絶対に“観てしまう”アニメ『リコリス・リコイル』 視聴者を逃さない画面づくり

絶対に“観てしまう”アニメ『リコリス・リコイル』 視聴者を逃さない画面づくり

  • KAI-YOU.net
  • 更新日:2022/08/09
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1クールに数十本という、とても全部観るとは言いづらい深夜アニメの本数。初手から個人的身の上話で申し訳ないのだが、その中でも継続視聴をする決め手としているのが、「主人公たちの関係性の変化」である。

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何も交流がなかった人たちがイベントを経て仲が深まり、呼び方が変わる。そして、友情や恋心が芽生え、さらにイベントが起きていく──そういった意味では、2021年に放送された『SSSS.DYNAZENON』のよもゆめ(麻中蓬と南夢芽)の関係性は最高だった。そんな作品から約1年。また、関係性の発展が気になるアニメが登場した。

それが『リコリス・リコイル』(通称・リコリコ)である。

『リコリス・リコイル』は、『ソードアート・オンライン』『WORKING!!』で知られるアニメーター・足立慎吾の初監督作品にして、銃器を扱う女子高生たち(住民票がない!)のドンパチありな日常もの。

漫画『この美術部には問題がある!』の作者・いみぎむるがキャラクターデザインをつとめ、フェティッシュでありながらアクション描写の緊迫さもある。A-1 Pictures制作の絶妙なオリジナルアニメだ。この作品で筆者が特に注目したいのは、メインキャラクターである錦木千束(にしきぎ・ちさと)と井ノ上たきなの関係性である。

安済知佳と若山詩音という「生っぽい」演技を魅力とする声優がキャラクターの魅力をより際立たせていく。それが、足立監督がリードする緊迫したストーリーと、丸山裕介副監督らが引っ張っている演出面をさらに鮮やかにしていくのだ。

そんなわけで、今回は関係性とひと目で画面へと引き込む演出面(レイアウト含む)が素晴らしい『リコリス・リコイル』について、深掘りしていきたい。

文:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多

『リコリコ』で輝く“生っぽい”演技の声優

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TVアニメ『リコリス・リコイル』

犯罪を未然に防ぐべく暗躍する組織・DA(Direct Attack)。そこに所属していたエージェント(リコリス)・井ノ上たきな(CV:若山詩音)は、命令違反の責任を問われて支部である喫茶リコリコに飛ばされる。一見すると和風なカフェだが、やはりDAの支部。先輩である錦木千束(CV:安済知佳)とともに様々な依頼に駆り出されることになる。

『リコリス・リコイル』の設定としては、硝煙の匂いが蔓延るアクションもの。しかし、そこは『WORKING!!』に携わった足立監督。合理的な性格ゆえにあまり心を開かないたきなが、自由奔放な性格の天才・千束と交流を深めていく過程をメインに描いていく。

アマプラはあまり慣れておらず、「コーダ あいのうた」を探すのに戸惑った。探索中に「リコリス・ピザ?」風の名のアニメ「リコリス・リコイル」を偶然見つけた。暗殺ライセンスを持つ少女アサシンが喫茶店へ出向?!ありえへん設定と導入!日本アニメらしい?と、気づくと3話まで観た。4話は何処だ! pic.twitter.com/0M46gDJpfV
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo)
July 24, 2022
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この二人を演じる安済知佳と若山詩音は、奇しくも先に挙げた『SSSS.DYNAZENON』で共演。前者は『響け!ユーフォニアム』(高坂麗奈役)、後者は『空の青さを知る人よ』(相生あおい役)でも観客に鮮烈な印象を与えているが、その二作品はリアルさがある種の売りだった。

しかし『リコリス・リコイル』は、いみぎみるの萌え的なイラストがメイン。二人の武器ともいえる「生っぽさ」をメインに据えるのはいささかミスマッチでは、と思う人もいるだろう(いみぎみる作品の『この美術部には問題がある!』は萌え的なアプローチが取られていた)。

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錦木千束(CV:安済知佳)。実は歴代最強と称されるリコリスで、たきなを迎え入れる喫茶リコリコの自称・看板娘。

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井ノ上たきな(CV:若山詩音)。任務失敗の責任を負わされ喫茶リコリコへ。合理的で無駄を嫌い、当初は千束に不満を感じることも。

だが、この二人がキャラクターに命を吹き込むことで、ただフィクションにいるというわけではなく、リアル目の演技で地に足のついたキャラクター像が確立された。荒唐無稽ともいえる舞台設定に説得力を持たせることに成功している。DAによって犯罪が激減した近未来の日本。それを伝える一つの役割として、安済知佳・若山詩音の声があるように感じる。

先に公開された足立監督へのインタビューによると、企画初期は女の子が銃を持って戦うことだけが決まっていた(外部リンク)。しかし、内容としてはシリアスめだったようで、先行作品の『GUNSLINGER GIRL』や真下耕一監督の諸作品とかち合わないためにどうしたらいいかと考えた末で、ポジティブな作品になったという。

加えて、ミリタリー面を推すわけではなく、千束とたきなというタイプ違いな女の子二人が仲良くなる様子に焦点を絞ったのだ。もちろん監視社会になろうとしている昨今の社会情勢を皮肉ったDAの設定はあるにしろ、一視聴者としては「千束とたきなが可愛い!」「関係性萌え!」と言える作品だ。

千束とたきなの関係性を引き立てるレイアウト

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ということで、序文から戻って本題である。錦木千束と井ノ上たきなの関係性についてだ。

