360度カメラが変える映像表現の未来

360度カメラが変える映像表現の未来

  • @DIME
  • 更新日:2017/12/06

「360」は未来の映像のキーワード!<前編>
~グーグル・ストリートビューと民生用全天球カメラの登場~

かつて一斉を風靡したデジタルカメラは、スマートフォンの登場によってコンパクトモデル(いわゆるコンデジ)の衰退が始まり、ミラーレスモデルを含む一眼レフタイプの製品(デジタル一眼、ネオ一眼)やハードな撮影に耐えるアクションカメラ的な分野に生き残りをかけている。そこに第3の勢力として台頭してきたのが、全方向に360度の画角を持つ全天球カメラだ。

それぞれ、現行のスマートフォンが及ばない、高画質、タフさ、視点を武器に独自の市場を持っているが、この記事では、筆者が、これからのイメージングの中心的存在になっていくと考える全天球カメラのあらましから最前線までを3回に分けて概観してみよう。

■フィルムカメラの延長にあったデジタルカメラの進化

映像表現と、それを実現するハードウェアとしてのカメラ。両者は、常に互いを挑発し、補完し、進化の触媒となることで、アートとテクノロジーの未踏領域を切り拓いてきた。

歴史を振り返れば、35mm判の小型フィルムカメラの登場が、それまでの大判箱型カメラや中判二眼レフカメラなどでは得られない機動力を生み出した結果、スナップ撮影によるダイナミックな作品が現れ、ストリートフォトというジャンルが確立されていった。また、フィルムのカラー化は、ビビッドな色使いや、逆に繊細なカラーグラデーションを活かした新たな写真芸術の醸成へとつながり、さらには高速度撮影が可能なムービーカメラの出現によって、肉眼では捉えられない世界をスローモーション映像として再現可能となった。

これらの写真術の変化に比べると、デジタルカメラの登場は、確かに撮影コストの低減や、画像の扱いの簡便化などの手軽さ、便利さをもたらしたものの、その後の進化は主に解像度や色合い、連写スピードなどの画質や基本機能の向上に関するものが中心で、そこに限れば、フィルムカメラの時代と本質的に変わらない改良が続けられてきたという側面がある。

実際には360度写真もフィルムカメラの時代から存在したが、基本的には水平方向に360度の視野を収めたパノラマ写真を指し、それは、閲覧方法が紙焼きという平面的な方法で鑑賞したり配布するしかないという制約からきていた。

■インターネットが身近にしたVRフォト

360度写真に新たな命が吹き込まれたのは、グラフィカルユーザーインターフェースを持つコンピュータが普及し、フィルムスキャナによってアナログイメージをデジタル化できるようになってしばらくしてからのこと。180度以上の画角を持つ魚眼レンズを用いて前後2枚撮影した写真を合成し、閲覧時の視線の方向をマウス操作によって自由に変えて見ることのできるVR(バーチャルリアリティ)フォトが誕生したのだ。

筆者も、香港の中国返還の前後に、重たい一眼レフと魚眼レンズを携えて中国の深センを訪れ、VRフォトを撮影したことがあったが、フィルムの現像、スキャンの後に、継ぎ目がわからないように調整しながら前後のイメージを合体するスティッチという作業をマニュアルで行う必要があり、決して簡単なものではなかった。それでも、出来上がったVRフォトを目の当たりにすると、あたかも自分が撮影現場に戻って、周囲の光景を再体験しているかのような感覚が得られ、未来の写真の在り方を垣間見た気になったものだ。

そんなVRフォトの閲覧を一気に大衆化したのは、2007年にサービスが開始されたグーグルマップのストリートビュー機能だった。

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まず、アメリカの主要都市から始まったこのサービスは、数~数十メートル間隔で街中の路上風景を360度(厳密には、水平方向に360度、上下方向に290度)で撮影し、それをデジタルマップ上から自由に見ることができるというもの。当初は、専用の自動車を使って撮影されていたが、今では三輪自転車や人力も駆使して、遊歩道や登山道、施設内の風景までがデータ化されつつある。

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■VRフォトの撮影を身近にしたリコー・シータ

しかし、閲覧環境や実用的なコンテンツが整備されても、依然としてVRフォトが一般化したとは言い難かった。なぜなら、ごく普通の個人が気軽にVRフォトを撮影できるようなカメラがなかったためである。

グーグルストリートビューは、最大15台のカメラを組み合わせた専用システムによって撮影され、近年はストリートビューへの投稿を前提とする希望者への貸し出しも行われているものの、サイズや扱いにおいてプロ向けの機材といえ、個人の趣味的な利用は考慮されていない。

ところが、2013年に日本の光学機器メーカーのリコーがスティック型で軽量のシータを発売したことで、状況は大きく変わった。スマートフォンのアプリと連動し、前後2つの魚眼レンズで捉えたイメージを合成して全天球のVRフォトを作り出すシータは、東日本大震災の記録(http://www.sankei.com/photo/panorama/newslist/pnr_disaster-n1.html、および、http://www.northern-lights.co.jp)を残すためにも用いられるなど、平面的な写真では不可能な、新たな表現の道を拓いた。

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当初は様々な制約から静止画のみの撮影だったシータも、モデルチェンジをする中で動画機能が付加され、最新モデルでは音も360度の全方位から内蔵マイクで拾える空間音声記録に対応している。

そして、カメラ界の異端児だったシータは、今では他のカメラメーカーや新興企業がベンチマークとし、フォロー製品を出すまでに成長したのである。

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(中編に続く)

文/大谷和利

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