絶好調ハイサワー女性社長が、それでも美尻カレンダーにこだわるワケ

絶好調ハイサワー女性社長が、それでも美尻カレンダーにこだわるワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/01/15
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2020年は顧客と直接触れ合う企業が勝つ

イベントプロデューサーのテリー植田です。

イベントビジネスの最前線で日々、世の中の動向を見ています。そこから感じるのは、2020年は、企業のファンベースのイベントがますます増えて行く傾向になる、ということです。これは企業が自ら行うファン感謝祭のようなイベントです。

「企業自ら行う」というのは、時に社長であり、部長であり、開発者であり、営業担当者であり、広報担当者等が主体となって、直接お客さんと触れ合うコミュニケーションの場としてのイベントを行っていくようになる、という意味です。

このようなファンとのコミュニケーションを率先して行ってきた企業として、私がかねて注目しているのが、今年創業92年となる飲料メーカーの老舗・博水社。そこで今回、博水社3代目社長である田中秀子さんに、レモンサワーブームとハイサワー躍進の秘密について直接お話を伺いました。

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博水社3代目社長・田中秀子さんとハイサワー号

「わるならハイサワー♪」誕生秘話

1980年代、日本初のレモン入りお酒の割り材(お酒を割るための炭酸飲料)であり、「わるならハイサワー♪」のテレビコマーシャルが放送され話題になって以降の博水社の定番商品・ハイサワー。女優・歌手の芦川よしみさんが出演していたあのコマーシャルです。「お客さん、終点だよ」のフレーズを思わず覚えてしまったという人も多いはず。

博水社は、1928年に田中武雄商店として創業し、30年にラムネ・みかんジュース・サイダーの製造を開始。のちに炭酸飲料メーカーとして「ハイサワー レモン」をはじめとする割り材を販売してきました。1980年に販売を開始した「ハイサワー レモン」は、焼酎をハイサワーで割ると果汁たっぷりのレモンサワーが作れるというもので、当時としては画期的な商品でした。

しかし、割り材がヒットしたとはいえ、中小企業である博水社がテレビコマーシャルを集中的に流すのは資金的に難しいものがありました。それを実践できたのには、ある理由がありました。

躍進の秘密は「アウトソーシング」

博水社は、ハイサワーの需要の伸びに合わせ自社工場を新たに建設し、生産能力を増強することを検討していました。しかし、工場建設には巨額の費用もかかり、リスクもあることから決めかねて悩んでいました。

そんなある日のことです。大手メーカーの清涼飲料水の製造受託をしているジャパンフーズの工場担当者が博水社を訪ねてきました。

「夏は清涼飲料水が売れるので工場の稼働が多くなるのですが、冬は商品が売れなくて工場が稼働せずに空いているんです。でも、御社のハイサワーは、通常の清涼飲料水と異なり、お酒が売れる忘年会シーズンの冬も売れると聞きました」

そして、彼はこんな話を持ちかけてきます。

「工場の空きを利用して、ハイサワーをうちで製造しませんか」

こうして、いまでいうアウトソーシングをすることになり、自社工場を作らなくてよくなった博水社。その分浮いた設備投資の予算を、テレビコマーシャルに注ぎ込むことにしました。

当時は、まだまだ割り材である「ハイサワー」を知らない人がほとんどでした。そこで、まずは認知度を上げようという作戦を開始したのです。

そのとき誕生したフレーズこそ、あの「わるならハイサワー♪」でした。同時に居酒屋で焼酎を割り材で割って飲む習慣を、「黄金割り方比率(焼酎1対ハイサワーレモン3)」と共に定着させ、その後、家でも割って飲めるようスーパーに営業をかけていきました。

こうした数々の努力を経て、ハイサワーの認知は徐々に東京を中心に広がっていったのです。

「主役」が伸びれば、「脇役」も一緒に伸びる!

