映画『LAMB/ラム』 話題作を産み出す、制作スタジオA24とは?

映画『LAMB/ラム』 話題作を産み出す、制作スタジオA24とは?

  • otocoto
  • 更新日:2022/09/28

世界が騒然とした問題作、映画『LAMB/ラム』

9月23日に公開された映画『LAMB/ラム』。話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社A24が北米配給権を獲得し、カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや観客を騒然とさせた衝撃の話題作だ。

本作は、第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門で《Prize of Originality》を受賞、アカデミー賞国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど、批評家からも高い評価を受けている。

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内容は、非常にシンプル。アイスランドの片田舎、クリスマスの朝に羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”が生まれる。ただ、それだけだ。そして、セリフは少なく、余計な説明もない。だからこそ、観ているものの想像の余地がある。

主人公たちは、生まれたタブーを神様からの贈り物だと受け入れることで、灰色のような日常が、表情豊かに彩られていく。必要最低限の会話しかなかった夫婦が、目に見えて幸せになっていくのだ。そしてその幸せを奪うものを許さない。

異常な出来事が普通の日常として描かれているので、一体異常なのは、スクリーンの中の物語か、我々観客なのかどちらか、判断がつかなくなる。何が正しくて、何がおかしいのか、自分自身の感覚に自信がなくなっていくのが分かるので、怖い。淡々と描かれる不気味な日常は、私たちの日常生活に支障をきたしそうなホラー映画だ。

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本作の製作・配給会社であるA24は、『ミッドサマー』(2019)、『ヘレデタリー/継承』(2018)など、人気ホラー作品を生み出したスタジオでもある。今夏に公開され、三部作となることが決定している『X エックス』は、70年80年代ホラー作品のオマージュがふんだんに散りばめられ、多くのホラーファンを喜ばせた。

このようにホラーのイメージが強い会社だと思う方もいるかもしれないが、そうではない。A24が産み出す作品の面白さは、幅広いジャンルで観客を掴む作品を制作・配給するところにある。

気鋭の製作・配給会社A24

先にあげた『X エックス』の他に2022年、すでに公開された作品には、ホアキン・フェニックス主演マイク・ミルズ監督による、突然始まった主人公と甥っ子の共同生活を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマ『カモン カモン』。Twitterに投稿されたつぶやきをもとにした、ウェイトレス兼ストリッパーの悪夢の48時間を描いた、ガールズロードムービー『Zola ゾラ』があり、その作品ジャンルは多岐に渡る。

2012年に立ち上げられたA24は、2013年に『チャールズ・スワン三世の頭ン中』で劇場配給をスタートした。

そして、春休みに犯罪に手を染める女子大生4人組の過激な青春を描いた、ハーモニー・コリン監督作『スプリング・ブレイカーズ』(2012)、ソフィア・コッポラ監督が、ハリウッドで発生したティーンエイジャーによる窃盗事件を題材に、欲望のままに犯罪に手を染めていく少女たちを描いた青春ドラマ『ブリングリング』(2013)をヒットさせ、作家性の強い作品を配給する会社として頭角を表していく。

また、スカーレット・ヨハンソンのオールヌードが話題をさらった『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(2013)、美しい女性の姿をもった人工知能とプログラマーの心理戦を描いた『エクス・マキナ』(2015)、などSF作品にも挑む。

そして黒人ゲイの少年が自分の居場所とアイデンティティを模索するヒューマンドラマ『ムーンライト』(2016)では、第74回ゴールデングローブ賞で映画部門作品賞 (ドラマ部門)を獲得。同年第89回アカデミー賞では8部門でノミネート、作品賞、助演男優賞、脚色賞に輝いた。続いて翌年『レディーバード』(2017)でも、作品賞ほか6部門にノミネートし、賞レースにも顔を出すようになる。

このように、90年代のミニシアターブーム、シネマライズやポレポレ東中野で上映されていた映画を観ていた人々にとっては、うずうずと触手が動く作品が目白押しだ。

カルチャーやファッション、アート好きにまで注目され、クリエイターにも高い人気を誇る映画制作会社であるA24は、現代において、TwitterやInstagramといったSNS運用や宣伝戦略が他と異なり、単純に”オシャレなもの”として際立っている。くわえて、まるでアパレルブランドのような、スタイリッシュなデザインの自社グッズを展開し、映画好きコア層だけではなく、20代30代の若い観客を映画館へと引き込んでいる。

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なんかエモい映画たち

A24は作家性を大切にし、映画作家と共に歩んでいくスタジオと知られ、その名前を聞けば、「おっ!」と気になる人がいるほど、ブランディングが成功している。

そして幅広いジャンルの映画に、どうしても惹かれてしまうエッセンスが共通してあるように思える。単純に、いわゆるインディペンデント系のそういう映画。と言われたらそうなのかもしれないが、個人的にどの作品も引っかかる仕掛けがある。若者の言葉を借りれば、”なんかエモい”のだ。

そんな、我々の”何か”をくすぐるA24作品が続々と公開を控えている。
AIロボットが家族の一員として暮らす近未来が舞台のコリン・ファレル主演作『アフター・ヤン』が10月21日、続いて、デヴィッド・ロウリー監督が本格ファンタジーに挑んだ『グリーン・ナイト』が11月25日。そして、夫を失った未亡人がでかけた傷心旅行先の田舎町で、得体のしれない恐怖に襲われる、『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランド監督の新作『MEN 同じ顔の男たち』が12月9日に公開となる。

少しでも”何か”ひっかかった作品があれば、劇場に足を運んでみてほしい。

文 / 小倉靖史

作品情報

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映画『LAMB/ラム』

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。子供を亡くしていた二人は、”アダ”と名付けその存在を育てることにする。奇跡がもたらした”アダ”との家族生活は大きな幸せをもたらすのだが、やがて彼らを破滅へと導いていく。

監督:ヴァルディミール・ヨハンソン

出演:ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン

配給:クロックワークス

提供:クロックワークス オディティ・ピクチャーズ

©2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

公開中

公式サイト klockworx-v.com/lamb

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