チケット1枚でバレーとバスケを同時観戦 コロナ禍で実現した「Vリーグ」と「Bリーグ」競演の“舞台裏”

チケット1枚でバレーとバスケを同時観戦 コロナ禍で実現した「Vリーグ」と「Bリーグ」競演の“舞台裏”

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  • 更新日:2021/04/07
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大阪エヴェッサは炎の演出など、観客が楽しめる演出を取り入れている(写真=大塚淳史)

一枚のチケットを購入することで、バスケのBリーグとバレーのVリーグの試合が一度に見られる。アリーナスポーツを盛り上げるための新しい試みが、3月20日と21日、大阪のおおきにアリーナ舞洲で行われた。手を組んだのは、大阪を本拠地にするBリーグの「大阪エヴェッサ」とVリーグの「サントリーサンバーズ」。アリーナスポーツ同士の競演という挑戦的な取り組みには、どのような狙い、裏側があったのか。関係者が語った。

【写真】大阪エヴェッサのチアダンスチーム「BT」の華やかな姿はこちら

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3月20日、正午から始まったVリーグのサントリーサンバーズ対大分三好ヴァイセアドラーには2315人、午後5時5分から行われたBリーグの大阪エヴェッサ対レバンガ北海道には2224人の観客が集まった。両試合とも白熱し、選手たちの熱いプレーで観客も盛り上がっているように見えた。

大阪エヴェッサ(Bリーグ)の試合を観戦していた、サントリーサンバーズ(Vリーグ)のファン数人に感想を聞いたが、

「Vリーグと違って常に音楽が鳴っていたり、ドキドキして楽しいですね」(兵庫県の20代女性)

など、いずれも好評だった。

■共催の目的と利点

ここ数年、アリーナスポーツに対する投資が活発化している。特にBリーグは大河正明前チェアマン、島田慎二現チェアマンと歴代トップが、プロスポーツ興行をエンターテインメントとしても魅せるという方針を示し、アリーナの必要性を唱えてきた。

こうした背景があり、大阪エヴェッサのシニアマネージャー・櫻井亮さんは、2019年10月頃、同じ大阪を拠点にするスポーツチーム同士で手を組めないかとサントリー側に打診していた。

「Bリーグは中期計画でアリーナ改革がありましたし、Vリーグの方も将来的にホームアリーナの要項を強化することがわかっていたので、『一緒にやりませんか?』と提案したのです」(櫻井さん)

一方、Vリーグのサントリー側は

「コロナでなかなか試合観戦に来られない人もいる中で、話題性を出していくことで、同じ大阪市の中でスポーツを盛り上げられないかと考えました。競技は違っても、同じアリーナでスポーツを楽しめるし、双方のファンが交流ができることもメリットになると思いました」(CSR推進部・吉田譲さん)

両者ともにスポーツを盛り上げたいという思惑が一致したことで、共催が実現した。

とはいえ、より実質的なメリットを勘案したうえで、手を握り合ったところもある。

櫻井さんは新たなファンの獲得、認知度の向上、コスト面で共催のメリットがあると語った。

「Vリーグ(男子)、サンバーズさんの客層はやはり女性が多い。一方で、われわれのチーム、Bリーグ全体でみても、客層は男女半々。チケットの購入データを見る限り、お互い客層はかぶっておらず、新しいお客さんを発掘するきっかけになると思いました」

大阪エヴェッサの観客層は、大阪中心部から北部で、男女とも20代後半と40歳前後がボリュームゾーンだという。40歳前後は小学生の子を持つファミリー層が中心だ。

「われわれも20代後半の女性はボリュームゾーンの一角ですが、そこをさらに強化したかった。継続的に若い層を取り入れていかないと、ファンの高齢化が起こります」(櫻井さん)

また、共催によってチームの認知度を高めるきっかけにしたいという思惑もあった。

「エヴェッサの認知度は、大阪府で3割くらいしかありません。7割の人が知らない。Vリーグを見ている人の中に、(エヴェッサの試合を見てもらって)新しいお客さんを増やしていくことが必要です」(櫻井さん)

新しい客層の開拓はサントリーにとっても課題だった。

「バレーのファンは20代から40代の女性が多いが、バスケはよりファミリー層が多い。ファミリー層が(サントリーサンバーズを)今後知ってもらうきっかけ作りにしたかった」(吉田さん)

さらに、コスト面でのメリットは両者に大きな魅力だった。

「双方ともに試合に必要な機材を持ち込むと、当然コストがかかります。共催できれば、できるだけエヴェッサの使用機材を使うことで、サンバーズさんの試合開催費用を含めた総コストを下げられます。費用を抑えることで、互いに試合演出などに使うこともできます」(櫻井さん)

損益計算書をお互い見せ合い、業務の重複部分を確認していった。

■共催の最大の懸念はコロナ

最大の懸念事項はやはり新型コロナ感染対策だった。もしチームの選手や関係者から感染者が出れば、試合そのものが中止になる。実際に、BリーグとVリーグともに、今シーズン、いくつもの試合が中止に追い込まれている。

企画を進めている途中も、昨年12月にサントリーサンバーズはコロナ感染者が出て、試合中止やチーム活動が一時休止となった。共催に暗雲が垂れこめたが、櫻井さんは年が明けた1月に、改めてサントリー側に「どうでしょうか?」と確認した。来シーズンに延期になる可能性も覚悟していたが、返答は意外にも「やりましょう」。これが最終的なゴーサインとなった。

「この企画をするなら、失敗できないと考えていました。そこで以前、サンバーズさんに『今シーズンは見送って、来シーズンにしましょうか』と話したところ、逆に『こういうのは早いほうがいい、やるならやりましょう』と返してもらった。心強かったですね」(櫻井さん)

数々の壁を乗り越えて実現した今回の共催。当日は、大阪エヴェッサのマスコットやチアダンスチーム「BT」が、サントリーサンバーズの試合の応援に登場したり、サントリーサンバーズの選手が大阪エヴェッサの選手入場に一緒に登場するなど、互いに協力し、観客を楽しませた。

「時間がなくて、今回はコラボ商品をあまり出せず、演出も限られていましたが、まずは共催が実現ができたことが重要です」(櫻井さん)

サントリーの吉田さんも共催の経験から学ぶことがあったという。

「お客さんが会場に来るには、何かきっかけがあり、絶対に仕掛けがある。エヴェッサさんの演出も参考になりました。今後はチケットのデータ分析などをして、お客さんが求めているものをわれわれも勉強したい。(サントリーサンバーズの)お客さんが楽しんで、リピートしてもらえるようにしたい」

最後に、櫻井さんは今後の展望をこう話した。

「大阪府の人口は約880万人。周辺の商圏でも500万人ほどのマーケットがあります。この広さを考えると、お互いがお客さんを引っ張り合うのはナンセンスです。せっかく大都市圏のチームなのだから、お互いにやれることをやっていきたい。バスケとバレーで2試合も面白い試合が見られて、演出も楽しめる。サンバーズさんもどんどんわれわれを使ってほしいし、逆にわれわれも使わせていただきたい。共に上がっていきたいですね」(櫻井さん)

正直、この共催がアナウンスされた時、客の奪い合いにつながるのではないかと危惧していた。特にVリーグのファンが、Bリーグの観客を巻き込んで楽しませる魅力的な演出を肌で味わったら、ファンを乗り換えてしまうのでは、と心配した。

しかし、そんなことは完全に杞憂で、素晴らしい共催だった。(取材・文=大塚淳史)

大塚淳史

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