権、左寄りの主張だけ槍玉に挙げればいいのだから。

政権寄りに見える平井氏の縦横無尽の活躍ぶりこそ、政権側の4条2項に対する現在の考え方の表れに違いない。すぐに誤りと分かる平井氏の解説のミスより、そちらのほうがポイントと見るべきだ。

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