田中秀子社長:
2018年のレモンサワーブーム。その少し前から、レモンサワー人気がふつふつと沸き上がり、居酒屋女子の一人飲みでもレモンサワーが飲まれる時代になっていたんです。

この頃から量販店のバイヤーが、ブームの余波を気になさるようになってきました。レモンサワーの話題になると、「そういえば、飲食街でよく見かける黄色地に赤いロゴの幟り旗、あれって『ハイサワー』って書いているよね?」そんな質問も増えました。

そんな背景があって、割り材であるハイサワー レモンもブームの中、後押ししてもらえるようになりました。

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ハイサワーのレモン果汁は、イタリア・シチリア産レモンの真んなか搾りを贅沢に使用

この頃、宝酒造も、宝焼酎を炭酸やレモン果汁等で割るレモンサワーメニューを提案し始め、居酒屋で宣伝を強化していきました。麦焼酎「いいちこ」等も同様に「割る提案」を強化。お酒を主役とすると割り材のハイサワーは脇役ですが、主役が世の中に躍り出ていくことで、脇役も一緒になって売り上げを伸ばすことができる。それが博水社飛躍の2018年につながりました。

さらには、生のレモンで作るだけでなく、たとえば居酒屋チェーン店の塚田農場では、ハイサワーレモンを使用した「極レモンサワー」をメニュー化して大ヒット。これは焼酎の代わりにジンを、氷の代わりに見た目もよい凍ったレモンを入れ、最後に「ハイサワー レモン」を入れて仕上げるもので、このうえない炭酸感と果汁感の、こだわり居酒屋メニューとして定番商品となっていったのです。

成城石井の「目利き力」がもたらした転機

元号が令和に変わった後もその勢いはとどまるところを知らず、レモンサワーブームはさらに拡大しているように見えます。今もレモンサワーの新商品が続々とコンビニエンスストアやスーパーにびっしりと並べられているのはご存じのとおり。居酒屋で飲むような「味にこだわったレモンサワー」を、スーパーやコンビニでも買える缶入りのお酒チューハイとして商品化し、酒や飲料メーカー大手各社がこぞってテレビコマーシャルを流し、販売するようになっています。

田中秀子社長:
うちもお酒入りの「ハイサワー缶」のレモンサワーや、「ハイサワー缶プレミアム 沖縄シークヮーサー×レモン」といった商品を販売していますが、缶酎ハイ市場は1年間に400種類もの商品が発売される激戦区です。

大手アルコールメーカーは、全国放送のテレビコマーシャルを打って商品を認知させていきます。そのため発売当初、うちのような中小企業の商品はなかなかスーパーの棚に商品を置いてもらえませんでした。または、短期間で他社の新商品に押し出されることが多いんです。

でも、昨今のレモンサワーブームで、ありがたいことに「スーパーマーケット成城石井」のバイヤーさんが、「ハイサワーってどんな味?」って気にかけてくれるようになったんです。超大量生産の商品ではなく、こだわりの逸品を仕入れて置くポリシーの成城石井さんから「レモン果汁(シチリア産レモンの真ん中部分のみ贅沢に使用)の味がしっかりする」と評価され、取り扱いを開始してくださいました。

成城石井さんの売り場は他のスーパーのバイヤーも見ていますから、これを機にイオンスタイル・いなげや等、他のスーパーも採用し始めてくれました(一部店舗除く)。嬉しいです。

紆余曲折で辿り着いた、謎の「美尻」グッズたち

博水社3代目社長の田中秀子さんのこれまでの道のりは紆余曲折、トライ&エラーの連続でした。

テレビ番組「タモリ倶楽部」に出演しては、自ら他の出演者をもてなし、ジャズを歌う。「倉庫飲み」と称したファン感謝祭イベントでは、ハイサワー各種を振る舞い、食事も提供して乾杯の音頭を取る。ハイサワーファンとのコミュニケーションを図るためのグッズとして、毎年人気の「美尻カレンダー」や「美尻グラス」を制作する……。

