見習うべき強固な国防意思、中国本土攻撃能力を自力で強化しつつある台湾

見習うべき強固な国防意思、中国本土攻撃能力を自力で強化しつつある台湾

  • JBpress
  • 更新日:2022/06/23
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台湾南部の屏東県付近で行われた国産長距離地対空ミサイルの発射訓練(資料写真、2022年5月、提供:Taiwan Ministry of National Defense/AP/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

游錫堃台湾立法院長は、「中国は台湾侵攻を真剣に再考しなければならない。なぜならば今や台湾は独自に開発した『雲峰』超音速長距離巡航ミサイルを手にしており、中国は“800の敵を傷つけるために1000の味方が傷つくことになる”からである」と発言した。新たに開発された対地攻撃用長射程ミサイルが北京を射程圏内に収めていることを警告する発言である。

それとともに游立法院長は、台湾は中国の武力攻撃に備えるため、自給自足の軍需生産能力を強化するべきであるとも述べた。

もっとも、游錫堃氏が強調したのは中国と台湾が干戈(かんか)を交えることではなく、台湾の防衛意思は極めて強固ではあるものの最も重要なのは平和に共存することである、ということであった。

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台湾の高度な巡航ミサイル開発製造能力

報道では游立法院長は「雲峰」ミサイルがすでに量産体制に入っていると述べたとされているが、台湾国防当局者は量産体制に入っている点に関しては明言していない。ただし、台湾が独自に射程距離2000km程度の対地攻撃用超音速長距離巡航ミサイルを開発製造していることは以前より確認されていた。

台湾は、国産の対地攻撃用亜音速長距離巡航ミサイル「雄風IIE/IIER」(最大射程距離600km/1200km)や超音速対艦ミサイル「雄風III」(最大射程距離400km)を量産しており、高度な巡航ミサイル開発製造能力を保有している。そのため、国立中山科学技術研究所が開発していた「雲峰」超音速長距離巡航ミサイルの完成は時間の問題であった。

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超音速対艦ミサイル「雄風III」(写真:中山科学技術研究所)

雲峰ミサイルの開発は長期にわたって極秘に行われていたため、いまだにその正確な諸データは公表されていない。しかし米軍情報筋などによると、少なくとも最大射程距離が1200マイル以上で巡航速度マッハ4の超音速巡航ミサイルであることは間違いないようだ。

したがって、游立法院長が述べたように、雲峰ミサイルを台湾南東部の台東県から発射した場合でも北京は射程圏内に収まり、上海、広東をはじめ中国の大都市の多く、ならびに主要航空基地の多くも攻撃圏内に収まっている。

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雲峰ミサイルの射程圏

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2019年には、国立中山科学技術研究所が20基の新型ミサイルと10両の地上移動式発射装置を製造している、と現地で報道されたこともあるため、すでに量産体制に入っている可能性も否定できない。

「一矢を報いる」可能性がある抑止力

近年になり、台湾の防衛戦略は、中国軍が台湾に上陸侵攻する以前に対艦ミサイルや防空ミサイルを中心とした接近阻止戦力による反撃を実施して中国軍の上陸を阻止する方針を防衛戦略の中心に据えている。そのため、地対艦ミサイルを中心とした接近阻止用ミサイルの開発保有に力を注いできた。雲峰ミサイルの量産は、台湾軍が盾ともいえる接近阻止戦力に加えて中国本土深部の戦略目標を攻撃する鉾ともいえる戦力を本格的に強化し始めたことを意味している。

ただし非核保有国である台湾の長射程ミサイルが、北京をはじめ中国各地の戦略目標を破壊する能力を保持していても、台湾軍の数十倍の数量の長射程ミサイルを保有し、航空戦力も海軍力も遥かに強大な中国軍に対して、強力な抑止効果を発揮することは期待できない。台湾軍が保有する雲峰ミサイルをはじめとする対地攻撃用長射程ミサイルは、あくまでも最小限の抑止力、あるいは「とりあえずの抑止力」に過ぎない。

「とりあえずの抑止力」とは、中国が軍事攻撃を仕掛けた場合には、台湾は「やられっぱなし」ではなく、中国共産党指導部や重要戦略目標に対して報復攻撃を敢行し「一矢を報いる」能力を持っていること示すという限度における抑止力を意味する(拙著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』講談社、第7章参照)。

ただし、このような限定的な抑止力とはいえども、「やられっぱなし」の状態と「一矢を報いる」可能性の存在では、侵攻側にとっては雲泥の差となる。

まして台湾の各種長射程ミサイルは国産であり、他国から抵抗用の兵器を供給されることを当然のように振る舞っている“異常な状態”のウクライナとは、国防に対する姿勢が根本的に異なっているといえよう。

参考までに台湾軍が運用している長射程ミサイルを列挙すると、以下の表の通りである。

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台湾軍が運用している長射程ミサイル

日本も強固な国防意思を示すべき

日本においても、中国やロシアそれに北朝鮮が日本に軍事攻撃を仕掛けてくると本気で考えているのであるならば、アメリカの歓心を買うためにアメリカから超高額兵器類を気前よく買いまくったり、アメリカ軍の駐留関係費用などに貴重な国防費を投入する、といった姿勢を即刻中止せねばならない。そのようにして“日米同盟を強化(!?)”しても、万が一にも中国やロシアや北朝鮮が日本にミサイルを連射してきた場合には、日本は「やられっぱなし」の状態に過ぎないことを、いい加減に再認識すべきである。

アメリカにすがりつくよりも、国産の長射程ミサイル(準中距離弾道ミサイルと超音速長距離巡航ミサイルならびに亜音速長距離巡航ミサイル、もし可能であるならば極超音速飛翔体)の開発・量産に努力を傾注し、最小限の抑止力でも良いから、自ら「一矢を報いる」能力を手にして強固な国防意思を示す必要がある。

北村 淳

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