美容とデジタルが結びつくと何が起こるか? 資生堂の取り組み

美容とデジタルが結びつくと何が起こるか? 資生堂の取り組み

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  • 更新日:2021/06/10

今回のひとこと

「資生堂はDXによって、ビューティー市場に革新をもたらす。これによって、資生堂はパーソナルビューティウェルネスの会社を目指す」

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(資生堂の魚谷雅彦社長兼CEO)

資生堂は、デジタルマーケティングなどを行う資生堂インタラクティブビューティーを、2021年7月に、アクセンチュアとの合弁で設立すると発表した。

資生堂の魚谷雅彦社長兼CEOは、「これは、資生堂の未来にとって、極めて重要な発表である。資生堂はDXによって、ビューティー市場に革新をもたらす。それをアクセンチュアと一緒に取り組むことになる」とする。

資生堂は、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」において スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的な経営改革を実行。その一環として、「デジタルを活用した事業モデルへの転換・組織構築」を掲げている。

新会社は、この取り組みを具現化するもので、ビューティー領域に特化したデジタル・ ITの戦略機能会社として、デジタルを中心とした事業モデル改革、グローバル標準のITインフラとオペレーションの構築、デジタル・IT領域での人材の強化に取り組み、DXの加速により、日本の事業モデルを革新。「資生堂だけでは成し得なかった新しいビューティー体験を実現する」と意気込む。

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たとえば、顧客がオンラインや店頭で行った肌診断の結果や、バーチャルメイクアップ履歴をデータベースに蓄積し、その履歴データを、購買データや研究開発のデータなどと合わせて分析。時間や場所を自由に選択しながら、顧客に最適なカウンセリングや商品選び、レッスンのメニューの提案が可能になる。さらに、美容に関する最新のテクノロジーを活用して、顧客一人ひとりに合わせて、パーソナライズしたサービスを、デジタルとリアルを問わずに生涯に渡って提供。シームレスで、様々なコンタクトポイントから提供するという。

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スキンアナリティクスの機能を使って、スマホのカメラなどで、朝起きたときに肌の状態を確認して、データを蓄積。スマートミラーでは、肌の状態からUV対策をした方がいいことなどを提示。ARを活用したバーチャルメイクをスマホに記録するといったことが可能になる。

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資生堂の魚谷社長兼CEOは、「資生堂は、化粧品を販売することが目的ではない。美の価値を世界中のお客様にお届けし、活力を提供し、元気になってもらい、幸せな人生を送ってもらうことが目的であり、それが資生堂の使命である。『美の力で、世界をより良くする』ことの実現に向けて、DXは大きな役割を果たすと考えている」と語る。

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資生堂の魚谷雅彦社長兼CEO

資生堂が目指す姿を、「パーソナルビューティウェルネスカンパニー」だと位置づける。

「生活者一人ひとりの環境が異なり、個性がある。それは一人ひとりが異なる美に対するニーズを持っていることと言い換えることができる。以前は、多くの人たちに対して広告を打つ形だったが、いまはターゲットを絞り込んで関係性を築くことが大切である。デジタルを活用して、ニーズの変化や環境変化に対応した商品開発だけでなく、サプライチェーン全体において、生活者とパーソナライズされた関係を構築することで、パーソナルなビューティーウェルネスを提供できる」とする。

資生堂では、2019年に、企業ミッションを「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」に定めた。

ビューティーイノベーションの実現において、データにアクセスし、顧客をより理解し、スピードを持って、ニーズを満たし、これまでとは異なる形で顧客とエンゲーシメントすることができるようになるとする。

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新会社の資生堂インタラクティブビューティーには、もうひとつの役割がある。

それは、資生堂自らが、生産性が高い、新たな働き方を取り入れることだ。

既存システムのクラウド移行をはじめとする「クラウドファースト」の施策を展開。IT機能の拡充と柔軟なシステム基盤を構築して、資生堂の IT 投資およびメンテナンスコストの効率性を高め、事業スピードの向上、データによる迅速なビジネス判断を実現する。

これと同時に、アクセンチュアの人材育成ノウハウを活用して、資生堂全体のデジタル・IT能力の向上を図る。

資生堂が強化したいと考えるデジタル・IT人材像をもとに、専用の教育プログラムを共同で開発し、デジタル・ITに関する高度なスキルを持つ社員を育成。外部からの人材獲得も積極的に行うという。