とりわけ「美尻」に関する田中社長こだわりは並々ならぬものがあり、ポリシーは「女性も憧れる健康的で素敵な美尻!」と、女性社員だけの美尻グッズ部を立ち上げ、自ら日々トレーニングで鍛えている女性たちのもとへ出向いてモデルとしてスカウトしています。海岸での美尻カレンダーの撮影にはカメラマンらと共に出向き、雑用担当もいといません。

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話題の「美尻ビシリカレンダー」2020年最新版

「美尻トレーニングや美尻ヨガクラスなどを見れば見るほど、女性がさらにきれいな体のラインを手に入れるべく、自らに磨きをかける時代が来ていると感じます」と、<美尻>へのこだわりを語る田中社長。トレードマークの白いスーツ、「大好き」という赤いヒールを身にまとい、ハイサワーファンや社員たちとの距離を近くすることをモットーに居酒屋などへ新商品の案内回りにも懸命です。

田中秀子社長:
子供の頃から親の会社や工場を見ていて、「会社の仕事なぁんて、楽々できるはず!」とずっと思っていたけれど、外から見るのと実際やるのとではまったく違っていましたね。

まず、工場で働く人たちの用語がわからなくて困りました。果汁の酸度・pH(ペーハー)・糖度・製造工程、ちんぷんかんぷんです。そこにきて、父から「うちはメーカー。自分で作った商品を売るんだから、まずは商品を自分で作れなければ何も始まらない」と言い渡されました。

「まずいなぁ、製造のことなんかわからない」。ということで、東京農業大学の社会人クラスに入って、基礎から勉強しました。

大学の授業が終わって工場に帰ってくると、さっき学校で教えてもらったことが工場の現場でリアルに行われている。わかってくると気持ちいい。

次の難関は会社の経理や財務で、税理士と話をするようになったら決算書の見方がわからなくて壁にぶつかる。今度は税理士の学校で法人税のコースを受講しに行く……。いつも勉強が後付けで、どうにかこなしてきた感じです。

「3倍」を心に、1円に満たないお金こそ大切に……

田中秀子社長:
私が社長になるとき、先代社長である父から1つだけ言われたことがありました。それは、「3倍を心に」でした。

「3倍」というのは、売り上げを3倍にすることでも利益率を3倍にすることでもなく、商品の数や粗利を3倍にすることでもありません。

仮に社員を1人雇ったら、その人には家族がいる。奥さんと子供などを入れれば約3倍の3人、5人雇ったら約15人。博水社は社員の家族の顔までわかるような小さな規模の会社だから、社員の家族をいつも心において会社を経営しなさい、という教えでした。

そんな父も、「タモリ倶楽部」がハイサワーを取り上げてくれてから、私が「美尻カレンダー」を作って巷で話題になったときは、「なんで? ハイサワーが尻なんだ??」って目を丸くしていました(笑)。そんな美尻グッズも、今ではアマゾンや公式オンラインショップで好評販売中です。

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photo by Getty Images

最後に、田中秀子さんに「お金の考え方」について聞きました。

田中秀子社長:
お金の考え方、そうですねえ……。

食品業界は薄利多売の世界。何百万円もする車を1ヵ月に1台売ればいいというような商売ではありません。スーパーの商談でも、見積もり額には何円という単位ではなく、何十銭、何銭という細かい金額が並びます。たとえば80円35銭とか。

1銭って単位のコイン、誰も見たことないですよね。でもね、1円を馬鹿にする者は1円に泣かされるよ、ってよく聞くけど、たしかにそのような業界にいるなって感じています。

ハイサワー製造のため、イタリア・シチリア産レモンや沖縄シークヮーサーなど素材にこだわるあまり、正直利益がうすくなってしまうときもあります。けれど、細くても長く続く商品を世に出していくために、これからも地味にコツコツやっていきます。

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