
直近のこのトルコ戦では3失点と守備の不安を露呈し、ナーゲルスマン体制下での初黒星を喫した。(C)Getty Images

守備を改善点に挙げるナーゲルスマン監督。(C)Getty Images
ワールドカップ(W杯)の直近2大会でグループリーグ敗退を喫し、カタールW杯後は6試合でわずか1勝。ドイツ代表のハンジ・フリック前監督は9月のフレンドリーマッチで日本代表に1-4の完敗を喫した直後、その職を追われることになった。
2024年にドイツで開催されるEURO(欧州選手権)に向け、これ以上の停滞は許されないというプレッシャーの中、新監督に抜擢されたユリアン・ナーゲルスマンはチームからポジティブに受け止められている。指揮官の選手起用に関する方針は次のとおりだ。
「パフォーマンスが全てだ。これは全選手に当てはまることだ。ヨシ(キミッヒ)も例外ではない。彼が他の選手よりよければ、彼がプレーする。もしパスカル(グロス)のほうが良ければ、パスカルがプレーする。対戦相手との相性なども考えたうえで、これがベストと思える選手たちをピッチに送りたい」
ドルトムントのユリアン・ブラントは“ナーゲルスマン効果”を次のように語る。
「とてもポジティブに感じているし、とても楽観的な気持ちにもなれている。いや、むしろ熱気に満ち溢れていると言ってもいいかもしれないよ。監督はチームにすごくよく合っているし、とてもいいアイデアを(選手に)出してくれていると思う」
キャプテンのイルカイ・ギュンドアンも続く。
「とても若い監督(36歳)だけど、インテリジェンスがすごくあるし、賢くて、戦術面に明るい監督だ。就任から間もないけど、彼の戦術的な哲学が随所で感じられる」
【動画】スーパーゴール続出!ドイツ対トルコのハイライト
その戦術面を深掘りするなら、フリック時代との大きな違いはビルドアップからのボールの進め方だろう。前線にパスを入れることの大切さは前監督も強調していたが、「どのように?」というところで選手とイメージを共有しきれていなかった。
結果、散見されたのがCB陣のとんでもないパスミスだ。ボールを持ったアントニオ・リュディガーやニコ・シュロッターベック、ニクラス・ジューレがどこに、どのようにパスを出すべきか見つけれず、それこそ道に迷った人のようになるケースが多かった。
ナーゲルスマンはボランチへの“見せ球”を有効活用しながら、選手が正しいポジションを取り、ボールを運びやすい構図を作り出している。その見せ球とはCBからボランチへのパスだ。相手選手を食いつかせることが目的で、周囲の選手はボランチから受けやすい位置でパスを受ける準備を整えている。
そうしたパス交換の連続で相手を誘き出しながら、相手守備ライン間へのパスコースが空いたらすぐに使う。もらった選手は無理して1人で仕掛けようとせずに、サポートに来た選手を使いながら素早く次の局面に進めるのが約束事だ。
ナーゲルスマンはCFの発掘もテーマにしている。カタールW杯出場組のニクラス・フュルクルクへの信頼はそのままに、10月の米国遠征ではウニオン・ベルリンのケビン・ベーレンス、そして11月は今季のブンデスリーガで5得点・5アシストと結果を残しているブレーメンのマルビン・ドゥクシュを初招集した。
どれだけチャンスを作っても、ゴールなしには勝利できない。CFをどのように活かすかをチームとして共有できるようになったら、試合の進め方もまた変わってくるはず。
一方で、最大の改善点は守備だ。ナーゲルスマン就任後も簡単に失点するような場面が一向に減らない(編集部・注/新体制の初陣だった10月のアメリカ戦で1失点、メキシコ戦で2失点、11月のトルコ戦で3失点)。その課題は指揮官も認識している。
「われわれの大きな改善点は守備。安定した守備力を手に入れなければならない」
MFレオン・ゴレツカは「僕ら相手に得点するのは簡単すぎるだろう。ビッグトーナメントでは守備が成功のキーになる。過去2大会(カタールW杯とEURO2020)はそこがうまくいかなかった」と話す。
ドイツが無失点で終えたビッグトーナメントの試合を探せば、EURO2016のラウンド・オブ16(スロバキアに3-0の勝利)まで遡らなければならない。7試合でわずか4失点の堅守を誇り、世界の頂点に立った14年ブラジルW杯当時の姿は見る影もなくなった。
当時のそれこそ鉄壁のディフェンスを再構築するには、システムを含む選手の理想的な組み合わせを早急に探し出す必要がある。
CBの軸はレアル・マドリーでプレーするリュディガー。そのパートナーには豊富な経験や確かなポジショニング、プレー判断を買われ、12月に34歳になるベテランのマッツ・フンメルスが有力視されている。
カギとなるのはCBよりもサイドバックか。ルディ・フェラー暫定監督とともにフランス代表に勝利した9月の試合、そして10月の米国遠征2試合(アメリカに3-1、メキシコに2-2)では、左右で異なるタイプの選手が配置された。右は競り合いに強く、守備バランスが取れるタイプで、左は高い位置で攻撃をサポートできるタイプだ。
レギュラーに近い存在はフランス戦で右に配され、優れた守備を何度も見せていたヨナタン・ター。ブンデスリーガで首位を走るレバークーゼンで守備の中心として活躍している27歳は、「クラブで上手くいっているという自信は間違いなくある。胸を張って代表に合流できるよ」と意気軒高だ。守備改善へのキーマンになるかもしれない。
その課題は抱えているものの、ナーゲルスマンを新監督に招聘したドイツの状態が上向きはじめたのは確かだ。ギュンドアンも「上手くいかない時期が来るかもしれないけど、欧州選手権に向けてどんどん良くなっていく。そんな手応えがある」と語っている。
※当コラムは11月18日のトルコ戦(●2-3)前に執筆。
取材・文●中野吉之伴
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