体重たった1キロ、大きくなれない猫の奇跡 神経疾患で「天命は全うできない」と言われて1年半

体重たった1キロ、大きくなれない猫の奇跡 神経疾患で「天命は全うできない」と言われて1年半

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  • 更新日:2022/01/15
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助ちゃんこと豆助(左)と豆太、約1歳の時(提供)

飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回お話を聞かせてくれたのは、岐阜県在住の自営業、のんさん(50)。4年前に犬を迎え、1年8カ月前に、子猫を2匹迎えました。そのうち1匹は、病気のせいでずっと小さいまま。獣医さんに、「長生きは難しいかも」と言われたそうですが、日々、たくましく生きています。

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この大きさに育つまで、本当に大変でした……。写真のとおり、とても小さい。昨年8月末にやっと1キロになったのです。

写真の大きいほうが「豆太」で、小さいほうが「豆助」です。私はいつも助ちゃんと呼んでいます。豆太と助ちゃんは「親子?」とよく聞かれますが、2匹は同じ年で、約1歳8カ月なんです。

豆太と助ちゃんと私の出会いは、2020年の6月。

近所に住む親戚から「倉庫のマットに母猫と子猫が寝ている」と連絡がありました。そのとき、動物愛護団体に捕獲されたのが、母猫と、子猫3匹でした。子猫は、豆太と助ちゃん、もう一匹の兄弟猫でした。

ガリガリな子がいて、それが助ちゃんでした。助ちゃんは倉庫で親戚を見つけると、「おじさん助けて~」といわんばかりに、体によじ登ってきたそうです。

生命力が強いと思いましたが、そこからが試練でした。

豆太と助ちゃんはうちで世話をしながら、里親を探すことにしました。兄弟猫は別の方が預かりました。

そうなのです。初めは家で飼うつもりはなく、面倒を見ながら“飼える人を見つける”つもりでいたのです。家ではすでに犬を飼っていました。さらに2匹の子猫となると、ちゃんと育ててめんどうを見ることができるのか。最初は夫が渋っていたのです。

だから元気に“婿入り”できるといいと思っていたのですが、助ちゃんの調子が悪い。よく吐く。フードもあげはじめたのですが、とにかく吐いたのです。

周りに聞いてみると、「猫ってそんなものよ」という。吐く時に鼻からも泡を出して苦しそうなのに、動物病院に連れていっても、獣医師の先生は「こういう子いるんだよ。固形で吐くなら一生ミルクだね」と軽く説明するだけ。

でもいっこうに体が大きくならないし、嘔吐が治まらないので、別の動物病院にいくと、「食道が垂れ下がっている」「食べた後に“縦抱き”をして」と言われました。

それで食事のたびに30分くらい縦に抱いたけれど、やはりよくならない。お世話と心配で私は眠れず、一カ月で5キロもやせました。正直、逃げたいと思ったこともありました。周りには「野良猫に戻すことを考えたら」とも言われました。でも「外に出したら死んでしまう」と思い、助ちゃんに向き合ったのです。

その後、紹介でまた別の動物病院に連れていきました。するとそこの先生は、きつい口調で私に言ったのです。

「来るのが遅い!この子は見るからに重症です。ミルクをこのままあげていては間違いなく死にます」と。

厳しい先生でしたが、猫のことを思ってです。だから私にこうもおっしゃいました。

「僕はこの子を死なせたくはないので、できる限りのことがしたい」

その日から検査も含め10日以上入院。この先生は助ちゃんの主治医となりました。

助ちゃんの運命の分かれ道でしたね。よい先生と出会い、ぎりぎりのタイミングで間に合ったのです。動物病院にもいろいろあり、獣医師の考え方や方針もさまざまなのだとそのときにわかりました。

◆決まりかけるとなぜか流れてしまう

豆ちゃんは神経疾患でした。それで、嘔吐も激しく、腸から栄養も吸収されず体が小さかったのです。

しかも、助ちゃんはかなり珍しい症例のようでした。

何しろ体が小さく、(生後5カ月時に、体重は500グラムくらい)神経疾患のための薬を飲むと、一気に具合が悪くなってしまう。それで、一日2回、腸からうまく栄養吸収できる粉薬と、高栄養の療法食を一日60グラム、4回に分けてあげることになりました。

その方法で、嘔吐がやっと落ち着いてきました。

豆太に関しては、手もかからず、すくすく育ってきました。目がまん丸で、甘えん坊で人懐っこく、この子もかわいい。

ところが、2匹とも「行き先」が見つからないのです。

保護団体をはじめいろいろな方が譲渡先を探して下さったのですが、「決まりかけると、なぜか話が流れてしまう」ということが何カ月も続きました。夫も里親を一生懸命探していました。

