専用道化が完了「気仙沼線BRT」沿線の現状は?

専用道化が完了「気仙沼線BRT」沿線の現状は?

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/01/15
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南気仙沼駅付近の専用道を走る気仙沼線BRT(筆者撮影)

快晴の11月30日火曜日の朝、気仙沼線BRTに乗り蔵内駅に降り立った。前回(北上南三陸町編)の終点、陸前港からはひと駅3分で、ここから宮城県最北端の市、気仙沼に入る。近くの歌生(うとう)バス停から、平日3本だけの気仙沼市民バス本吉三陸線が、7時49分に出る。

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この路線、運行を受託している会社が本吉タクシーで、タクシーとして認可されメーターがついているワゴン車(大型タクシー)を使っているためか、乗合タクシーを名乗る。だが定期運行で、他市町の市民バスと変わるところはとくにない。

細かな需要を拾うタクシー

JR気仙沼線をバス専用道化し、鉄道時代そのままに長大トンネルで抜けるBRTとは違い、こちらは交差点を何度も曲がっては集落を回る。途中、通学の小学生が小泉地区にある小学校まで乗ったのがいちばんのお得意様だった。

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歌生バス停と気仙沼市民バス本吉三陸線(筆者撮影)

高台への集団移転先である「団地」も通り、町外れにあるBRT本吉駅に寄ってから、旧本吉町の中心部まで直通する。高校生の通学利用が多いBRTに対し、もっと細かい需要を拾うタクシーであった。こちらは8時21分に着いた本吉駅前で下車。420円払う。ここは均一運賃ではなく区間制だ。

本吉では、8時31分発の気仙沼線BRTを待つ。ただ、この時はBRT専用道でケーブル工事が行われており、本吉を含む区間は一般道へ迂回運行していた。BRTでは防災工事や専用道そのものの補修工事により、しばしば専用道を外れた迂回が行われる。

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気仙沼BRTの本吉駅(筆者撮影)

私が乗った気仙沼行きも、大谷海岸までずっと一般道を走った。8時43分着の大谷海岸で下車したのは、BRT(JR東日本)の駅、バスターミナルを道の駅と一体的に整備した「道の駅・大谷海岸」を見ておきたかったため。2021年3月28日にグランドオープンしたばかりだ。そしてここは、海岸沿いを走っていた気仙沼線の線路敷を取り込んで建設されたところでもある。

大谷海岸は長く海水浴場として親しまれてきた。1957年に国鉄気仙沼線大谷駅が設けられ、1997年には大谷海岸に改称されている。しかし津波で壊滅。復興に当たって地元は砂浜の維持を選択し、並行する国道45号をかさ上げして防潮堤を兼用する方策を採った。

そのため鉄道の跡地はその下に埋もれ、BRTも大谷海岸駅前後では恒常的に一般道を経由するルートとなったのだ。BRTの柔軟性を活かした方法とも言えるが、将来的に、すでに実験が始まっている自動運転が導入されようとした際にネックにならないか。多少、危惧している。

春には2つの新駅が誕生

なお、気仙沼線BRT自体は2021年12月28日に大谷海岸―陸前階上間の専用道化が完成。同区間内に新駅「大谷まち」、不動の沢―気仙沼間に「東新城」が、それぞれ2022年春に開業し、事業を完了する予定となっている。同じくBRT化事業が進む大船渡線も工事完成が近いが、両線とも最終的に、全線専用道とはならない。

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大谷海岸駅に到着するBRT。海がすぐ近くに見える(筆者撮影)

BRT、ミヤコーバスの路線バス、気仙沼―仙台間などの高速バスが同じ場所に発着し、待合室も完備している大谷海岸駅の設備は完璧と思いつつ、次の9時33分発のBRTで南気仙沼へ向かう。この間、ずっとBRTがもっとも海に近いところを走る。

9時52分に着いた南気仙沼は漁港や気仙沼市の商業地域に近く、かつては事実上の市の中心駅であった。被災後、区画整理が行われ、空き地はまだ多いが住宅や商店などが少しずつではあるが建ち並びはじめている。

駅前広場は整備が済んでおり、10時16分発の市内循環バスに乗り継ぎ。漁船が多数、係留されている内湾地区を眺め、気仙沼市役所前に10分で到着する。この市民バスは平日には1日7本、時計回り、反時計回りそれぞれが走り、市内の主要地点を結ぶ。運賃は200円均一。そのため利用客は多い。

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気仙沼市内循環バス(筆者撮影)

わずか6分の接続時間で、気仙沼市役所前では大島線新王平(しんおうだいら)行きがやってくる。うまく乗り継げるかが心配だったが、十分間に合った。循環バスとミヤコーバス、乗合タクシーを乗り継ぐ場合、乗継券の制度があり、100円引きになることは見落としていた。

橋で本土と結ばれた大島

気仙沼湾内にある大島は、他に数ある大島と区別するため、気仙沼大島と通称されている。2019年4月7日に開通した気仙沼大島大橋(愛称・鶴亀大橋)により本土と道路で結ばれ、それまでは航路に接続し島内だけを走っていた路線バスが、1日8往復、気仙沼市中心部へ直通するようになった。この一連の旅で、離島がいかに天候に左右されがちな船便に頼っているかが理解できただけに、架橋を「悲願」と呼ぶ心持ちもわかる気がする。

