9.11で夫を亡くした杉山さんをどん底から救った【笑顔】の実話

9.11で夫を亡くした杉山さんをどん底から救った【笑顔】の実話

  • 美ST ONLINE
  • 更新日:2021/11/25

人生には辛く悲しいことも起こります。辛いときに笑顔なんて無理!と思うことも。でも、自分が笑うことで周囲も自分自身も救われる。「だから笑おう!」そう実感した杉山さんの輝く笑顔とメッセージは笑顔の尊さを再認識させてくれます。

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第三子を妊娠中だった9.11から20年。愕然とした時こそ顔を上げて立ち上がる!笑顔の連鎖は意味があった、と確信しました

2001年9月11日。アメリカ同時多発テロで夫を亡くして今年で20年。先日911追悼記念式典参加のために5年ぶりにNYを訪れました。この日は晴れ渡る青空で、跡地のメモリアルパークに佇むと20年間のさまざまなシーンが蘇ってきました。

あの日もこの日のような美しい晴天。でも肌寒くて、夫は秋物のジャケットを羽織り、いつもと同じように家を出ました。私は3歳と1歳の息子たちを現地の幼稚園に送る身支度をしていた8時46分、夫の会社が入るワールドトレードセンターの北棟に機体がぶつかる映像がTVで流れたのです。会社は南棟、ほっとしたのも束の間、9時03分に南棟に2機目が直撃。その1時間後に南棟が崩れ落ちました。私はうわっと涙が出て部屋中を転げ回り、長男は固まり、一瞬にして家の中は壮絶な状態。何度も電話をしたけれど、夫とは連絡が取れず、翌日には行方不明者として報道。会社の人と一緒にマンハッタンをバタバタと捜索していた時、突然出血しました。当時私は妊娠4カ月で、動き回ったことが仇となり、流産を防ぐため入院。何もできなくなりました。子供は助かったけれど、天井を見上げることしかできず、耐え難い悲しみと苦悩に打ちひしがれ、滂沱の涙が溢れます。動くこともできず絶望感しかありません。しかし私のお腹には命が宿り、この子を守れるのは私しかいないのです。その葛藤の中で、「無事に産もう」「きっと明るい日もあるはずだ」「泣いてばかりいられない」と自問自答し、無理矢理自分を奪い立たせました。何よりも子供たちが心配でした。母親が泣いてばかりいたら、子供が不安になります。「笑顔でいよう」そう決意して退院。日常が始まると、子供たちは面白い盛りで、毎日キャッキャと遊んで笑わせてくれます。安定期に入って動けるようになると公園にも出かけました。絶望的な状況は変わらないけれど、徐々に子供たちのおかげで笑えるようになっていました。

翌年3月11日。ニュージャージー州の病院で三男を出産。事件から半年後のその日、跡地に「ツインタワー」を再現した2本の追悼の青い光が放たれ、それを病院の窓から見た時、その光とともに夫の魂がこの子に入ったと思えました。気持ちが楽になり、こう思えたことが1つの区切りに。その直後に夫の右手親指だけが見つかったのです。お葬式をして、事件から1年後に帰国しました。

帰国後友人に会うと、私を見て誰もが固まって不安げな顔をしています。私が笑顔で「久しぶり」と言うと、ほっとして相手も笑顔になってくれる。そして悲しみを聞いてくれ、どれだけ力になったことか!今度は私が苦しんでいる人の話を聞いて恩返ししたい、どこか居場所を作りたいと思い、精神対話士の資格を取り、みんなの居場所「ここに来れば晴れやかな笑顔に」をコンセプトにイタリアンバール「晴ればーる」をオープン。順調に経営していたものの、コロナであえなく昨年閉店。でも人を笑顔にしたいという思いは消えることがなく、生きづらい世の中で悩める人に美容から晴れやかな笑顔をプロデュースするコンセプトで起業し、社名を「ハレプロ」と名付け石鹸を販売。人を笑顔にする、それが人生のミッションだと思っています。

実は夫は海外で仕事をするのが夢で語学や資格取得のため常に勉強し、ものすごい努力家でした。NY赴任が決まり、ビジネスの象徴であるワールドトレードセンターに勤務したことは誇りでした。今回1人でNYに行き、式典の前々日にホテルで寛いでいたら、「無念だけじゃないんだよ」と言う夫の声が心にポンと入ってきたのです。「寂しくなったらいつでも来ればいい」とも。無念さだけではなかった、そう思うと9月のNYの街が清々しく見えて、「これからは私らしく生きよう」と天を仰いで歩きました。子供たちも巣立ち始め、頑張った20年。きっと私は晴れやかに笑っていたと思います。

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お話を伺ったのは……杉山晴美さん 56歳 ハレプロ代表取締役

《Profile》’65年東京都出身。夫・陽一さんと大学時代に出会って結婚。夫は’01年9月11日アメリカ同時多発テロの犠牲に。23歳、21歳、19歳の息子たちと暮らす。https://store.harepro.co.jp/sakura/

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富士銀行行員だった夫は享年34歳。ずっとパパは逃げ回っていると信じていた長男に事実を伝えたのは事件から2カ月後。一緒にベランダから星になったパパを探したのが忘れられない。

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絶対幸せを取り戻すと自分に誓った日。この時生まれた三男・想弥も大学生になりました。

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今年の9月11日に5年ぶりにNYへ。20年前にも同じ場所で息子たちと写真を撮りましたが、今年は何十倍も清々しい笑顔です。

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2021年『美ST』12月号掲載撮影/天日恵美子 ヘア・メーク/Sai、七浦彩香 取材/安田真里 編集/漢那美由紀

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