<ライブレポート>渡辺香津美、デビュー50周年を祝う【KYLYNが来る】を開催

<ライブレポート>渡辺香津美、デビュー50周年を祝う【KYLYNが来る】を開催

  • Billboard JAPAN
  • 更新日:2021/11/25
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9月中旬から約2か月にわたり各所で行われてきた【かわさきジャズ2021】のメイン企画と言ってもいいだろう、【KW50 渡辺香津美「KYLYNが来る」】をミューザ川崎シンフォニーホールで見た。なお、【KW50】とは渡辺香津美のアルバム・デビュー50周年を祝う公演の名称である。

公演タイトルにある『KYLYN』とは1970年代下半期の彼と坂本龍一の交流を軸とする面白がりクロスオーバー・プロジェクトで、1979年にはスタジオ・アルバムとライヴ・アルバムを1枚づつリリース。活動期間は短期ではあったものの、そこにはあの時代の野心と創意に萌えた伸び盛りミュージシャンたちの存在意義の成果があり、当人のなかでもそこで得た“KYLYNスピリッツ”は好奇心旺盛に様々なことにあたる精神として、今もしっかり息づいている。

旧KYLYNバンドには向井滋春や清水靖晃らジャズ側にいた人間に加え、矢野顕子や高橋幸宏なども参加(そこから、渡辺香津美のYMO参加につながったとも言えるだろう)。そして、オリジナルの屋台骨を支えたのはこの3月に逝去した村上“ポンタ”秀一だったが、この公演は彼に捧げられるものでもあった。

今回の【KYLYNが来る】のバンド・メンバーは、エレクトリック・ベースとダブル・ベースを弾く井上陽介、パーカッションのヤヒロトモヒロ、ギターの井上銘。さらに、アルト/ソプラノ・サックスの本多俊之とトロンボーンの村田陽一だ。村田とともに時に華のあるソロ・パートも担った本多は、唯一の1979年版KYLYN参加者となる。他は、現在近い付き合いのあるKYLYN感覚に長けた奏者たちに声がかけられた。

披露されたのは、「Black Stone」、「199X」、「Innerwind」、ジャズ・スタンダードのリズミックなカバー「Milestones」といったKYLYN2部作で披露されていた曲に加え、若干17歳で発表したデビュー作『Infinite』や1976年作『Milky Shade』のタイトル曲、5年前に出した『Guitar Is Beautiful KW45』でリー・リトナーと演奏した「Ripple Ring」など。さらに、ニューヨーク録音作『Lonesome Cat』(1978年発表。タイトル・トラックも含め3曲もそこから演奏された)や同じくNY録音の人気作である『TO CHI KA』(1980年)収録の「Manhattan Flu Dance」など、『KYLYN』前後の楽曲群も俎上に上げる。それらはミューザ川崎シンフォニーホールの音響設定にも合わせる形で、よりオーガニックな形で披露されていく。そのしなやかで臨機応変な様には、50年のいろいろな経験を加味したうえで、あのころ抱えていた冒険への衝動が未だ彼が抱えていることを伝えるものだった。

そう、クールなアンサンブルに留意しつつ、やはりギター・ソロはおおいに歌い、奔放にハネていた。トリッキーなフレイズがこれでもかと連なっているのに一方では確かな歌心に満ちているのは、さすが【KW50】たる所以。とともに、それらは途方もない技量の結晶であるとも痛感させる。結果、伸びやかかつ高らかに、ギターという楽器の音色が場内に満ち渡る。ああ、<ナチュラル・ボーン・ギタリスト>! それから、やはり楽曲自体が格好いい。渡辺香津美はギター演奏が最大級に活きる曲を書くことができる秀でたソング・ライターであることも、無条件に示唆されていた。

公演は2部制で行われたが、2部にはクラシック修練を根に置きつつブルージィな演奏も得意なギタリスト/シンガー・ソングライターのReiとジャズ・ピアノの匠である大西順子もフィーチャーするパートも持たれた。2、3曲加わるなか、ともに小編成で演奏する曲も1曲づつあり。Reiは渡辺の1980年有名曲「Unicorn」を、大西は同じく2011年のエキゾチック曲「Azimuth」を材料にそれぞれに瑞々しく対話する。相手となる人によって進め方はいろいろ、そこには音楽の山ほどの自由があった。

アンコールでは、『KYLYN LIVE』の最後に置かれていた、「Walk Tall」を出演者全員で演奏する。後にウェザー・リポートを組むジョー・ザヴィヌルがアルト・サックス奏者のキャノンボール・アダリィのために1969年に書いたくだけた楽曲のもと、みんなが意気揚々とソロを回し大団円となった。

曲ごとに入れる、MCも悠々。弁舌、さわやか。そして、その総体からは、やはり渡辺香津美は都会性に溢れた、MOBOなのだと思わされることしきり。MOBOとは彼が1983年から1985年の発表作品に掲げた名称だが、それはモダン・ボーイ(Modern Boy)の略から来ている。類まれなギターのスキルと現代/都会感覚のもと、彼は50年もの間ミュージック・シーンを悠然と横切ってきた。そして、それこそはKYLYNなるものの本質であり、見事に成熟を伴う形で会場にはKYLYNがやって来ていた。さあ、次はKW55、KW60ですよ!

Text by 佐藤英輔
Photo by 青柳聡

◎公演情報
【かわさきジャズ2021】【KW50 渡辺香津美「KYLYNが来る」】
2021年11月13日(土)
神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:渡辺香津美(Gt.)、井上銘(Gt.)、井上陽介(Ba.)、ヤヒロトモヒロ(Per.)、村田陽一(Tb.)、本多俊之(Sax.)
ゲスト:大西順子(Pf.)、Rei(Gt.)

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