何をやっても勝てる安倍内閣を支える民意

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  • 更新日:2019/08/14

◆何をやっても勝てる安倍内閣

7月21日に行われた参議院選挙は、自民党と公明党の与党が改選議席の過半数を獲得して勝利を収めました。
ただし憲法改正に前向きな姿勢を示す、いわゆる改憲勢力の議席数は、発議に必要な3分の2を割り込むことに。
わが国の野党は、55年体制のころから、憲法改正を阻止するだけの議席を保つことを最大の目標としてきましたが、それは達成されたわけです。
とはいえこの結果、考えてみればスゴい話。

2019年に入り、経済は冷え込みの色を強くしています。
4月〜6月期のGDP速報値(季節調整値)が、前期比0.4%増で「想定外の伸び」と評されるくらい。
実質賃金は2019上半期を通じて、前年同月を下回りました。
とかく成果を強調したがる政府の景気判断すら、良くて据え置き、悪ければ下方修正です。

GDP1.8%増、消費堅調で想定外の伸び 4~6月年率」
景気判断6年ぶりに「悪化」、一致指数、外需が低調」
6月実質賃金は前年比0.5%減、物価高止まり響く=毎月勤労統計
景気判断据え置き=生産は上方修正-月例報告

しかも10月には消費増税が待っている。
8%を10%に引き上げるというと「2%増」という感じですが、これはあくまで税率の話。
10÷8=1.25なので、税金自体は今までより25%増えるのです!

普通ならこれだけで、与党は敗北か、少なくとも大苦戦してしかるべきところ。
そのためでしょう、6月ぐらいまでは「消費増税の凍結を宣言したうえで、ダブル選挙にでも打って出ないことには、与党(わけても自民党)は負けるのではないか」という観測がありました。
しかし総理は消費増税を撤回せず、衆院も解散しないまま選挙に臨む。
それでなお、これだけの議席を獲得できるのです。

2012年に政権を取り返して以来、安倍総理は国政選挙で6連勝。
野党のみなさんには申し訳ありませんが、安倍内閣、ないし自民党政権は、もはや何をやっても勝てるという感じではありませんか。

◆与党の選挙結果を検証する

今回、自民の獲得議席は57。
公明は14議席なので、あわせて71。
改選過半数の63議席を余裕でクリアーしました。
両党の非改選議席数は70(自民56+公明14)ですから、合計141議席と、参院全体の過半数(123)も軽々とクリアー。

ただし維新の議席が10にとどまったので、改選された議席のうち、改憲勢力の数は81となりました。
非改選議席に占める改憲勢力の数は79(自民56,公明14,維新6,無所属3)ですから、あわせて160。
参議院全体の3分の2、164議席を確保するには4議席足りなかった次第です。

自民の獲得議席数57は、改選前(66)より9議席少ない。
2013年ほどには勝てなかったのですが、これは6年前が勝ちすぎだったというべきでしょう。
論より証拠、自民の非改選議席数(=2016年の当選者)は56。
2019年のほうが1議席多くなっています。

今回からは選出される議席の総数も3つ増えましたので、「2016年を上回る勝利」と言えるかどうかは微妙なところ。
だとしても、ただでさえ良くない景気がいっそう悪化しそうな中、増税を掲げて選挙に挑み、前回と並ぶ結果を出せたのです。

なるほど、自民党の総議席数113は、参院の過半数ライン(123)を割り込んでいます。
公明党との連携が欠かせないゆえんですが、これにしたところで「安倍総理の失点」とは形容できません。
平成以後の参議院において、自民が単独で過半数を獲得したのは、2016年〜2019年の3年間のみなのです。

昭和期の自民党(※)は、ほとんど毎回、単独で参院の過半数を確保できていましたので、往年に比べればパワーダウンしているのは事実。
しかし、そんなことを言い出したら、平成の日本そのものが、昭和期に遠く及んでいません。
いかなる国も、みずからのレベルに見合った与党しか持てないのであります。

(※)自民党が誕生したのは1955(昭和30)年なので、ここでいう「昭和期」とは、むろん昭和後半期のことです。

◆ニッポンの驚くべき民意

それはさておき、選挙は国民が政治について評価を下す機会。
「民意を示す」というやつです。
与党が勝利した場合、国民は現在の政治を支持していると見なさねばなりません。

最近の選挙では投票率の低さがしばしば問題視され、「これで民意が示されたことになるのか」と疑問を呈する人もいますが、投票しないのも民意のうち。
「ことさら政治について評価を下すつもりはないので、どんな選挙結果であっても受け入れる」という意思が表明されているのです。
よって今回の参院選では、「安倍内閣による現在の政治を支持する」という民意が示されたわけですが・・・
これは具体的に何を意味するのか。

まずは消費税の増税、それも景気が冷え込んでいる中での増税が支持されたか、少なくとも容認されたことになる。
となればデフレ脱却はいよいよ難しくなりますから、国民はいっそうの貧困化や、格差のさらなる拡大も受け入れています。

のみならず、以下の各点についても、支持・容認の民意が示されたと見るべきでしょう。

・外国人労働者(=移民)受け入れ
・年金支給開始年齢の引き上げ
・水道事業の部分民営化
・IR(カジノを中心とする統合型リゾート)誘致
・農業や漁業への外資参入の促進
・インバウンド(外国人観光客誘致)促進による各種トラブルの増加
・通商交渉におけるアメリカへのさらなる譲歩
・韓国へのヒステリックな強硬姿勢
・日朝首脳会談の無条件開催
・北方領土返還交渉の実質放棄
・統計数字をめぐる不正
・衆参予算委員会の長期にわたる開催停止
・都合の悪いことは何であれ、暴言を吐いて逆ギレするか、否認してごまかせばいいと構える態度

◆安倍は「終身総理」になるか

大した民意ではありませんか!
安倍内閣は、まさに何をやっても支持されるのです。
投票日の夜、ラジオ番組に出演した自民党の二階俊弘幹事長が、安倍総理の総裁任期延長について肯定的な姿勢を見せたのも、当然と評さねばなりません。

安倍総理の在任期間は、8月24日に歴代2位、11月20日には歴代1位となります。
とはいえ「何をしても支持される」状態が続くかぎり、このまま「終身総理」となることだって、理屈のうえではありうるのです。

2016年、ドナルド・トランプが大統領選挙に勝利したとき、同国の映画監督マイケル・ムーアは「おやすみ、アメリカ。君たちは史上最後の大統領を選んだのだ」と述べました。
トランプ政権のもと、アメリカの民主主義は決定的に変質してしまうだろうから、彼で最後だという意味です。

Michael Moore: If Elected, Donald Trump Would Be "Last President of the United States"​(YouTube)

ならば2012年、わが国の有権者も、戦後史における最後の総理を選んだのかも知れません。
そこまで行かなくとも、現在の野党の不人気ぶりを思えば、「民主党政権を倒し、自民党を政権に返り咲かせる」ことが、戦後史最後の政治的選択だった可能性は高い。

しかし内政と外交の両面で、国家や国民の利益を守ることができずにいる政権を、かくも手放しで支持したら最後、国が没落するのは不可避。
拙著『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)のサブタイトルではありませんが、ずばり「爽快な末路」です。

一体、なぜこうなったのか?
次回はこれについて考察します。

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