「生理期間の7日間は変えられる」って思っていい。#NoBagForMe 長井千香子インタビュー

「生理期間の7日間は変えられる」って思っていい。#NoBagForMe 長井千香子インタビュー

  • ダ・ヴィンチニュース
  • 更新日:2020/11/20

生理やPMSの辛さについて、最近は少しずつオープンに話せる雰囲気が生まれています。SNSの隆盛にともないインフルエンサーの発言や投稿をはじめとし、公の場で題材として挙げられることが増えてきました。そのうちのひとつとして、ソフィが主催しているプロジェクト「#NoBagForMe」があります。

隠すのが当たり前とされている生理や女性のカラダについてのことを、もっと気兼ねなく話せるように、という思いを込めて立ち上げられ、企業向け生理研修、新しいデザインの生理用品の開発など、様々な形で生理についての活動を行なっています。

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ソフィ ブランドマネージャーの長井千香子さん

果たしてなぜそのようなプロジェクトを立ち上げるに至ったのでしょうか。また、プロジェクトを進めていく中で何か手応えや気づきはあったのでしょうか。ユニ・チャーム株式会社のソフィ ブランドマネージャー・長井千香子さんにお話を伺いました。

#NoBagForMeにより生理は“一方通行”じゃなくなった

――まずは「#NoBagForMe」というプロジェクトがどのような経緯で発足したのか伺えますか。

長井千香子(以下、長井):我々は長年生理用品の開発やマーケティングを行なっておりまして、その中で生理に対する声を日々チェックしながら市場調査をしていました。ただ、なかなか生理というトピック自体が話題にのぼらない。今まで生理のある方同士で生理についての情報交換が少なかったんですね。そうすると、どうしても私たちメーカーが一方的に発信して、それを受け手が受信する、という構造になってしまう。

そうではなくて、もう少し普段から自分にとってどんな生理ケア・過ごし方が合っているのか、といったことを話し合える環境を作りたいと思ったことが今回のプロジェクトを始めたきっかけです。

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――なるほど。

長井:たとえば…特にタンポンって、メーカー発信の広告を見ただけでは、まだ怖くて挑戦しにくい方が多いんです。ナプキンはハードルが低いけど、タンポンは誰か身近な人に勧めてもらって使う傾向がとても強い。ナプキンでさえも、自分の身体にはあまり合っていないのに、母親が勧めてくれたからと使い続けている人がとても多いのが現状です。経血の量や肌質は母親と同じとは限りませんし、環境や生活スタイルに合わせて変えていった方がムレやモレといったトラブルがおきにくい。今は少し自分の生理について話しやすくなってきたけれど、そう考え始めていた10年前は誰も今みたいに話題に出すことがありませんでした。

――そう考えると、今はSNSの普及もあって言いやすい環境が整ってきたともいえますね。

長井:そうですね。ちょうどここ数年で、SNS上でナプキンの話をする人たちが増え始めたんです。自分のパーソナルな話がしやすくなってきたと感じています。我々メーカー側からもテーマを投げかければ、この流れが広がるのではないか、という思いもありました。

――プロジェクトを実際に進めていく中で、手応えを感じる瞬間はありましたか。

長井:今までは生理について一方的に発信している感覚があったのですが、今は商品を使ってくださる方々と一緒にプロジェクトに取り組むことができていて、一緒に作っていく感覚はこういうものなのだな、というのを実感しているところです。

「生理の悩みは一人で抱え込まなくていい」と思いたかった

――プロジェクトによって双方向の関係が生まれたんですね。

長井:一緒にプロジェクトに取り組んでいるインフルエンサーの方々も、知名度が高いから選んだのではなく、女性が生理を恥ずかしいと隠さないでいいような世の中にしたいという共通の目標や関心をもっている方と一緒に取り組んでいて、そういう方々と一緒に作るというのは従来のマーケティングとはかなり違った部分でしたね。インフルエンサーの方々からも忖度なしに率直な意見が返ってきますし、お互いに信頼しあえる関係で行っているプロジェクトだからこそ、お客さまからも正直な思いを聞くことができました。

――具体的にはどういった思いですか。

長井:印象深かったのは、親に言うのが恥ずかしかった、という人ですね。母親よりも生理が重たい人が、夜用ナプキンを買ってもらうのを躊躇したり、生理痛で悩んでいることを言ってみても生理が軽い母親から「何言ってるの?」とだけ返されたり。あとは、初めて生理になってから半年間黙っていたという人も一人や二人ではありませんでした。恥ずかしいというのもあるし、パーソナルなことを誰かに話したり、みんなが我慢しているのに自分だけ愚痴を言ったりしてはいけない、と思って我慢している人が多かったんです。でも、だからこそ生理の悩みは誰かに話してもいいという環境が生まれたことで「こんなに一人で抱えなくてよかったんだ」と気づく人が多かったんですよね。女性だけではなくて、男性からも「パートナーの生理になかなか触れられなかった」という意見がありました。

