東芝がBリーグの名門・川崎をDeNAへ譲渡。身売り価格300万円の理由とは

東芝がBリーグの名門・川崎をDeNAへ譲渡。身売り価格300万円の理由とは

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  • 更新日:2017/12/09
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Bリーグの川崎ブレイブサンダースの経営権は300万円で東芝からDeNAに譲渡された(写真左からDeNAバスケットの元沢新社長、ベイスターズの岡村社長、東芝の豊原執行役上席常務、TBLSの荒木社長)

東芝は、連結子会社のTELSサービスが運営していたプロバスケットBリーグの川崎ブレイブサンダースをDeNAに譲渡することを6日、発表した。両社の責任者が出席して川崎市内のホテルで承継合意の記者会見が行われたもの。また同日行われたBリーグの理事会にて「オーナー変更」が承認された。

すでに開幕している2017―2018年シーズンについては、TELSがそのままチームを運営、DeNAはスポンサーとして支援。DeNAは、来年1月以降に株式会社DeNAバスケットボール(仮称)を設立し、2018-2019年シーズンを前にした来年7月1日から正式な運営をスタートさせる。

川崎ブレイブサンダースは、1950年に創設された東芝の企業チームが母体で、NBLで2回優勝し、全日本選手権で3度の優勝を誇る名門。Bリーグ初年度はファイナルへ勝ち進んだ。

その強豪を67年間に渡って運営したきた東芝がチームを手放す理由について、この日、東芝の豊原正恭・執行役上席常務は、「一般論として申し上げて現在の私どもの状況からいたしますと、いろんな面で経費の削減を考えるのは、企業として継続的に行っていること。しかし、今回(の譲渡)は、その側面より、チームの今後の発展、リーグの発展に何がいいかを検討した結果」と説明、本社の経営圧迫による“身売り説”を否定した。あくまでも、チームの継続的な発展を考え、ベイスターズでの成功ノウハウを持つスポーツ経営のプロであるDeNAへチームを譲渡したという理由を主張した。

またどちらが先に譲渡の話を持ちかけたかについても「どちらからと特定したお話でなく一般的なスポーツに関する話の中で一致を見た」と口裏を合わせ、ハッキリと返答しなかった。
実際は、東芝は、水面下で銀行筋の紹介などを含めてDeNAより先に複数の企業と譲渡交渉を行っていた。その中には、横浜DeNAの前社長だった池田純氏を中心としたグループもあったという。

今回の譲渡価格は、たったの300万円。DeNAのスポーツ事業本部戦略部の西谷義久・部長は「資産、負債の帳簿価格を(譲渡の)対価として支払うということ」と補足した。プロチームの資産価値として、ほぼゼロ評価である。

先日、Bリーグが発表した2016-2017年シーズンの決算表によると川崎の営業収入は、約9億5400万円ほどあり、経常利益は、約2億5000万円になっているが、営業収入のうち約6億5000万円がスポンサー収入で、実は、そのほとんどが東芝本社からの補填。実質は赤字経営で本社の経費削減の対象となっていた。

東芝が持つ社会人の野球部、トップリーグに参加しているラグビー部「ブレイブルーパス」については、「野球、ラグビーの日本人選手はすべて社員で、あくまででも福利厚生。言い方を換えると、従業員の士気高揚のための施策。中長期的(に運営を継続する)という将来の話(をするの)は、なかなか難しいが、当面の間は現状維持」という会社の方針を豊原氏は明らかにした。「当面の間」が何年を示すのか、よくわからないが、Bリーグ移行と同時にプロ契約となったバスケットの方は、プロチームになった以上「福利厚生」という社内外への“言い訳”は、もう通用せず切り離しにかかったようだ。

赤字を重ねていくチームを手放せてスポンサーとして今後も新しいチームを支援することで工場もある川崎市への地域貢献を続けられるのならば、ゼロ評価の300万円で譲渡しても大きなリスクはないというわけか。
選手やスタッフには、昨夕、オーナー変更が伝えられたという。

一方のDeNAは、当初、ベイスターズと同じ横浜圏内にあるBリーグの横浜ビー・コルセアーズに興味を示し、こちらに経営権の譲渡を持ちかけていた。だが、その話が9月上旬に潰れたため急遽方針を転換した。  キュレーションサイトの問題で大きな企業ダメージを受けたDeNAは、ベイスターズの成功からスポーツ事業を中核におく企業経営方針に転換しており、さらにスポーツの新規事業を進める必要に迫られていた。鳴り物入りで始まったプロバスケットのBリーグは魅力的だったようである。

