レーダー事件「韓国ナショナリズム」が3月1日に暴発する可能性

レーダー事件「韓国ナショナリズム」が3月1日に暴発する可能性

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/01/12
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※本記事は『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまるジャパン極」の放送内容(2019年1月4日)の一部抜粋です。野村邦丸氏は番組パーソナリティです。

「事実関係は争わない」が普通なのに

邦丸:早く片付くかと思ったら、意外と長く尾を引いていますね。

韓国海軍の駆逐艦が北朝鮮の漁船を救助しようとしていた。韓国側の主張によると、そこに海上自衛隊の哨戒機が飛んできて低空飛行をしたので、威嚇行為だと考えて、普通に警戒した。ところが、日本側の海上自衛隊の哨戒機は、攻撃の予兆である「火気管制レーダー」を当てられたと言っていて、両者譲らずということなんですが。

佐藤:まず、こういう事態になったら、基本的に「友好国間においては、事実関係をもって争わない」というのが普通なんです。

つまり今回なら、レーダーを当てたかどうかについての事実は争わない。ところが事実関係からして、ぶつかっちゃっていますからね。

こういうときは「自国が正しい」と、どちらの国のマスメディアも国民も思うわけです。日本人は「日本政府は嘘をついていないはずだ」という前提で考えるし、韓国も同様に、自国の政府は嘘をついていないはずだと考える。

どうしてかというと、複雑な心理ですけれど、両国とも民主的な選挙を経て政府がつくられているわけですね。そうすると、「わが国は選挙で嘘つきを選んでいる」となれば、非常に屈辱的なんです。ですから、こういう事態になると、普段は自国の政府に対して批判的な人でも「相手が嘘をついているんだ」と言うわけです。

邦丸:ふむ。

佐藤:しかし冷静に見た場合、これは日本が言っていることが正しいですよ。

防衛省が動画を公開しましたよね。あの動画は、途中が切れていないですから。ただし強いて言うなら、一ヵ所だけ弱かったのは、火気管制レーダーが当たると哨戒機内で警報機が鳴って、乗員が「すごい音ですね」と話しているところ、音をカットしているでしょ。あれはたぶん、「どの感度で鳴ったか」ということが、非常に高度な防衛秘密になっているんだと思うんですよ。どういう音を発するかとか、そういったことも隠さないといけない。

邦丸:ああ、そうか。

佐藤:どの時点から警報が鳴っているかも、自衛隊機にどの程度の察知能力があるか推定される可能性があるので、本来ならば公開しないんだけれど、そこまで公開したということが、日本政府の自信ですよね。

それから韓国側は、「飛行機の動画は出さない」と言っている。なおかつ、「接近してきた」と言っても具体的な距離を明示しているわけではないですよね(注:韓国国防部は「反論動画」を1月3日に公開、「日本の哨戒機は広開土大王艦の150メートル上空、距離500メートルまで接近した」と述べた)。「カミカゼ攻撃のようだ」という論評もあるようですが、自衛隊機が韓国の駆逐艦に体当たりするなんてことがありますか。

邦丸:ないですよね。

佐藤:韓国側の主張が、こういう常軌を逸した内容になっていることを、どう考えるか。元役人だった私からすると、韓国も日本も一緒の考え方をしているんです。つまり、「うちの部下は嘘をつかない」。

私の推定はこうです。確かに韓国船は北朝鮮の漁船を探していて、日本側が説明している通り、日本の領海に近いところにいた。「同じ民族なんだから助けよう」と、一生懸命に漁船を探して、現場は熱く必死になっていた。そこに「なにやってんの?」と日本側が見に来た。「この野郎、他人がバタバタしているところに見物に来やがって」とカーッとなって、火気管制レーダーを「現場の判断で」照射した。

もちろん、これは戦争につながりかねない危険な行為で、こんなことを許可したとなれば大変な問題ですから、たぶん艦長は「いや、うちの乗組員はそんなことやってない」と韓国国防部に報告した。韓国政府も、うちの艦長は嘘をつかないという前提で、「照射した事実はないです」と言って、「ここはどうか穏便に」という形で抑えようとしたら、「ちょっと待ってくれ。事実関係を曲げられてはかなわない」と、日本側もカッとなった。

そういうふうに応酬が始まって、収拾がつかなくなっちゃったーーということだと思うんですよ。

韓国「ナショナリズム高揚」の深層

佐藤:ただし背景には、もっと大きな韓国のナショナリズムの高まりがあると思います。徴用工問題でも、韓国の最高裁は戦線を拡大しているでしょ。カーッとなっているんですよ。これからいちばん危ないのが、今年の3月1日です。

邦丸:3月1日?