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ミヤコーバス大島線(筆者撮影)

景勝地として知られる気仙沼大島は、観光客も多かった。展望台がある亀山へは市営リフトが通じていたが、これは津波で破壊されて撤去。法律上の鉄道(索道)とは言え、震災により消えた鉄道の1つとなっている。

大島線は生活路線で、買い物帰りのような客が目立ったが、旧フェリー乗り場の大島ウェルカム・ターミナル(浦の浜)や亀山入口も経由。リフトの痕跡もわずかながら確認できた。気仙沼市はモノレールによる復活を画策しているそうで、期待したい。

終点の新王平は島の南端に近い集落で、11時08分に到着。停留所近くに残っていた看板により、かつてはさらに先へ路線が延びて島を一周する系統だったとわかる。時間があるので歩いて進んでみたが、人家もごく少ない地域だった。

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ミヤコーバス大島線の終点、新王平バス停(筆者撮影)

気がついたのは、主な集落が丘陵地上にある点。繰り返し津波に襲われてきた三陸の生活の知恵だろう。帰りは大島出張所前11時50分発の気仙沼市立病院行きをつかまえ、12時09分着の鹿折唐桑駅まで乗る。運賃は往路が730円、復路が520円と、民営路線バスらしい値段になった。次に乗る御崎(おさき)線は12時51分発。この日はバス同士の接続がよく、昼食タイムまで取れる順調さであった。

唐桑半島を走る路線バス

御崎線は、気仙沼湾の東側に横たわる唐桑半島を行く路線バスで、8往復が走る。始発は気仙沼市立病院。気仙沼市内のバスは病院や市役所、商業地域にある田谷本郷をターミナルとしており、JR気仙沼駅を通らない系統も多い。気仙沼市役所のすぐ裏にも2022年春、大船渡線BRTの新駅「内湾入口(八日町)」が開業する。気仙沼駅ではなく、こちらを結節点とする方法も考えられよう。

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ミヤコーバス御崎線の終点、御崎バス停(筆者撮影)

乗り込んだバスは国道45号を走り、只越上で右折して、旧唐桑町(2006年に気仙沼市と合併)の中心部に入る。こちらも主な集落は丘陵地上で、山岳路線の様相を示す。このバスの吊り手は2本の革でVの字に支えられており、これは急カーブが多い路線用の特徴と聞いた。

半島の東側は気仙沼大島の一部とともに、三陸復興国立公園に指定されているが、御崎線自体はやはり生活路線。ところどころで整備された県道を外れて旧道に入る。唐桑半島ビジターセンターに寄り、終点の御崎へ13時31分に到着。ここは御崎神社の門前の広場にバス停があり、860円払って降りる。御崎に着いた後はどういう変化も取れず、14時00分発で来た道を戻るしかない。

1970〜80年代の時刻表を見ると気仙沼港と、今はバスも通らない唐桑半島西岸の小鯖や鯖立などの港との間に多数、運航されていた気仙沼湾内の汽船が掲載されているが、これらは全廃された。

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大島線も御崎線も尾根筋の県道沿いの「幹」に当たる部分をカバーしているだけだ。海辺に散在する集落の極めて小規模な、震災後は人口流出でさらに減ってしまった交通需要には、もはや市民バスでも応じられず、自家用車に任せるしかない状況なのである。

いったん大船渡線BRTの駅もある八幡大橋まで戻り、30分近く待って、1日3往復の大沢線の最終便。15時03分発で締める。先にやってきた御崎線に年配者ばかり何人も乗ると思ったら、目の前にあるパチンコ屋帰りの客だった。やはり気仙沼市立病院からやってきた大沢線の乗客は、2人だけ。

三陸道開通で交通量に変化

このあたり、大船渡線BRTも大沢線とともに一般道を走るが、あちらは途中、三陸自動車道を経由する。ミヤコーバスは国道45号の旧道を進み、只越上からは御崎線とは反対に北へ向かう。終点の大沢までは19分、560円。まだ空き地が多いところだった。

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BRTの唐桑大沢駅と同じ場所にある大沢バス停(筆者撮影)

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県境の標識。ここから先が岩手県陸前高田市(筆者撮影)

大沢バス停は、2019年に新設された大船渡線BRTの唐桑大沢駅と同じ場所だが、次の陸前高田方面行きは約1時間後。見覚えていたコンビニエンスストアは閉店しており、行き場を失う。ただ、馴染みの宿までは徒歩30分ほどとわかり、気候も穏やかだったので国道を歩き始めた。復興工事の進捗と三陸道の開通が大きく影響し、以前と比べて交通量は極端に減っている。コンビニエンスストアの閉店もやむをえまい。

十数分歩いたところで県境の標識が現れた。南端の岩沼市から7回に分けてたどってきた宮城県はこれで「卒業」。次回から岩手県に入る。

(土屋 武之:鉄道ジャーナリスト)

土屋 武之

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