池上彰「絵文字・LINEが若者の読解力を奪い、スマホが脳の発達を止める」

池上彰「絵文字・LINEが若者の読解力を奪い、スマホが脳の発達を止める」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/22
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「日本人の読解力が急落」――2019年のそのニュースは各新聞を賑わせ、日本中に大きな衝撃を与えた。では、そもそも“読解力”とは何を指すのか、人生においてどう位置づけられるのか…。
たとえば、「場違いな発言や行動をしてしまう人がいるけれど、いったいどうして?」「仕事がうまくいく人といかない人の違いは何?」「すぐ人と打ち解けられる人はどこが違うの?」などなど……その答えが「読解力」。
池上先生が、人生でいちばん身につけたい生きる力=「読解力」のつけ方を伝授。社会に出たらこの力こそ最大の武器です。
講談社+α新書『なぜ、読解力が必要なのか?』から注目の章を3日連続でピックアップ!

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絵文字が読解力を低下させる

「文章を書く力」そして「文章を読み解く力」の対極にあるのが、絵文字やLINEスタンプです。これらが読解力低下の原因になると私は考えています。

LINEでは、短い文章とスタンプで、会話のようにテンポよくやり取りをする人が多いでしょう。感情表現を文章で綴らず、スタンプや文章内の「絵文字」に頼ってしまうことで、受け手側は「文章で真意を理解する機会」を、送り手側は「文章で真意を表現する機会」を失い、つまりは読解力を鍛える機会を失っているのです。

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※画像はイメージです。Photo by iStock

たとえば「お前、バカだな」という文章は、これだけだと相手を罵っていると誤解されます。「バカだなぁ~」と、あきれつつも優しく言っているのだと相手にわかってもらうためには、これまでは誤解されないための文章を一生懸命考えなければなりませんでした。絵文字の登場により、今では「お前バカだな」の文末に笑顔の絵文字を貼りつけるだけで、文字どおりの「バカ」の意味じゃない、と伝えられます。

スタンプも同様です。爆笑している様子、にやりとした笑顔など、自分の心情に合わせたスタンプを選ぶだけで、相手に誤解されないように真意を伝えることができるでしょう。

あるいは、「バカだな(笑)」と文末に「(笑)」を書くことでも、罵っているわけではないと伝えられます。最近はビジネスの場面でも、親しい間柄であればメールで「こんなことがありました(汗)」などと書いてしまう人もいるようです。

絵文字、スタンプ、記号がないと、文章で詳細に説明しなければならないので、不便ではあります。しかし楽なほうに流れていけば、文章の意味、行間などの深い「文意」を読むこと、すなわち読解が苦手になってしまい、さらに書く力も失われます。

就職活動前の学生にアドバイスを求められた際には、これらの絵文字などを使わずに生活をしてみるように勧めています。文章だけで自分の気持ちを誤解されないように書いてみる訓練は、エントリーシートを書くときにも、就職後にビジネスメールを書くときにも役立つでしょう。

スマホが脳の発達を止める!?

さらにLINEに関しては、読解力以外にもさまざまな悪影響が懸念されています。

LINEにまつわるものとして「既読スルー」という言葉が流行し、今や市民権を得ている感があります。LINEやWhatsAppなどのチャットアプリは、受信者がメッセージを読むと送信者の画面に「既読」という文字が出るため、相手がメッセージを読んだかどうかが送信者にわかる仕組みになっています。

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※画像はイメージです。Photo by iStock

読んだ事実があるのにその返信が来なければ、送信者は、どうして返信してくれないんだろうとヤキモキしてしまいます。そのためこの「既読なのに返信しない」行為は、相手への非難の意味を込めて「既読スルー」と呼ばれるようになりました。これを発端とした痛ましいいじめなども起きました。

今の子どもたちは、メッセージを読んだらすぐに返信しないと友人から非難されると恐れ、四六時中スマホを手放せなくなっています。周囲との同調圧力がことさら強く、なかなか「わが道を行く」態度がとれないのは思春期ならではでしょうが、この「既読スルー」を恐れてスマホの着信ばかり気にしてしまう行動は、学力に大きな問題が出ることがわかっています。

東北大学の加齢医学研究所所長、スマート・エイジング学際重点研究センター長の川島隆太教授が子どもたちに行った心理実験では、作業中にタイマー音を鳴らしても作業にそれほど影響は出ませんが、LINEの通知音が鳴ると途端に注意力が低下し、作業効率も落ちることがわかったそうです。つまり「LINEでメッセージを受け取った」という情報は、集中力を著しく低下させてしまうのです。

さらにスマホやタブレットを頻繁に使う子どもたちは、脳の発達が止まることが証明されたそうです。その理由については研究が進められている最中ですが、心理学の世界では「スイッチング」と呼ばれる行為に問題があると考えられています。

スイッチングとは「何かに集中しているときに妨害が入り、別のことをやり始める」ことのくり返しにより、ひとつのことに集中する時間が極端に短くなる現象を指します。スマホは特に、さまざまなアプリをストレスなく簡単に操作できるよう設計されているため、スイッチングが起きやすくなります。スマホの使用中は「脳が何にも集中できていない状態」になり、ひどい場合には脳に損傷を与えてしまう場合さえあるというのです。

LINEやスマホの使いすぎは、読解力のみならず脳にも悪影響を及ぼすということです。

「読解力」はいつでもどこでも伸ばせます。ニュースを見ていても、ふだんの「書く」「伝える」「読む」などの場面でも、読解力を伸ばすコツを池上先生が教えます。仕事や人間関係で必須の力がつく面白くて役に立つ講談社+α新書『なぜ、読解力が必要なのか?』は、好評発売中!

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