佐藤:韓国の三・一独立運動記念日です。当時は「万歳事件」と言っていましたけれど、日本統治時代の朝鮮で、「マンセー(万歳)」と叫んで日本からの独立を訴える人たちの運動が、徹底的に弾圧された。1919年のことです。その100周年にあたる今年は、南北共同で記念事業をやることになっている。ですから3月1日に合わせて、韓国のナショナリズムはものすごく高揚しますよ。

その背景にあるのは、「韓国に経済力が付いてきた」ということです。国力イコール経済力ですから。

2017年のGDP(国内総生産)を調べてみると、日本が4兆8721億ドル、韓国が1兆5308億ドル。単純に比べると、3倍近く開いているなと思うんですが、人口は日本が1億2600万人で、韓国は5100万人ですから、1人あたりで考えると、かなり近づいてきているんです。

加えて物価を考えると、たとえばタクシーに乗ってもバスに乗っても、韓国は日本のおよそ半分の料金です。物価は韓国のほうが安いということを考慮すると、生活水準は日韓でほぼ同じになった。アッパーミドルから富裕層になると、韓国のほうが格差が大きいですから、かなりいい暮らしをしているわけです。

最近はインバウンドで、韓国から日本にたくさん観光客も来る。「あれ? 日本人って、この程度の生活レベルなの? なんでそんな国に我々はナメられているんだろう」というふうに見えてくる。

そうした「草の根ナショナリズム」が、いまの韓国ではすごく高揚していると見ています。だから日本に対して、かなり無理筋のことを言ってくる。植民地支配を受けていたときの記憶は教育によって再生産されていますから、事実関係を曲げたりとか、かなり乱暴な姿勢も辞さない。

他の国に対しては、あまりそういうことはしないですよ。それだから、国際社会からは「日本と韓国は、なんでこんなに仲が悪いんだろうね」と見えてしまう。こういう状態なんですね。

文在寅大統領も、わかっているが…

邦丸:日本政府は、「いや、こちらは本当に火気管制レーダーを受けました。この事実関係は曲げられません。ただ、政府同士は冷静でいましょう」ということについては、文在寅大統領にメッセージを発しているわけですよね。

佐藤:はい。文さんも韓国外交部も、そんなことはわかっています。しかしナショナリズムというのは、いったん煽っちゃったら水道の栓をギューッと開くように、一方向にしか回せない。

邦丸:佐藤さんは、徴用工問題のときからそうおっしゃっていますね。

佐藤:文政権というのは、ナショナリズムを使いながら権力基盤を拡大した政権ですから、なかなか蛇口を閉めることができないんです。ジレンマに入ってしまっているわけですね。

ただ、ちょっと限度を超えてきていますね。事実関係のところで、少なくとも「自分たちが間違えたので、黙っています」ということなら構わないんです。しかしそこで、「日本が事実を曲げている」みたいな話になってくると、これは言わざるを得ない。このことから導き出せるのは、結局、「文在寅政権の間は、日韓関係は様子見」ということですね。何をやっても裏目に出る。

ただし、あらかじめ予告しておきますが、3月1日に不測の事態が生じないように、日本政府も韓国に対してメッセージを出したほうがいいと思いますよ。たとえば釜山の日本総領事館やソウルの日本大使館、日系企業に対して何か起きるということになれば、これは日韓関係が取り返しのつかないことになってしまう。

ナショナリズムを爆発させることのリスクについて、韓国はもう少し認識を持ってほしいですよね。

邦丸:日本側からすると、民間も含めて、どんな対応を3月1日に向けてすればいいんでしょうか。

佐藤:外交的には抑制された態度をとると同時に、各国に対して、後ろでちゃんと言っておくことですね。「こういったことが起こり得るので、日本としては非常に心配しているんだ」と、アメリカでもロシアでも中国でもいいですから、密かに外交ルートで伝え始めることです。「今年前半の最大の懸案」くらいのことは言ってもいいと思いますよ。

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