日本の水が危ない。水道法改正案可決で外資に売られる生命の源泉

日本の水が危ない。水道法改正案可決で外資に売られる生命の源泉

  • まぐまぐニュース!
  • 更新日:2018/12/10
No image

「充分な審議がなされていない」という批判も多い中、6日に成立した改正水道法。今後は水道事業の民営化が可能になったわけですが、海外では「再公営化」となった失敗例も数多く、不安は尽きません。なぜこのような事態となってしまったのでしょうか。そして今後、どのようなシナリオが予想されるのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で分析・解説しています。

日本の水が危ない!水道法改正案が可決

ついこの間まで、日本の誇る水道事業を世界に輸出するのだと政府は意気込んでいたはずである。

ところが、現実はほど遠い。水ビジネスで一旗揚げるどころか、他国の企業に国内市場を提供することになりそうなのだ。

老朽化した水道管の取り替えにかかる膨大なコストを、財政難にあえぐ自治体はとても賄えないという。水道管がいずれ、ボロボロになることくらい、最初から分かっていただろう。

国、自治体は修繕費を積み立てておくこともせずに、次から次へと政治がらみの公共工事に税金を注ぎ込んできた。水道は必要だが、無駄なものも多い。そのツケがこれから、改修費、解体費として回ってくる。

そこで、政府が効率的運営を求めて進めているのが公営事業の民営化政策であり、今国会で成立しようとしている水道法改正案はその典型だ。

今後、人口減少が進み、収入が落ち込むなかで水道管など老朽化施設を改修していかねばならず、水道料金の値上げは避けられない。運営権を民間企業に売り渡すことで、値上げの責任や維持管理コストの負担を軽くしたいというこの法案。

日本の市場を虎視眈々とうかがうフランスのヴェオリア社、スエズ社、イギリスのテムズウォーター社といった水メジャーの参入を視野に入れているのは間違いない。

となると、住民として心配なのは水道料金の高騰だ。株主と経営者の利益を優先するグローバル企業のあくなき金銭欲はいまさら言うまでもない。

ウオータービジネスで急成長を続けているヴェオリア社、スエズ社の本拠地、フランスのパリでは、85年から09年のあいだに水道料金が265%も上昇した。日本でも同じことが起きる心配がある。

そもそも自治体は、儲けを度外視してきたからこそ安い料金で水を供給できた。民間企業に運営が移れば、そうはいかない。

ヴェオリア社はすでに日本の自治体に食い込んでいる。大阪市は水道の一部業務をヴェオリア社に委託、浜松市などは下水道の長期運営権を同社に売却した。

なぜ外国企業なのか。日本には一連の水道業務をパッケージで受注できる企業が見当たらないからだ。

これまで、自治体が必要に応じて水処理機器企業、エンジニアリング企業、商社などに業務を委託してやりくりしてきたが、全体をまとめるコーディネーター機能が不足している。それゆえに、いくら政府が旗振りしても、水道事業の輸出は、ままならなかったのだ。

水メジャーは、部品・機器製造から、装置設計、運営・保守・管理に至るすべてのサービスを、包括的に提供できる。自治体は実績のあるフランスやイギリスの企業を選ぶ可能性が高いだろう。

水道法改正案は、衆院では通常国会期間中の今年7月5日、スピード審議で通過。参院は今国会で審議され、今月5日の本会議で可決、衆院に送り返され、6日にも成立する見通しだ。

法案の中身を見てみよう。昨年8月に厚労省が公表した「水道法改正に向けて」で、次のように説明されている。

水道の経営について、市町村が経営するという原則は変わらない。地方公共団体が、水道事業者等としての位置付けを維持しつつ、水道施設の運営権を民間事業者に設定できる方式を創設。

運営権が設定された民間事業者は、設定された運営権の範囲で水道施設を運営。利用料金も自ら収受。地方公共団体は、運営権者が設定する水道施設の利用料金の範囲等を事前に条例で定める。地方公共団体は、運営権者の監視・監督を行う。

これは何を意味するのか。地方自治体が施設を保有、経営し水道料金の上限を条例で定めるが、水道料金そのものは運営の権利を買った民間企業が自らの収入として徴収し、維持管理コストを払って、利潤を追求するということだ。

契約期間15年以上の「コンセッション方式」と呼ばれるシステムで、「民営化」ではないと政府は言う。だが、企業にリスクの少ない新手の民営化といえなくもないだろう。15年以上も一つの企業に任せてしまったら、自治体側にはチェックする機能がなくなり、企業の言いなりになってしまう。