ただDeNAの川崎買収には少々違和感もある。
この日の会見に出席した横浜DeNAの社長で、DeNAの執行役員、スポーツ事業本部長も兼ねる岡村信悟氏は、DeNAが保有する様々なスポーツ事業が横浜という地域の「ソフトインフラ」となり、人と人を結びつけ、それが新しい街作りにつながり産業創出をしていくという「横浜スポーツタウン構想」を提唱していた。

それならば川崎でなく、当初買収に動いた横浜のチームであるべきで整合性に欠ける。岡村社長は、この日、その点について「ベイスターズとサンダースは同じ神奈川でシナジー効果はある。横浜ビー・コルセアーズとも、これまで共同でやってきている。これからもそうありたい」と苦しい弁明をしていた。

さて東芝の豊原氏は「ベイスターズのノウハウをもってすれば、さらにチームを発展させてもらえるのではないか」と、期待を寄せたが、その野球で成功したDeNAのノウハウはバスケットで通用するのだろうか。

岡村社長の「ベイスターズの事業を一手に担ってきた中心人物で最適」」という信任を得てベイスターズの事業本部長から新会社の社長に転身する元沢伸夫・代表取締役は、運営ビジョンをこう語った。

「長い歴史のある名門クラブを引き継がせていただき光栄と同時に責任を感じている。川崎から愛されるクラブ、川崎の誇りに思える存在になりたい。外から見させていただいている限り、すでに礎の部分は築かれている。これまでの方針を継続したい。ただ、いい意味で変化するところには積極的に果敢にチャレンジしたい」

元沢氏は、具体的に3つのテーマを掲げた。

1、チームを強化する。「勝敗が重要」。
2、来場客が勝敗に関わらず「楽しかったね、また来たいね」と満足を得る総合的なエンターテイメント空間を作る。
3、川崎に住む地域の子供達が心身共に健康に育つためのアプローチとしてスクール事業の強化。

「ベイスターズでいろんな施策を行ってきたが、バスケットに通用するものと、うまくいかないものがあると思う。野球とは観戦スタイルも来場者の層も違う」(元沢氏)

例えば観客の男女比。野球では7―3、或いは6-4で男性客が多いが、バスケットは女性比が高く、比率が逆転するケースも。加えて年齢層も野球に比べて若いという。

また観戦スタイルで言えば、野球では攻守交代の合間などがあり、ビールを含む飲食をしながらの応援スタイルが可能で、スタジアムで物販が消費されるが、スピーディーなバスケットの場合、飲食時間はハーフタイムなどに限られ、しかも本拠地が、川崎市とどろきアリーナで、ショーアップにも限界がある。経営権を得たハマスタで行った「ボールパーク構想」のような展開にもっていくにもハードルがある。

観客動員についても年間194万人を集めたベイスターズに比べると、昨季のBリーグ最多だった千葉ジェッツでさえ、レギュラーシーズンで約13万人弱、川崎の動員は約7万人で10分の1以下のスケールになる。

それでも元沢氏は、「ベイスターズで培った2つのメソッドがある」という。
スポーツビジネスにおけるマーケティングメソッドだ。

1.徹底したリサーチ。
2.質にこだわったファンサービスなどの実践。

「お客さんを徹底的に知ること。何に満足して、何に満足していないかを調べてアイデアを出して、いろんなアウトプットを考える。そのひとつひとつの質にこだわることが重要で、この2つのメソッドは、バスケットでも活用できる」と言い切った。

シーズン途中に発表された異例のオーナー変更を岡村氏は、「来シーズン、しっかりとした形でスタートするには準備期間が必要。話し合った結果、このタイミングにならざるをえなかった」と説明したが、今シーズンを使って、リサーチ、マーケティングを徹底したいとの考えなのだろう。

ただ壁は大きい。川崎は伝統のあるチームだが、企業チーム時代から「東芝の社員が応援する」という風土が強く、地域のマーケットを一から掘り起こしていく作業を行わねばならない。
またリサーチの中身をどう分析して、どう生かすかが重要で、ベイスターズでは「アクティブサラリーマン」と名づけた30代から40代の男性サラリーマン層に狙いをつけた施策を徹底して観客動員に結びつけたが、そういうバスケット版のセンスが求められる。DeNAが、来シーズン、どれだけ独創的なスポーツビジネスの展開を行い、Bリーグに新風を巻き起こすかに注目である。

最後に元沢氏が会見でファンに向けてメッセージを送っていたのでその言葉を結びにしたい。

「今後どうなっていくのか、不安に思うファンの方々に、この場を借りて、お約束をさせて下さい。この伝統あるクラブをしっかりと受け継ぎ、さらに良くするので、ご安心下さい。現在のチームへのリスペクト、敬意を忘れずに(日本の)バスケットの未来を牽引するようなクラブを目指したい」

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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