こんな音を聴きたかったんだ! GRADOファンの評論家も叫んだ、新世代「Prestigeシリーズ」レビュー

こんな音を聴きたかったんだ! GRADOファンの評論家も叫んだ、新世代「Prestigeシリーズ」レビュー

  • PHILE WEB
  • 更新日:2021/11/25

多くのオーディオファンから愛されるアメリカのオーディオブランド、GRADO(グラド)。同社は1953年にジョセフ・グラド氏によって設立され、現在は多くのファンから熱烈に支持されるヘッドホンやカートリッジを多数ラインナップしている。

そんなGRADOの定番ヘッドホン“Prestigeシリーズ”が一新され、「SR325x」「SR225x」「SR125x」「SR80x」「SR60x」の5種類が登場した。

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GRADOの基幹ヘッドホン“Prestigeシリーズ”が一新

実は筆者は、以前から同社のヘッドホンとカートリッジを愛用する一人。ライフワークとなっているスタジオモニターヘッドホン収集と並行して、2000年代に発売された「RS1i」「SR325」に加え、2019年発売の「The White Headphone」や2020年発売の「The Hemp Headphone」といった限定モデルも導入してきた。ここまで気に入っている理由は、ジャズ、ロック、EDM、ポップスなど幅広いカテゴリーのサウンドを楽しめる音楽性の高さに他ならない。

そして今回ご紹介するPrestigeシリーズは、同社の基幹モデルに位置するオープンエアー型のヘッドホン。30年前にジョン・グラド氏が初めてデザインしたヘッドホンとしても知られ、今回のモデルチェンジで既に第4世代となった人気シリーズである。

■唯一無二の意匠は踏襲しつつ、最新世代ドライバーを搭載

先述のとおり、Prestigeシリーズのラインナップは合計5種類で、メッシュを使ったオープン型ハウジングを含め、外観は5モデルとも共通の意匠を持つ。筆者は唯一無二ともいえるGRADOのデザインが好きなので、無理に形を変えようとしないことを嬉しく思う。

「SR325x」は、シリーズ唯一となるアルミニウム合金製のハウジングとレザー製のヘッドバンドを採用した最上位モデル。そして「SR225x」「SR125x」「SR80x」「SR60x」は、無共振ポリカーボネートハウジングを採用。ヘッドバンドはレザー製ではないが、装着感と耐久性を向上させたものが用いられる。

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最上位の「SR325x」はアルミニウム合金、ほか4モデルは無共振ポリカーボーネート製ハウジングを採用している

モデルチェンジによる最大の変更点は大きく3点。1点目は、全モデルにボイスコイルを軽量化しドライバーを高効率に駆動できる、第4世代目となる新開発の44mm径「Xドライバー」を搭載したこと。

2点目はケーブルで、スーパーアニールという加熱処理が施された新開発のOFC導体を採用した。3点目はヘッドホンバンドで、全モデルが高耐久性のものに刷新されている。また、モデルごとに個別のチューニングを行い、音質を煮詰めたとのことだ。

まずは「SR60x」「SR80x」を試聴

■「これぞGRADOのヘッドホン!」なサウンド

今回はAstell&KernのDAP「SE180」を用いて、5モデルの中から「SR60x」「SR80x」「SR325x」の順番で試聴テストした。

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最上位の「SR325x」と、最もカジュアルな「SR60x」、シリーズ第1世代より連綿と続く「SR80x」を試聴した

試聴音源はすべてハイレゾのデジタル楽曲ファイルで、ポップスはホセ・ジェイムスの 「リーン・オン・ミー」、J-Popは米津玄師の5thアルバム「STRAY SHEEP」、EDMはA.C.E/スティーヴ・アオキ「Fav Boyz」(全て48kHz/24bit FLAC)を使用した。

まずはシリーズに共通する印象として、簡単に表現すると、前モデルが備えていた躍動的な音楽性を受け継ぎながら、ヘッドホン再生能力の指標となる分解能や音の立ち上がりが予想以上に向上している。また、単に価格の差が音のグレードに現れているのではなく、各モデルがそれぞれに個性を持っていたことは特筆したい。これぞGRADOのヘッドホンだ!