コンセッション方式は、公共施設の建設、維持管理、運営に、民間の資金とノウハウを活用するPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の一形態だ。

昨年6月のPFI法改正で、大災害に見舞われた施設の修復費用を企業が加入した保険で賄いきれない場合には自治体が補完する契約が可能になっている。

政府は自治体に対しても、水道施設の運営権を民間企業に売った場合、地方債の元本一括繰り上げ返済の利息が免除される特典をつけて、コンセッション方式による民営化を促そうとしている。

要するに、PFI法や水道法の改正によって、自治体、民間企業ともに受け入れやすい条件を整えようとしているのだ。

これで参入しやすくなるヴェオリア社など水メジャーが、水道の運営権を買い取るための攻勢を今後、各自治体にかけてくるのは間違いない。

官業を民営化する司令塔になっている内閣府の担当部署で、ヴェオリア社日本法人の出向社員が働いていることも明らかになっている。安倍政権は「すさまじい利益相反」と野党議員に指摘されることまでして、水道事業の民営化を画策してきたのだ。

水メジャーにこの国の水道を実質支配されたらどうなるだろうか。料金がはね上がると、たちまち我々の生活に響いてくる。住民の不満は爆発し、自治体や国に対する非難の声が湧き上がるだろう。

実際に海外では、いったん民営化したものの、水道料金の高騰や、コスト削減によるサービス低下を招いたため、再びもとの公営に戻すケースが相次いでいる。

水ジャーナリストの橋本淳司氏は参院厚労委員会で次のように語った。

「海外で水道を再公営化した事例が180例ありますが、その多くは、企業の業務内容と金の流れが不明瞭になったことに起因しています。多額の役員報酬、株主配当を支払い、水道への投資を行わず、税金も支払わないというケースもありました」

「日本の水道法改正においても管理監督責任は自治体に残ります。しかし、職員数の減少と定期的なジョブローテーションという状況では、自治体に管理監督責任を遂行する能力は乏しく、高額な費用を支払って専門家やコンサルタントに依存するか、企業の報告を鵜呑みにする危険性があります」

これを聞くと、本当に不安になってくる。なぜ、命の源泉である水の供給まで民間企業の手に委ねなければならなくなったのか。

厚労省によると、高度成長期につくった全国の水道管のうちすでに1割は耐用年数を超え、老朽化した管路を今後130年以上かけて回収していかなければならない。

加えて、竹中平蔵氏がいまだに主導している民営化、規制緩和路線による職員数の削減、団塊の世代の退職などで、技能者はすっかり減っている。

「これらの課題を解決し、将来にわたり、安全な水の安定供給を維持していくためには、水道の基盤強化を図ることが必要」と厚労省は強調する。

その答えが、民間頼みというわけだが、先述したように、水道事業の民営化は失敗例が数多い。再公営化のため、契約を途中で解消しようものなら、莫大な違約金を請求されるだろう。

水は限られた資源である。しかも地球上にまんべんなくあるわけではない。

人間が自由に使える水は、海水を含む地球上の水の0.01%にすぎず、世界には安全な水に恵まれない人が11億人もいる。

国際ジャーナリスト、堤未果氏は新著『日本が売られる 日本で今、起きているとんでもないこと。』でこう述べている。

なにせ水ビジネスは…石油よりも巨大な金脈、21世紀の超優良投資商品なのだ。…ネスレ社が行った調査によると、「2025年までに地球上の3分の1の人々が新鮮な水にアクセスできなくなり、2050年までには、地球は壊滅的な水不足に陥る」という。水という「商品」につけられる値段は、ますます釣り上げられていくだろう。

水がタダ同然のように思われていた時代は去って、値札が付いた商品となり、ウオール街の投資対象になるというのである。

水道法改正案が成立すれば、自然に恵まれた日本の豊かな水が、世界のウオータービジネスの渦に巻き込まれるきっかけとなるだろう。

ただし、法律ができても、水道事業の運営を自前でするか、民間企業に任せるかは、自治体しだいである。今後は、各自治体の実情に合わせてしっかりした議論を進める必要があろう。

image by:Shutterstock.com

MAG2 NEWS

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
「日産・ゴーン氏事件」で問われる“日本人の品格”
今年がラストチャンス!ふるさと納税「返戻率の高い」自治体はここだ
リストラ従業員が“怒り” 体制追従の日産経営陣に
日本総研、住宅地における自動移動サービスの実証実験を神戸市で開始
ゴーン事件から学ぶ「社員に心を砕く経営者」がいなくなった理由
  • このエントリーをはてなブックマークに追加