とある事件で犯人を射殺すべく、命令違反をしてしまったたきなは、喫茶リコリコに島流しされてしまった。しかし、事件について怪訝に感じる彼女は、リコリコの転属に納得がいっていない。その不器用な性格のまま千束に接していた。

だが、朗らかな千束と過ごしていく中で、バディとして信頼されていたことを知る。苦手意識も振り払い、ついには「千束」と呼び捨てにするほどに関係性が深まっていくのである。

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いみぎむるのキュートなデザイン(キャラクター原案ではなく、漫画家がアニメ用の設定画を描いているのがポイント)もさることながら、足立監督のフェティッシュな画面づくりが二人の関係性を引き立たせる。ブラ紐の執拗な描き方や、着用している状態では女性用ショーツを描かない徹底した演出プランにも驚嘆だ。

……と書いてしまうと、一部のアニメファン向けの作品なのか、と思われてしまいそうだが、そういうわけではない。例えば第3話まで、まだ心を開ききっていないたきなは、頑なに千束の隣の席には座ろうとしない。電車はもちろん向かい合わせ。そこで交わされる会話も、どこかぶっきらぼうである。

だが、第3話のある出来事を経て、たきなは千束の隣に座るようになった。そして心を開き、千束へ笑みを浮かべるようになる。光の当て方も鮮やかで、とにかく「画面を観たい!」と30分間思わせるようなレイアウト(キャラや背景の配置を含めた画面の構図)が徹底されているのが『リコリス・リコイル』の面白いポイントの一つだ。

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千束がたきなを抱き上げて回転するシーン

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風に吹かれる直前のたきな。この直後……

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髪を風で揺らしながら空を見上げる/以上、画像は『リコリス・リコイル』PVより

同じく第3話で千束がたきなを抱き上げて回転するシーン、第4話でカフェにいるたきなが髪を風に揺らしながら空を見上げるシーン、第5話終盤の仰向けの千束の胸にたきながもたれかかるシーンなどなど、どの話数でも必ず視聴者を引き込むシーンが存在する。それらは作画に加え、レイアウトの巧みさによってもたらされるある種の違和感。センスとも言い換えられる、これまでのアニメにはなかった演出だ。

しかし忘れてはならないのが、二人のいる場所は硝煙の匂いがする場所ということである。いつ命が失われるか分からない。ハッカーを護衛していると思えば、車が乗っ取られて突如の銃撃戦なんてことも日常茶飯事。

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この直前のカット、旅行カバン越しに仰向け状態のレイアウトが秀逸だ。

旅行カバンを盾にしてたきなが戦うカットは、中腰ではなく仰向けで、咄嗟の判断というのが画面越しに伝わってくる(このレイアウトも素晴らしい──カバンの大きさから中腰では防げない→仰向けという判断、直後の体勢を真上から描いている ※第2話)。そんな中で育まれる彼女たちの友情の行方はいかに──!?(ちなみに筆者は千束派です)。

『リコリス・リコイル』は毎週土曜日23時30分からTOKYO MX、BS11などで放送中のほか、Netflix、Amazon Prime Videoなどでも配信中だ。

『リコリコ』原案者が描くシリアス戦場もの

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アサウラ『デスニードラウンド』/画像はAmazonより

『リコリス・リコイル』の初期設定はシリアスな面が多いと書いたが、そこで思い出す作品について紹介しよう。それがアサウラによるライトノベル『デスニードラウンド』(オーバーラップ文庫)である。アサウラは『リコリス・リコイル』にストーリー原案としてクレジットされているが、本作に参加したのも『デスニードラウンド』がきっかけだったとインタビューで明かされている(外部リンク)。

『デスニード・ラウンド』の舞台は、北海道独立戦争や栃木群馬間紛争を経た日本。女子高生・葛(つづら)ユリは両親の夜逃げによって多額の借金を抱え、銃を使ってお金を稼ぐことになってしまう。そして、合法・非合法を問わず危険な仕事を請け負うチームに配属され、弾が飛び交う戦場に向かうことになった。

銃器を使う女の子という設定は『リコリス・リコイル』と共通している『デスニード・ラウンド』だが、物語の構造としてはかなりシリアス。一歩間違えなくとも命を落としかねない戦場にただの女子高生が足を踏み入れたものだからもう大変なのである。そんな窮地を、ユリは泣きながら、血を流しながら、果てには失禁しながら乗り越えていく。

なお、ユリたちが立ち向かう敵といえば、ハンバーガーショップのマスコットのピエロに、警視庁のマスコットキャラクター、そして浦安にあるテーマパークのデスニードラウンドでマスコットをつとめるモルモットだ。

恐らく頭の片隅に「あいつでは?」と思われた方々は察しがいい。それに着想を得たオリジナルキャラクターである。彼らの活躍にはとある陰謀が隠されていて、ユリたちは対峙することになったのだ。そんなマスコットたちの強いことったら!

もちろん血を流しながらも、ユリとその仲間(といってもおっさんばかり)の関係性の変化も魅力。そういった意味でも『リコリス・リコイル』をさらに楽しむ上でぜひとも読んでいただきたい一作である。全3巻で完結しているので、お盆休みの一気読みにいかがだろうか?

ちなみに、9月にはアサウラ書き下ろしによる『リコリス・リコイル』番外編ノベライズとなる『リコリス・リコイル Ordinary days』(電撃文庫)が刊行予定。喫茶リコリコの日常が明かされるとか。同日にはオリジナル新刊『小説が書けないアイツに書かせる方法』(電撃文庫)もラインナップ。アサウラ作品を読むならこの夏しかない!

©Spider Lily/アニプレックス・ABC アニメーション・BS11

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