台湾・花蓮の地震で見えた「日台の絆」の深まり

台湾・花蓮の地震で見えた「日台の絆」の深まり

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  • 更新日:2018/02/15
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2月6日の夜、スマートホンに届いた地震アラートの直後に地面が大きくゆっくりと回転するように動いた。ここ最近ちょくちょく揺れるなとは思っていたが、この日は台北でも時間が長く、結構な揺れを味わった。フェイスブックで友人が花蓮で震度7という情報をシェアしている。日本と台湾の震度の図り方は同じレベルだ。震度7といえば大地震といえるし、大変なことになったと感じた。

次第に、花蓮に住んでいる友人や友人家族には影響がないことがわかる。ひとまずホッとしたものの、続々と倒壊した建物の画像がニュースで流れてくる。「震度7」を実感させる光景だった。

台湾東部での地震を受けて現地入りした日本の救援隊(AP/アフロ)

花蓮からの切実な呼びかけを受けて……

8日の朝に、台湾人でエッセイストの友人・米果から、「中国語および日本語」が使える幾人かの友人あてにテキストが届いた。内容は彼女の大学の後輩で、花蓮でホステルを経営している方の報告、およびホテルビジネス協会からの公式声明を日本語にしてほしいという事だった。仲間内の在台ライター・田中美帆氏によってすぐさま日本語翻訳され、その午後から各人によってシェア・拡散がはじまった文章はこうした内容だった(洄瀾窩國際青年旅舍 Hualien Wow Youth Hostel)。

「今のところ、不足の物資もなければ公共交通機関も問題なく動いており、皆さんと変わらぬ日常を送っています。もしも、皆さんが我々のために何かしたいとお考えくださるのであれば、ぜひ花蓮にいらしてください。皆さんが花蓮においでくださることが、一番うれしいのです」

「今回、震度7に達する大きな地震で、被害もありましたが、花蓮の建物や交通施設のほとんどは無傷です。さらに、観光がメインとなっている花蓮では、90%の市民がなんらかの形で観光業に関わっています。そのため、本協会としては、花蓮への旅行を取りやめるのではなく、皆さんがお越しになることで花蓮の復興を支えてくださるよう、心よりお願い申し上げます」

今回の地震の大きな被害は、断層上にある一部の建物だけであり、その外には大きな影響はないという。しかし花蓮すべてが報道されているような状況にあると思われ、キャンセルが相次いでいるらしい。花蓮は観光地で、多くの住民が観光業に頼っており、地震以上に風評被害が恐ろしい。少しでも早く多くの人にこの状況を知らせたいとおもわされる、切実な内容だった。

それは私だけの印象でなく、多くの日本人が同じ痛みとして受け取ったようで、すぐさま大きく拡散され、成人式にまつわる「ハレノヒ」事件で前向きな救済を実行して話題となったお笑いコンビ・キングコング西野亮廣氏の元にも伝わり、文章の一部がブログで引用されたことで、こういった花蓮の現状を知った方も多いのではないだろうか。

https://ameblo.jp/nishino-akihiro/entry-12351539717.html

今回の地震で一番心を寄せてくれた国は「日本」

実際、台北のわたしのところにも、安否確認のご連絡を沢山いただいたのは有難いというほかないが、逆に言えば台湾全体が被災地のように認識されているなか、花蓮の状況は一層想像しづらいに違いない。しかし現地の人とSNSとの連動で日台の連携がすぐさま取られたおかげで、現状認識への理解は急速に進んだように見受けられる。

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Varunyu/iStock

テルマエ・ロマエなどのヒット作で台湾でも人気の高い俳優の阿部寛氏が1000万円の寄付を申し出たことは、台湾ですぐさま話題となったし(台湾のフェイスブック上では阿部氏の男前ぶりを評し「我的先生太大方了(うちの夫は気前良すぎ)」という言い回しで褒め称えられた)、安倍首相の毛筆によるメッセージ「台湾加油」は、「頑張れ」という意味の中文(台湾の国語である中国語繁体字)で「加油」と書かれたことが殊さら台湾の方々の感動を呼んだ。また台南在住のラーメン店を経営する日本人男性が、真っ先に花蓮に向かいラーメンの炊き出しを行ったこともニュースで大きく取り上げられた。

民間・芸能界・国家間、様々なレベルで日本人から寄せられた応援が好感し、台湾のシンクタンク「台湾世代智庫」の調べでは、「今回の東部地震のことで一番心を寄せてくれた国はどこか?」との質問に、75パーセントの台湾人が日本と答えている。

主な使用言語が異なりながらも、日本と台湾がお互いに持っている「いま相手がどんなことを必要としているのか理解したい」「理解されている」という気持ち。またどんな表現手段を使えばそれが正しく伝わるのか、という良質で高度なコミュニケーションを介して築かれている現在の日台関係は、世界的にも稀な現象ではないかと思わずにいられない。

私が「タロコ渓谷」の観光をお薦めしない理由

2011年の東日本大震災へ寄せられた台湾の大きな応援から、台南地震や熊本の地震など日台で災害が起こるたびに温かな支援の連鎖反応が起こっている。そこで見られる双方の理解の深まりは、台湾に在住している日本人として本当に嬉しく、これからも永く続いていくことを期待させるものだ。

ひとつ付け加えるならば、確かに「タロコ渓谷」は日本時代より花蓮における有数の観光地には違いないが、今後訪れるのは個人的にお薦めできない。今回の地震で危険性が増したこともあるが、もともと毎年落石による犠牲者が幾人も出ているし、昨年は自転車で訪れた日本人男性も亡くなっている。また、観光客にとっては「一生に一度」かもしれないが、現地のバス運転手や観光ガイドにとって危険の確率はいや増す。高いリスクを承知しながらも、需要があるから仕方なく仕事を受けている現地ガイドが多いのは、心に留めておきたい。

花蓮には他に素晴らしい場所が沢山ある。訪れて楽しく、案内する側も気持ちよく紹介できる花蓮の旅を、いつか実現していただけたらと思う。余震もかなり収まった今、花蓮復興への道のりは始まったばかりだ。

最後に、このたび被災され亡くなった方々に対し、心よりお悔やみを申し上げます。

栖来ひかり(台湾在住ライター)
京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

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