【レスリング】高谷大地が74キロ級銅でパリ五輪代表「人生は変えられる」兄惣亮の脇役から主役へ

【レスリング】高谷大地が74キロ級銅でパリ五輪代表「人生は変えられる」兄惣亮の脇役から主役へ

  • 日刊スポーツ(スポーツ)
  • 更新日:2023/09/19
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高谷大地(22年12月撮影)

<レスリング:世界選手権>◇18日◇セルビア・ベオグラード◇フリースタイル

男子フリースタイル74キロ級の高谷大地(28=自衛隊)が3位決定戦でヨルギオス・クギウンチディス(ギリシャ)に勝ち、パリ五輪代表を決めた。五輪階級で5位以内の選手の国・地域に出場枠が与えられ、日本勢は3位以内で代表に決定する選考だった。

あれからまだ2年、今度は自分が五輪の舞台に立つ。「最高だ。本当に人生は変えられるのだと感じた」。3位決定戦でフォール勝ちを収めると、太くなった両腕を突き上げて歓喜の雄たけびを上げた。「僕が五輪ですか。信じられない。すごい」。興奮するには理由があった。

21年東京五輪までは「兄貴の弟」だった。自身も国内トップ選手で、世界選手権代表歴もあったが、3大会目の五輪出場を目指していた兄のサポート役に徹した。食事、洗濯まで担い、黒子役を進んで買って出ていた。

65キロ級を主戦にしていた自身の成績が振るわず、早々に東京五輪の可能性が消えていた立場もあった。どこまでもポジティブな兄と対照的に、「自分はネガティブ中のネガティブ」と腐っていた時期もあった。兄はその姿を心配し、あえて生活を共にして戦う姿を見せたかった。

兄が東京での戦いを終えると、大地はふと考えた。競技人生の終盤に、自分は何者か。「兄貴離れです。誰かの脇役よりも、いかに自分の物語を作るか」。決して仲たがいではなく、常に前を見て戦い続ける兄への敬意からこそ、自らもそんな男になりたかった。このままでは終われない。

希望の光は、やはり兄だった。問題は体重だった。心身への影響を考慮し、過度な減量を辞め、主戦だった74キロ級から日常体重に近い86キロ級で東京に出た惣亮。大地も65キロ級から74キロ級に階級を上げる決断をしていた。体を作り直して2年以上が経過し、腕回り、肩回り、胸の厚みと別人のようだ。その太さに努力の跡が刻まれる。6月、世界選手権代表を決めた全日本選抜体重別選手権では「やっと74の体になってきましたね」と自信を持っていた。

74キロ級でのメダル獲得は14年大会の惣亮の銀メダル以来となった。強豪ひしめく中量級は日本選手にとって鬼門だったが、兄と同じ表彰台に立った。初戦では16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの元世界王者チャミゾ(イタリア)を破るなど、パリでの頂点への希望も抱かせる躍進。「競技に専念できる環境をつくってくださった方々に感謝したい。しっかり準備して、いい笑顔でパリの舞台に立ちたい」。もう「弟」ではない。「高谷大地」の物語を完結させる。

◆高谷大地(たかたに・だいち) 1994年11月22日、京都府生まれ。京都・網野高(現丹後緑風高)から拓大卒業後に自衛隊。18年ジャカルタ・アジア大会男子フリースタイル65キロ級2位。世界選手権は3度目の出場。五輪3大会連続出場の高谷惣亮(拓大職)が兄。

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