「あなたはどこの国の総理か」

  • 西日本新聞
  • 更新日:2017/08/13

中身は薄く気持ちもこもっていない言葉が悲しかった。6日の広島平和記念式典と9日の長崎平和祈念式典での安倍晋三首相のあいさつだ。

首相は長崎でも、私の古里の広島でも「唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けた歩みを着実に前に進める努力を絶え間なく積み重ねる」と断言した。

首相はさらに「真に『核兵器のない世界』を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要。わが国は非核三原則を堅持し、双方に働き掛けを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意だ」とも述べた。

本当だろうか。先月、米ニューヨークの国連本部で採択された核兵器禁止条約への日本政府の対応をみれば、首相の努力も決意も疑わしい。

条約は核兵器の使用、開発、実験、製造、保有、貯蔵、移転、威嚇などを禁止する。国連加盟国の63%に当たる122カ国が賛成したのに、日本は核保有国などとともに採択をボイコットした。

その理由を政府は「条約は核保有国と非核保有国の亀裂を深める」と説明したが、実際は米国の「核の傘」に依存する立場を最優先にしたということだろう。「核兵器のない世界」実現に向けた努力や、核兵器国と非核兵器国への働き掛けとはどこでどのように行われたのか。その形跡は私たちには見えない。

長崎市の田上富久市長は平和宣言で「条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を被爆地は理解できない。核の傘に依存する政策の見直しを」と訴えた。広島市の松井一実市長も「条約の締結促進を目指して核保有国と非核保有国の橋渡しに本気で取り組んでほしい」と注文を付けた。核兵器廃絶を願う被爆地の心だ。

だが、両市で用意したあいさつ文を読み上げた首相は条約に触れなかった。式典後の面談で被爆者団体は首相に抗議した。長崎では「あなたはどこの国の総理ですか」とまで問われた。被爆地と首相の間には深い溝がある。その溝を埋める努力を首相はしていない。

=2017/08/12付 西日本新聞朝刊=

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