「執筆にプレッシャー」音楽雑誌の編集者、“細野晴臣”の音楽史通し“日本”の音楽史を紐解く

「執筆にプレッシャー」音楽雑誌の編集者、“細野晴臣”の音楽史通し“日本”の音楽史を紐解く

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  • 更新日:2021/02/21
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門間雄介(もんま・ゆうすけ)/1974年、埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。「ぴあ」「ロッキング・オン」での雑誌編集、「CUT」の副編集長を経て、2007年に独立。本書が初の単著(撮影/写真部・張溢文)

AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

細野晴臣本人に「もうこれ以上、話すことはないです。」と言わせた評伝『細野晴臣と彼らの時代』。松本隆や坂本龍一など、多数の音楽家と関係者による証言、膨大な資料の分析を通じて、日本のポップミュージックと時代を浮き彫りにした一冊だ。著者の門間雄介さんに、同著に込めた思いを聞いた。

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細野晴臣さんは言わずと知れた日本のロック&ポップス界の立役者。研究書も多数発行されているが、門間雄介さん(46)の評伝『細野晴臣と彼らの時代』はひと味違う。

細野さんの足跡をたどりながら、人生に深く影響し、ときに離れ、有機的に関係する音楽家たちの生き様が巧みな筆致で描かれている。しかも登場する人々の多くは、日本を代表するアーティストだ。

「膨大な資料を検討する間に細野さんの個人史を描くことは、日本の音楽史を扱うことにもなると気づき、執筆のプレッシャーが増しました」

企画が立ったのは8年前。書きたい思いがつのり、細野さんに直談判した。学生時代から「はっぴいえんど」のファンで、音楽雑誌の編集者時代にはエッセンスを受け継ぐ若手アーティストを積極的に紹介していたからだ。

本は細野さんのソロアルバムに刺激されて音楽を始め、のちに細野さんから「未来をよろしく」と託された星野源さんのエピソードから始まる。

「細野さんは今も素敵な音楽を発表し、演奏し続けています。だから過去を美化したり、懐古したりする閉じた本にしたくなかった。細野さんをよく知らない方や若い世代が読んでも創造性を刺激される内容にしたかったんです」

盟友である大瀧詠一さんとの出会いや交わされた会話、「YMO」のメンバーである坂本龍一さんと細野さんが幼少期、すぐそばに住んでいたこと、バンド結成やレコーディングなど、エピソードの描写はかなり細かい。

「心残りは突然、亡くなったことで、大瀧さんからお話をうかがえなかったことです。細野さんには一度につき1時間半から2時間かけて、何十回か取材しましたが、一番楽しそうにお話しされていたのが大瀧さんとの思い出でした。話された時間も長くて。それくらい細野さんと大瀧さんの絆は強くて深かったんです。お二人の関係がこの本の柱になっていったのも、自然な流れでした」

細野さんは門間さんに「音楽は単なる自己表現ではつまらない」と語った。音楽は自分を越え、時代を経て受け継がれていくべきだという考えがあるからだ。

門間さんもこの本に対して「自分の著書というより、細野さんが生きた時代をそのまま伝えていく役割を担っている感覚で書いた」と話す。

「だから、読者の感想を聞いてみたいですし、『この本を若い人に読んでほしい』という感想をいただいたりすると、すごくうれしいんです」

(ライター・角田奈穂子)

■東京堂書店の竹田学さんオススメの一冊

『「逃げおくれた」伴走者 分断された社会で人とつながる』は、「いのち」の普遍的価値を確認することができる一冊。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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ホームレスなどの困窮者支援を長年続ける著者は、自身を「逃げおくれた伴走者」と語る。厳しい支援の現場から逃げる勇気がなく、困難のさなかにいる他者と出会ったことの責任を抱え、迷い悩みながら活動を続けてきたという。本書はウェブに発表した文章や牧師である著者の説教、コロナ状況下でのオンライン対談が収められている。

著者は東日本大震災、相模原障害者殺傷事件やコロナ禍などに触れ、路上で出会った人びとの記憶も呼び起こしながら、「いのち」の普遍的価値を確認し、傷つけ合いながら他者とともに生きざるをえない人間の弱さを肯定する。自己責任論が隅々まで浸透し、無縁社会化した現代に抵抗し、そこからの脱却を希求する実践と言葉は、優しく、ユーモラスで力強い。まさに今、多くの人びとの魂に沁(ルビ:し)みる言葉が本書には詰まっている。

※AERA 2021年2月22日号

角田奈穂子

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