最初はシリーズで最もカジュアルなSR60xから。上位4モデルが採用するドライバーは“De-Stressed Driver”仕様だが、本機は“De-Stressed”ではない通常のXドライバーを採用しており、ケーブルも4芯と簡素化されている。

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シリーズ最エントリーのSR60x

とはいえ聴いてみた印象はとても良い。平たくいえば、良くも悪くも古き良き時代のGRADOの音を継承している印象で、音の質感は荒いが、その分音離れが最高なのだ。もちろんオープン型なので圧迫感がなく、例えばホセ・ジェイムスは、キックドラムがビックリするほどハードに聞こえる。

誤解を恐れず書くなら、本来のソース音源より躍動的に感じる。しかし、前モデルよりも付帯音が少なく、かつ全帯域のスピード感もあり、米津玄師はボーカルの距離感が近い。

続いて初代Prestigeシリーズのエントリークラスとして登場し、全世代で人気が高いという80番代のSR80xをテストしたが、「え?80番代ってこんなにオーディオ的な性能高かったっけ?」と一瞬感じるほどの変化があった。SR60xに比べ、音色的に艶やかになり、各帯域の繋がりや密度感が向上している。

ホセ・ジェイムスは、一聴してハウジングの鳴きが抑えられていることがわかり、サックス、ベースなどの楽器は細かいニュアンス表現向上が顕著だ。米津玄師は、高域が若干突き刺さるが、その分ボーカルに艶やかさが出ているし、SR60x同様にキックドラムやベースなどの躍動感が強い。

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良い意味で躍動的なSR60xに対し、SR80xは艶やかな音色、かつ各帯域の繋がりや密度感が増している

最上位「SR325x」を試聴

■大箱クラブ級のグルーヴを聴かせてくれる「SR325x」

そして最後は、最上位モデルとなるSR325xを試してみた。手に取ってみると、シルバーのハウジングと、 最上位モデルの証となるホワイトステッチが眩しい。ケーブルは8芯OFC線を使っているので、先に試した2モデルよりも少し太い。

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最上位のSR325xを試聴

多くのファンを持つ325番台の最新モデルということで、自ずと気持ちが入るが、その音質は目を見張るものがあった。本機は低域に重量感があり、特に、特定の音源に対して、素晴らしく支配的な音を出すのだ。

ホセ・ジェイムスは中高域の質感がフラットで、そこに低域がかぶさってくるので若干落ち着いた印象になるものの、米津玄師は帯域バランスがアキュレイトな再生音で、高域は抜けが良いが突き刺さり感は少なく、ボーカルの距離感も近すぎず遠すぎずベストな印象。

…と、ここまでは「さすがは最上位モデルだな」といった感じだったが、驚嘆したのはEDMを聴いた時だ。SR325xで聴いた「Fav Boyz」は、コロナ禍の前に新宿の某大箱クラブで聴いたような、圧倒的な重量と音圧のあるエレクトリックバスドラムが炸裂する。「こんな音を聴きたかったんだ!」と思わず筆者は叫んだほどだ。

もしかして現代のポップスとかなり相性が良いのでは? と思い、ザ・ウィークエンドの最新シングル「Take My Breath」も再生してみたが、やはり最高だった。ベースやドラムは理想的ともいえる帯域バランスと質感を持ち、キレが良い重低音が空間に広がりグルーヴ感抜群だ。

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SR325xは、土方氏が思わず興奮するほどのグルーヴを聴かせてくれた

試聴ということを忘れて音楽の渦に身を任せてしまったが、筆者が考えるGRADOのアドバンテージは、何と言っても音楽性の高さ。音楽と一体になれるグルーヴ感の高い音ということに尽きる。今回のモデルチェンジではそこに、オーディオ的な再生能力の高さを示す付帯音の減少や音の立ち上がりの向上が感じられたことが特筆点と言えるだろう。

また、着け心地の良さも確かに向上しており、前モデルよりも長時間使用しても頭部の疲れが少なかったことも記しておきたい。

さらに、今回のレビューでは取り上げてないものの、「SR225x」「SR125x」も試聴してみたところ、各々がしっかりオンリーワンの個性をもち、音源にハマった時の表現力は本当に素晴らしいものがあった。付け加えると、本シリーズはインピーダンスがすべて38Ωなので、比較的安価なDAPなどでも駆動しやすいのも嬉しいところだ。

最近は限定モデルも人気のGRADOだが、定番モデルの確かな音質向上は嬉しかったし、ニューヨークを拠点とし、60年以上オーディオ製品の設計を行ってきた同社らしい「モノ」としての佇まいも魅力的だ。リスニングの時間を最上の音楽体験としてくれるGRADOのヘッドホン、ぜひ注目していただきたい。

(協力:ナイコム)

土方 久明

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