叩いて叩いて、薄い鉄板がまさかの生き物に

叩いて叩いて、薄い鉄板がまさかの生き物に

  • JBpress
  • 更新日:2017/09/16
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本郷真也さんの新作『流刻』(2017年)。モチーフはオオサンショウウオ

ガン、ギン、グワン。

千葉県北部。江戸川にほど近い田園地帯に、金属を叩く音が鳴り響く。

鍛金作家・本郷真也さんのアトリエがあるからだ。

本郷さんは、鉄を素材にして、動物の姿を実物大でリアルに形づくる「鉄の作家」である。精妙な作品からは、動物の生気までもが感じられ、見れば見るほど引き込まれる。

本郷さんのアトリエにて、鉄に「命」を吹き込む術を語ってもらった。すべての時間を創作に捧げる、ストイックな姿勢が浮かびあがった。

(参考・関連記事)
・その彫刻は、なぜ拝みたくなるのか? 「超絶技巧」の現代アート(仏師・加藤巍山)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50598

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一度つくった形が永遠に残るのは「不自然」

──作品はすべて鉄を素材にされているそうですね。鉄を選んだ理由は?

本郷真也氏(以下、敬称略) 「生命」を形にしたい、という思いからです。鉄は錆びたり朽ちたりしやすく、作品としてつくり上げたあとも、変化していく。そこが「生命」に通じるかな、と。

銅のように、一度つくった形が永遠に残るのって、自分にとっては不自然に感じてしまうのですよ。

──「生命」というテーマが先にあったのですね。

本郷 小さい頃から、動物を見るのが好きでしたから。例えば、『暁』という、カラスをモチーフにした作品なんですけど、ふだんは嫌われ者の彼らにも生活があり懸命に生きているわけですよね。そんな現代社会の中で「力強く生きる命」に感動するんです。そしてそれを表現したいという思いで制作しました。

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カラスをモチーフにした『暁』(2017年)

──鉄は、造形用に特別な材料があるのですか?

本郷 いや、ごく普通の建材用の鉄板です。

──薄い鉄板が、どうすれば動物の形に?

本郷 基本的には鍛金ですね。つまり、ひたすら叩くだけです。コークス炉やバーナーで鉄板を真っ赤に熱してから、金床などの上に置いてハンマーで叩きます。徐々に変形させていって、少しずつ動物の形に近づけていくんです。

なぜ下絵を描かないのか

──新作の『流刻』のモチーフは、オオサンショウウオ。皮膚の細かい凹凸まで表現されていますね。

本郷 そこは、タガネ(金属加工用のノミに似た工具)で裏側から打ち出しています。

熱して打ち出すのを「熱間(加工)」、冷えた状態で加工するのを「冷間(加工)」と言うんですけど、それぞれで鉄の加工の具合が違うんです。両者を使い分けながら、より複雑な形にしていきます。

──カラスも鉄板なんですか?

本郷 はい。まず内側の骨組みをつくって、そこに1枚1枚別々の羽根を重ねて合わせていきます。

──羽根の黒い色はどのように?

本郷 鉄の表面処理方法である「油焼き」を利用しています。油を塗ってから熱すると黒いコーティングができて、錆がつきにくくなるんです。

油焼きには、通常、サラダ油などを使うことが多いですけど、カラスの羽根は自動車整備工場から出た廃油を使いました。そのほうが雰囲気がありましたので。

──下絵などは描かないとうかがいました。

本郷 はい。立体の作品をつくるのに、二次元の絵を元にすることはないですから。

制作の途中で、粘土で原型をつくっておけばよかったかな、と頭によぎることはあります。でも、実行したことはないですね。

粘土原型をつくるとモチーフへの最初の感動が消化され、形を移すことに夢中になれなくなります。やはり感動の鮮度は大切にしていきたいです。それと、その手間をかけるくらいなら、鉄板を打ち出す作業に時間をあてたいんです。

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本郷 真也(ほんごう・しんや)さん

1984年、千葉県生まれ。2010年、東京芸術大学大学院 美術研究科鍛金専攻修了。以後、作家活動に入る。

表現方法にも無数の正解がある

──制作にかかる日数は?

本郷 カラスで約2カ月。オオサンショウウオは、それ以上です。

──1日の作業時間は、どのくらいですか。

本郷 ほぼ1日中ですね。朝8時頃から始めて、夜の8時くらいまで仕事しています。どこかへ用事で出かけたときも、すぐに帰って続きの作業をしたい、とばかり考えています。

──制作中の息抜きは、なんでしょうか?

本郷 コンビニに飲み物を買いに行くときくらいですかね(笑)。世間とつながる数少ない機会ですから大事にしています。

店員さんに「ありがとうございました」と言われる瞬間、「あ、世の中とつながっている・・・」とうれしくなるんですよ。

──これからの目標は?

本郷 自身が納得いく作品が作れるようになるために、鉄に関連したすべての技法をきわめたいですね。

打ち出し、溶接、彫金など、鉄の加工方法はいくつもあります。どの技法も、自分なりの工夫を加えないと、生きている動物の存在感は、表現できません。

動物の佇まいや雰囲気は、種類によっても、個体によっても異なる。だから表現方法にも無数の正解があると思っています。

(※)“孤高の鉄男”本郷真也さんの作品は、本日9月16日から東京・日本橋の三井記念美術館で開催中の特別展「驚異の超絶技巧! - 明治工芸から現代アートへ -」に展示されています(12月3日まで。同展は、2018年以降、岐阜県現代陶芸美術館、山口県立美術館、富山県水墨美術館、あべのハルカス美術館に巡回の予定)。

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