助ちゃんは疾患もあるし“決まりにくい”のはわかるけど、豆太まで決まらないのは不思議でした。これも運なのでしょうか。

◆お風呂の出待ちも 甘え上手の助ちゃん

譲渡先が決まらないことは夫も承知していました。でも、一緒に住むうちに夫も情が湧いたというか、猫への気持ちも変わってきたようです。

助ちゃんは、天才的な甘え上手だったのです(笑)。

夫が仕事から戻ると、ぱーっと玄関に迎えに行き、夫がお風呂に入ると、浴室の前で出待ちをします。その姿の写メを撮って、「あなたが出てくるまで健気に待っていたのよ」と見せると、夫は「へえ~」とまんざらでもない様子。

そうこうしているうちに半年経ち、豆太と助ちゃんを正式にわが家の家族にすることにしました。

助ちゃんは、主治医の先生に「天命は全うできないかも」と何度も言われたので、腹をくくって、迎えました。

◆猫も犬も血が流れていて、感情がある

猫たちの前に迎えた、トイプードルの黒豆についても、少し触れたいと思います。

私には社会人の長男(23)と、大学生(20)の次男がいます。その長男が大学生の時、私と夫を下宿先の近くの商業施設のペットコーナーに連れていき、「友だちの家で犬を飼っていて、帰った時に嬉しいから、うちも犬がいたほうがいい」と言うんです。心づもりもなく、売れ残っていた黒豆の前にたたずんでいたら、「この子をずっと見ていましたよね」とお店の人が抱かせてくれて……かわいいと思ったけど、それでも、3時間はその場で悩みました。

フランスでペットの動物の売買を禁止したとニュースで知りましたが、日本でもペットショップでの動物の紹介の仕方や衝動買いは問題視されていますよね。

うちの場合もお店での出会いではありました。それでも黒豆と生活を通し、それまで知らなかった動物の温もりや生き物の愛おしさを知りました。あの時に黒豆を迎えてよかったと心から思っています。そして、その黒豆と生活をしていたからこそ、豆太や持病のある助ちゃんを、覚悟をもって受け入れることができたと感じています。

猫たちが来てからは目まぐるしい感じでしたが、動物と一緒に暮らして価値観や暮らし方が変わりました。

以前は、旅行にいったり、おいしいものを食べたりするようなぜいたくをしたいと思うことがよくありました。今はそうした「欲」があまりなくなり、些細なことに感謝できるようになりました。

犬や猫も、心臓があって血が流れている。ご飯が食べたい、遊びたい、甘えたい、嫌だ、悲しい、うれしい……私たちと同じ感情もある。そのことを、この年になって、この子たちから教わった感じです。

とくに、助ちゃんを見ていると、「元気なこと」が当たり前でなく、ありがたいことだとわかる。

正直、助ちゃんの療法食代や薬代はかなり、かかります。周囲からは「野良猫なんかにお金をかけて」とか「野良をよくお世話できるね」といわれることもあるのですが、家族になったらどこで生まれたかは関係がないですからね。

◆春が来たら2歳「このうちにずっといてね」

助ちゃんは、今は安定し、動物病院の先生も「この子はすごい」と言ってくださいます。

それでも体を冷やすと調子が悪くなるので、あんかや、猫用コタツで冷えないようにしています。

また、怖いのが誤食です。助ちゃんは、どれだけ食べても満腹感を感じないため、キッチンに入りたがるのです。

ちょっと前に、私が目を離したすきに、助ちゃんは台所に置いてあったグリーンカレーを食べてしまったこともありました。あんな辛い物を! 気づいた時には鍋に顔を入れていて、口からカレーがたらたら……。幸い何ともなかったのですが。

だから、寝る時は、ケージに入ってもらっています。助ちゃんはそれが気に入らないんですけどね。

「助ちゃんおやすみ~」というと、ぷいっと横を向いて私と目をあわせず、寝たふり。薄目を開けて、まだ私がいるとわかると、また目を閉じる。本当に人間みたいです。

じつは、助ちゃんと一緒に倉庫で保護された兄弟猫は、感染症にかかっていて、あの年のお盆に亡くなってしまったのです。元気に見えた豆太も、倉庫で何度か落ちたようで、肋骨が折れたまま固まっていたことが後でわかりました。それでも何とか無事にしています。

助ちゃんや豆太に、兄弟猫が「自分の分も生きろー」とパワーを送って、守っているのかもしれません。私は助ちゃんにいつも言っています。

「体がつらくなくて、あなたが幸せなら、このうちにずっといてね。ここがあなたのうちだから、みんなで一緒に暮らしていこう」

春が来たら、豆太と助ちゃんは2歳になります。

どうかすてきな年に、なりますように。

(水野マルコ)

【猫と飼い主さん募集】
「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com

水野マルコ

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