「アクセンチュアと手を組んだ理由は、広いスコープと、デジタル能力を持ち、豊富な人材と経験、成功事例があること。そして、なによりも、感銘を受けたのは、世界を良くしたいと考え、社員が社会全体の改革、改善に取り組み、そのためにデジタルはツールとして存在しているという考え方だ。人にフォーカスして、会社経営をしている点は、資生堂と同じ価値観である。会社同士の価値観の共有が、合弁会社の設立に踏み込んだ理由になっている」とする。

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そして、「アクセンチュアは、ITの会社であるという先入観があったが、言い換えを変えれば、デジタルをベースとする世界最大の広告会社ともいえるだろう。ITシステムのコンサルティングだけでなく、新たな事業モデルの構築など、地に足が着いたコンサルティング力がある。そして、広告のプランニング、クリエイティブ機能も持つ。数年前のイメージとはまったく異なる企業になっている」とする。

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アクセンチュア 代表取締役社長 江川昌史氏

これに対して、アクセンチュアの江川昌史社長は、「DXの実現には、多種多様なスキルが必要である。100種類のスキルと、30種類の職種が必要であり、アクセンチュアは、いち早く、それらの人材を集めて、日本のデジタル化を推進してきた。いまではビジネスの70%がデジタルである」とし、「アクセンチュアがビューティー業界に取り組むのは初めてである。資生堂に対しては、約3年前に提案したものが、検討を重ね、今回の合弁会社の設立につながった。大胆かつ画期的なビジョンや戦略、顧客体験を提供し、卓越したデジタルとIT専門性、優れた人材と育成プログラムも提供する。日本のビューティー業界、世界のビューティー業界を発展せる活動につなげたい」とする。

新会社は約250人でスタート。DX本部、IT本部、企画管理部の3部体制とし、資生堂の事業や戦略に貢献。「すべての人生を健やかでリッチに。デジタルとテクノロジーを駆使して、一人ひとりの明日のビューティー体験を創造する」ことをミッションに掲げた。

社長に就任する高野篤典氏は、「社名のインタラクティブビューティーには、双方向の関係性を、デジタルやテクノロジーを用いて、様々なつながりをよりよいものにし、ビューティー体験や価値を創造したいという思いを込めた」とする。

資生堂は、2016年に、ニューヨークにテジタルの拠点を設置し、世界中の資生堂グループのデジタル化を推進してきた。社員のデジタルの知識や能力を高めるためのデジタルアカデミーを運用し、すでに7000人を超える受講者がいる。

資生堂の魚谷社長兼CEOは、「コロナ禍で事業のやり方も変わり、店頭で顧客と直接接点を持っているビューティコンサルタントが、ライブストリーミングを活用し、オンラインで情報を伝え、Eコマースで購入するということが始まっている。ビューティー産業のなかにも、資生堂の事業のなかにも、デジタルの取り組みが加速している。働き方のなかにもデジタルを活用して生産性が高い仕事ができる」とし、「世界はさらに速いスピードで動いている。資生堂が持つ様々な事業の能力と、デジタルに特化した能力を持つアクセンチュアと組むことで、より加速ができる。ひとつ飛び上がって、大きく加速させたい」と語る。

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米アクセンチュア 最高経営責任者 ジュリー・スウィート氏

米アクセンチュア 最高経営責任者 ジュリー・スウィート氏は、「資生堂は、個々の強みをさらに引き出すことで、ビューティーイノベーションを実現することを目指しており、それによって、顧客、社員、社会に向けて新たな価値を創出できる。そして、より速く動くために、変化を起こすことに取り組んでいる」とする一方、「アクセンチュアは2025年までに社員の男女比を50対50にすることを目指しており、資生堂では2023年までに女性マネージャーを50%にするといっている。そして、新たなテクノロジーを活用して、サスティナブルを中心にすることも掲げている。今回の合弁会社は、アクセンチユアと資生堂のミッションを実現できる取り組みだと考えている」とした。

資生堂の魚谷社長兼CEOは、「これによって、売上げを一気に高めようとは考えていない。むしろ、新たな時代において、ステーブルに、安定的なつながりを作るための取り組みである」とし、「合弁会社を通じたDXへの取り組みが、資生堂の5年後、10年後、20年後、30年後といった未来に向かって、有意義な一歩を踏み出すことになる。資生堂のCEOとして、強くコミットし、投資し、成功させたい」と意気込みをみせた。

デジタルの力を積極的に活用することで、資生堂が、これからどんな進化を遂げるのかが楽しみだ。

大河原克行 編集●ASCII

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