ストーブリーグの目玉に巨人を自由契約となった中田翔選手が浮上してきました。中田選手は昨オフ、巨人と3年契約を結びましたが、自らの意思で契約を打ち切ることのできるオプトアウトという権利を有していました。来シーズンは、どこのユニフォームを着ることになるのでしょう。プロ野球の日程・テレビ放送予定はこちら「2軍をおろそかにしてきたツケ」移籍先として、有力視されているのが中日です。今季も中日は貧打に泣きました。390得点はリーグワーストです。チームで最も打点を挙げた選手は、現役ドラフトで横浜DeNAからやってきた細川成也選手の78打点。また細川選手はチームトップとなる24本塁打をマークしましたが、中日における日本人選手のシーズン20本塁打は、和田一浩、森野将彦両1軍打撃コーチが記録して以来、13年ぶりでした。貧打のチームにあって、孤軍奮闘の活躍を見せた細川選手ですが、球団首脳が「これはうれしい誤算だった。まさか、あれほど打ってくれるとは……」と驚いていたくらいですから、ある意味、ラッキーだったと言えるかもしれません。本来、主軸を打つような選手は、自らの手で育てるべきです。それが果たせていないということは、ドラフト戦略か育成方針に問題があったと見るべきでしょう。もっとも、中日の現状に同情的な見方をする者もいます。今季、阪神を18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に導いた岡田彰布監督です。2014年に上梓した『そら、そうよ』(宝島社)で、こう述べています。<私が阪神の二軍監督だったころ、ウエスタンリーグの優勝争いのライバルは、いつも中日だった。中日の二軍には自前で育成している、若くて能力の高い選手が多くいた。しかし落合(博満)監督の時代に一軍が結果を残すのと反比例して、二軍はどんどん弱体化していった。選手たちに一軍に上がる実力がなかったといえばそれまでかもしれないが、落合監督は若い選手を我慢しながら育てることをしなかった。そうしているうちに根腐れしていき、二軍は12、13年に2年連続で最下位に沈んでしまっている。この結果に表れているように、新しい選手が育ってきていない。落合監督は勝つということに特化していたが、二軍を指導した経験はなく、選手を育てる監督ではなかった。二軍の育成をおろそかにしてきたツケが今、回ってきている。新しい選手が現れてきていないだけに、14年以降も中日は厳しい戦いを強いられることになるだろう。>元木大介の証言14年以降の中日の成績を見てみましょう。14年=4位、15年=5位、16年=6位、17年=5位、18年=5位、19年=5位、20年=3位、21年=5位、22年=6位、23年=6位と惨憺たるものです。落合さんがチームを率いた2004年から2011年にかけての8シーズンはリーグ優勝4回、日本一1回、Bクラス(4位以下)は1度もありませんでした。あの頃の中日は我が世の春を謳歌していました。しかし、それも今や遠い昔の話です。立浪和義監督の下での2年間は厳冬期とも言える状況で、2年連続最下位は球団史上初めてでした。さて中田選手です。今季の成績は打率2割5分5厘、15本塁打、37打点。本人からすれば不本意な成績かもしれませんが、92試合288打席で15本塁打はさすがです。北海道日本ハム時代は3度の打点王(14、16、20年)に輝いたことのあるクラッチヒッター。レギュラーの座さえ確保すれば、80打点以上の活躍が見込まれます。また中田選手はファーストの守備にも定評があります。ファーストのポジションで、セ・パ両リーグでゴールデングラブ賞に輝いたことがあるのは彼だけです。今季まで巨人の1軍作戦兼内野守備コーチを務めていた元木大介さんは、「彼はショートバウンドの捕球に定評がある。何度も彼の守備にチームは救われた」と話していました。中田選手と中日、ウィンウィンの関係に見えますが、果たして……。二宮清純
二宮 清純