世界クラスの体操競技選手は脳のネットワーク構造が特徴的、順天堂大が確認

世界クラスの体操競技選手は脳のネットワーク構造が特徴的、順天堂大が確認

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/07/20
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順天堂大学は7月19日、MRIによる脳ネットワークの解析により、世界クラスの日本人体操競技選手に特徴的な構造があることを明らかにしたと発表した。また、脳MRIデータを基に体操競技選手と一般人の脳ネットワークの比較も行われ、体操競技選手では感覚・運動・注意・情動など、体操競技に密接な関わりのある脳の領域を結ぶ構造的な神経接続が一般人に比べて強く、さらに一部の神経接続が競技成績と相関していることがわかったことも合わせて発表された。

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同成果は、順天堂大大学院 スポーツ健康科学研究科の冨田洋之准教授、同・医学研究科 放射線診断学の鎌形康司准教授、同・青木茂樹教授、同・脳神経外科学の菅野秀宣先任准教授、同・スポーツ健康科学研究科の和気秀文教授、同・内藤久士教授らの研究チームによるもの。詳細は、神経学や神経病理学、精神医学などを扱う学術誌「Journal of Neuroscience Research」にオンライン掲載された。

従来のスポーツ科学は、優れたアスリートが持つ身体的な特徴、エネルギー供給能力、技の特徴など、身体特性に主眼が置かれていたという。しかし近年、一流のアスリートの鋭敏な感覚、精密な運動制御能力、的確な状況判断を行う意思決定能力、強い意欲などの優れた脳機能にも注目が集まるようになってきたという。

また、これらの脳機能は長期にわたる集中的な運動トレーニングによって得られた神経可塑性(脳が学習する仕組み)に基づいていると考えられるようになってきており、研究チームでも先行研究として、2020年に世界クラスの体操競技選手の脳のある領域の体積が一般人と比べて大きく、競技成績に相関することを報告している。

今回行われた研究は、世界クラスの体操競技選手の高度な運動パフォーマンスを支える神経基盤、特に領域間の神経接続を明らかにすることを目的として行われた。世界大会で入賞歴のある現役日本人体操競技選手10名と、体操競技経験がない健常者10名の男性を対照群として比較研究を実施したという。

現役体操競技選手と競技経験がない健常者の脳の構造的な接続の比較が実施されたほか、競技成績(Dスコア)と脳の構造的な接続性との関連についても解析が行われたところ、体操競技選手群では、対照群に比べて、感覚・運動、デフォルトモード(思考や運動を行っていない安静状態において同期して活動する脳領域で、記憶や自己認識などの認知機能と関連する)、注意、視覚、情動といった体操競技に密接な関わりのある機能を司る脳領域間の神経接続が強くなっていることが明らかとなった。

さらに、これらの脳領域間の神経接続のうち、いくつかの接続が床運動、平行棒、鉄棒のDスコアと有意な相関関係があることも確認。具体的には、床運動は空間認識、平衡・姿勢感覚、運動学習などを司る脳領域を結ぶ神経接続と、平行棒は視覚運動知覚、手の知覚を含む感覚運動などを司る脳領域を結ぶ神経接続と、そして鉄棒のDスコアは視空間認識、エピソード記憶、意識、視野内の物体認識と関連する脳領域を結ぶ神経接続と、それぞれ有意な正相関が見られたという。

いずれも各体操競技種目に密接に関連する脳機能を司る脳領域間の神経接続であり、これらの脳領域間を結ぶ神経接続が、各体操競技種目の神経基盤として重要である可能性を示しているという。

これらの結果から、研究チームでは、競技力をさらに高めていくためには、視空間認識、視覚運動知覚、運動学習など、それぞれの体操競技と関連する脳機能の向上が重要であることが示唆されるとしており、今後は脳のネットワークを評価することで、体操競技選手の各種目への適性や、トレーニング効果の客観的評価に役立つ可能性があることが示されたとする。

なお、こうした世界クラスの体操競技選手の脳ネットワークの特徴が、長期間の集中的な体操競技トレーニングによるものなのか、生まれつき各個人が有している特徴なのかについてはまだわかっていないという。そのため、研究チームでは今後、さらに縦断的なアプローチによって明らかにしていく必要があるとしており、ほかの運動競技についても同様の検討を行うことによって、各競技における世界クラスの選手人材の育成に役立つことが期待されるとしている。

波留久泉

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