――長井さんは、プロジェクトの立ち上げに至るまでに、ご自身で生理についてどう問題意識をもっていましたか。やはり、クローズな雰囲気に対しては違和感を抱いていたのでしょうか。

長井:これは正直他の方々もそうだと思うのですが、クローズとオープンという価値観さえない状態だったんですよね。生理は隠すもの、もしなったらサッとトイレにいって、対処するもの。悩みがあっても人に知られてはいけない。そういうものだとずっと思っていて、私自身そこに疑問を抱いたことはありませんでした。他の人も体験していることだから、自分だけが嫌だと言っちゃいけないと思っていたんです。

――たしかに、「生理はそういうもの」という価値観は根強い気がします。時代の流れで少しずつ「隠さなくてもいい」という認識が広まってきたとはいえ、それでもまだ自分の生理やPMSについてオープンにすることを躊躇する人は多いでしょうね。

長井:そうですね。自分の生理や体調についてもちろん無理に語る必要はありませんが、話したいタイミングで話したい人に悩みを共有することで、解決策は広がってくると思います。生理の悩みは一人で抱えるもの、という固定概念を取り払えば、きっと変わってくると思っています。生理をオープンにしたいというよりは、もっと選択肢を増やしたいという思いが強いですね。

「生理期間の7日間は変えられる」と思っていい

――長井さんは今まで生理によって私生活や学業、仕事などで支障が出たことはありますか。

長井:ありますね。体調面というよりは、生理前のPMSによる精神面の悪循環が大きかったですね。たとえば、いつもエネルギッシュで活動的でいたいと思っていても、どうしてもホルモンバランスの崩れでそうなれない自分がいる。PMSが原因で活動的になれない自分をダメだなと責めてしまう。家族に当たってしまって、そこで自己嫌悪でさらに落ち込んでしまう。そういう負のループです。ホルモンバランスのせいだということがわかってからは、そろそろ生理かなと客観的に捉えられるようになりましたが、知識がなかったときは難しかったですね。

――PMSは最近やっと男女ともに認知度が高まってきたように思いますが、世間でのPMSの捉えられ方について長井さんはどう思われていますか。

長井:私たちも10年以上前からPMSの認知を定量でとっているんですが、ここ最近増えてきたなという印象です。声が上がっているというのは、みんなが得体のしれないものに振り回されているのではなくて、いま私はPMSなんだなと理解が広がってきていることの証明だと思います。そこに対してのピルや漢方などの対処法についても言及されることが増えている印象があります。

――たしかに「生理前だからイライラする」というような投稿を目にすることが増えてきたように思います。

長井:そうやってSNSで率直な思いが呟かれることで、私たちメーカーにもできることって増えていくんですよね。生理用品への不満や要望も伝えていただくと、それによって私たちも商品をアップデートしていくことができるので。

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(左)材料や繊維の研究により、悩みの声が多かったナプキンの“ズレ”や“動きモレ”に強い製品を開発 (右)ナプキンと一緒に使って2時間分の吸収力をプラスする製品

ただそういった製品の機能だけではなく、同時に社会における生理をとりまく緊張感のようなものをなくしていくことも大事だと思っています。たとえ私たちがどれだけ「こういうときはこういう商品がいいよ」と情報を発信しても、それを咀嚼してあれこれ意見交換をしてくれる受け手の方々がいない限り一方通行なのは変わりません。そういう意味でも、もっと女性にとってセルフケアがしやすい環境が重要なのではないかな、と。

――セルフケアがしやすい環境、ですか。

長井:「生理期間の7日間は変えられるかも」って思っていいんですよね。親の生理や友達の生理と自分の生理はまるで違うし、辛いことは辛いと思っていいんだ、と。まずはそういう認識を皆さんにもっていただけるように、生理を取り巻く環境をほぐしていきたいです。そこから出てきたお客様の声から、我々はいろいろな選択肢で解決策を考えていくことができます。

生理痛やPMSに対して直接アプローチすることはできませんが、辛い生理だからこその日常の些細なトラブル、たとえば経血の漏れやかぶれ、歩きにくさなどをケア用品でカバーしていくことができる。なので、自分の生理期間はよりよいものになるし、辛いことは我慢しなくていい、と思ってもらいたい。お客さまがそう思うことで、もっと相談しやすくなったり、婦人科に行きやすくなったり、SNSに率直な要望を書くことでメーカーから新たな商品が生まれるかもしれない。そういう意味でも、社会的な生理に対する緊張感をなくすことは大きな収穫になると思うんですよね。

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取材・文=園田もなか

生理のときは、男も女も、少しだけ折れたらいい。5歳さんインタビュー

ダ・ヴィンチニュース

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