社説:石油協調放出 価格抑制に有効なのか

  • 京都新聞
  • 更新日:2021/11/25

原油価格の高騰に伴って世界各国で物価が上昇し、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経済の回復を著しく阻害している。

事態の打開に向けて米ホワイトハウスは、日本や中国、英国、韓国、インドといった石油の消費国と協調し、備蓄の一部を市場に放出すると発表した。

岸田文雄首相もすぐさま同調する姿勢を明らかにした。

原油高対策としては初めてとされる協調放出が功を奏し、物価が落ち着くのであれば、意義ある対応と評価されるかもしれない。

原油高となったのは、価格低迷の反動である。

昨年、コロナの感染拡大によって、世界規模で消費が落ち込み、人々の移動が停滞。当然、原油への需要も大幅に減り、産油国は協調減産に踏み切った。

その後、ワクチン接種が進んだこともあって以前よりは消費が戻り、原油需要も回復してきた。

ところが、中東、ロシアなど石油輸出管理機構(OPEC)加盟・非加盟国でつくる「OPECプラス」の産油国には、コロナの感染動向を見極めてから、本格的に増産したいとの思惑がある。

需給ギャップが生じ、今回の高騰を招いたとされている。これを埋める対策は、消費国にとって限られており、協調放出はやむを得ないともいえよう。

とはいえ、石油の備蓄は、災害や産油国などの政情不安を受けた供給不足の危機に、適切に対応するための取り組みである。

単に価格の引き下げを狙って、放出してよいのだろうか。

日本では、国家備蓄が輸入量の90日分、民間は消費量の70日分と定められている。

政府は、余剰分なら機動的に放出できるとみて、検討を進めているらしいが、異例の措置には違いない。国民の納得できる説明が、要るはずだ。

原油価格を抑制する効果については、投資家らから疑問視する声が上がっている。

OPECプラスは、欧州などでの感染再拡大によって、石油需要が落ちるとみている。協調放出が加われば、さらに生産を縮小する可能性があるという。

これを見越して、各国の原油先物市場では、価格上昇の動きがみられた。

米国主導の協調放出は、支持率低下に悩むバイデン政権へのてこ入れとの指摘もある。市場をゆがめかねない対応に、日本は慎重であるべきだろう。

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