【社説】トランプ氏のアジア歴訪、APEC演説で台無し

【社説】トランプ氏のアジア歴訪、APEC演説で台無し

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/11/13
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ドナルド・トランプ米大統領は初のアジア歴訪を成功裏にこなし、10日はベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で演説した。この演説は、自由で開かれたインド太平洋地域に向けた自らのビジョンを示すはずだった。しかし、代わりに同氏が示したのは、多国間貿易協定に対する激しい反対姿勢だった。

これは米国の友好国を落胆させ、中国に新たなチャンスを与えるものだ。そして、トランプ氏自らが望むと述べているルールに基づいた秩序をも脅かす。その最大の被害者は、米国自身になろう。

トランプ大統領は演説で、「わたしはいかなるインド太平洋地域の国とも二国間の貿易協定を結ぶつもりだ。米国のパートナーになることを望み、公正で互恵的な貿易の原則に従いたいと望む国と協定を結ぶのだ」と述べた。さらに「われわれはもはや大きな協定(多国間協定)には参加しない。それは、われわれの手を縛り、主権を放棄させ、意味のあるルールの履行を事実上不可能にするものだからだ」と語った。

トランプ氏は間違っている。多国間協定は他国が米国を「利用する」のを容認してきたと同氏は主張するが、実際には、第二次世界大戦後に米国が作り上げた多国間貿易システムは、米国の輸出品のための外国市場を作り出した。

その米国の輸出は現在、国内総生産(GDP)の12.3%を占め、推定1130万人の雇用を支えている。トランプ氏はアジア諸国を自らのプランに従わせることができると信じているが、それも間違いだ。アジア諸国は既に、同氏が1月に決断した環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱が、戦略的および経済的に間違いだったことを証明する方向に動いている。

米国が既に敗北し始めていることを示す証拠は増えている。残るTPP参加11カ国はAPECで、米国抜きの部分的な合意に達した。もし彼らが成功し、米国が再度TPPに加わることがなければ、米国の輸出業者は世界のGDPの16%を占める市場で不利を被ることになろう。

米国が既に敗北し始めていることを示す証拠は増えている。残るTPP参加11カ国は米国抜きの部分的な合意に達した。もし11カ国が成功し、米国が再度TPPに加わることがなければ、米国の輸出業者は世界のGDPの16%を占める市場で不利を被ることになろう。

日本の反応は、トランプ氏のTPP放棄がなぜ米国にとってしっぺ返しになるのかを示している。安倍晋三首相は、自らの経済改革を支え、日米同盟を強化するためにTPPを必要としている。安倍氏がトランプ氏の二国間協定要請に抵抗しているのは、米国をなだめてTPPに復帰させたいと願っているからだ。

7月、日本は米国産冷凍牛肉に対するセーフガード(緊急輸入制限)を発動し、関税率を50%に高めた。しかし豪州産牛肉の関税は27.5%のままだ。これは日豪両国政府が2年前にTPP譲許税率を先取りして実施しているからだ。

日本はまた、欧州連合(EU)と農産物市場開放で大筋合意した。さらにカナダとも同様の協定で合意すべく協議している。カナダといえば、その豚肉生産者は米国の競争相手から市場シェアを奪いつつある。

一方、中国は自らの貿易グループである「地域包括的経済連携(RCEP)」の交渉を推し進めている。これには16カ国が参加しており、世界GDPに占める割合は39%に上る。RCEPはTPPほどには自由貿易推進面で野心的ではないものの、中国の経済的影響力を強化するものだ。皮肉なのは、トランプ氏がTPP離脱により、中国による重商主義拡大を米国の犠牲の下に放任していることだ。

米国は、二国間協定で大きな譲歩をアジア諸国に強いるような経済的レバレッジを持っていない。1980年代には持っていただろう。トランプ氏の世界貿易への理解は、その時代で停止しているようだ。米国は当時、アジアの大半の生産物のための輸出市場だった。しかし現在では、諸外国はモノやサービスの輸出先を他に多く持っており、企業は急速に成長する地域との貿易に集中している。サプライチェーンが複雑化した結果、二国間貿易協定は以前ほど重要ではなくなったし、多角的ルールは二国間貿易協定の定める条件を凌駕(りょうが)することがしばしばだ。

米国が取り残されるにつれて、米国の最大の敗者になるのは、農業州と中西部にいる大統領支持者だろう。TPPは米国にとって、アジアの成長から恩恵を得られる絶好のチャンスであり、トランプ大統領の抱く不満の種を是正するものが少なくない。具体的には、知的所有権の剽窃(ひょうせつ)や略奪的な産業政策、規則の執行に関する不満などだ。APEC首脳会議に集まった米国の友人たちは、10日のトランプ氏の演説に失望した。だが多角的貿易への彼らのコミットメントより、トランプ氏あるいは彼の後継者は路線を変更させられるかもしれない。

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