プーチンが絶体絶命...中国・習近平からも見捨てられて「万事休す」へ

プーチンが絶体絶命...中国・習近平からも見捨てられて「万事休す」へ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/09/23
No image

中国からの「ゼロ回答」

中国がロシアから距離を置き始めている。一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は予備役の動員と核の使用も辞さない考えを表明した。ロシアが敗北すれば、台湾奪取を目論んでいる中国も戦略の見直しを迫られるのは、必至だ。中国は、どう動くのか。

私は先週のコラムで、9月15日に開かれた中ロ首脳会談について、結果が判明していなかった段階だったが、中国の習近平総書記(国家主席)はロシアが求める軍事支援や核使用容認の「要請に応じないだろう」と書いた。

No image

プーチン大統領と習近平総書記(2022年2月の首脳会談時)[Photo by gettyimages]

結果は、その通りどころか、中国はもっと冷淡だった。プーチン氏を、ほとんど「見捨てた」と言ってもいいほどである。会談冒頭のやりとりが、実態を物語っている。

プーチン氏は、まず「ウクライナ危機に関して、中国のバランスのとれた立場を高く評価する」と述べた。問題はこの次だ。「我々は、中国が疑問や懸念を抱いていることを理解している。本日の会合で詳細に説明する」と語ったのだ。

これは、驚くべき発言である。プーチン氏が戦況の悪化を自ら認めたも同然だ。ようするに「我々は追い込まれた。だが、心配するな」と言ったのである。

習氏の返答は、そっけなかった。「世界が歴史と時代の挑戦を受けているなか、中国は主要国としての責任と主導的役割を果たすために、ロシアとともに仕事をする。そして、荒れ狂う世界に安定と積極的なエネルギーを注入する」と応じただけだ。

習氏は「ウクライナ」という言葉さえ口にしなかった。中国側は、後で「互いの核心的利益に関する問題について、双方が強力な支援を拡大する準備が整っている」という声明を出したが、これも、ただの一般論にとどまっている。

戦場で守勢に立たされたプーチン氏とすれば、喉から手が出るほど、中国からの軍事支援が欲しかったはずだ。それだけでなく、いざとなれば「核の使用」についても、可能ならば、事前に「暗黙の了解」を取り付けたかっただろう。

それは「米国の暴露」で明白である。9月5日付のニューヨーク・タイムズによれば、米諜報機関はロシアが北朝鮮に数百万発のロケット弾や砲弾を調達していた。イランからは、ドローンを購入していた。ロシアは武器弾薬を使い果たしつつある。

だが、願いは叶わなかった。

中国の「ゼロ回答」は、事前にロシアに伝わっていたに違いない。だからこそ、プーチン氏は冒頭から「あなたの疑問と懸念は理解している」と言わざるをえなかったのだ。とても、軍事支援や核使用の了解取り付けどころではなかった。

日本のメディアの大失態

私は、以上のような見立てを、9月16日発売の「夕刊フジ」のコラムに書いたが、こうした見方は、私だけではない。

9月15日付のニューヨーク・タイムズは「プーチンの戦争に対する中国の支持は、首脳会談の後、一段と揺らいでいる」と報じた。CNNも同じく「ロシアの後退は『新たな世界秩序』作りを目指す彼らの計画を台無しにしている」と報じている。

日本のメディアはどうかと言えば、まったくピンぼけだ。

たとえば、共同通信は15日に「中ロ首脳、協力深化表明 侵攻後初の首脳会談」という記事を配信した。NHKの報道も「中ロ首脳 軍事侵攻後 初の対面会談 対米姿勢で結束強化を強調」という具合である。

中ロに隙間風が吹くどころか、逆に「結束を固めた」とみていたのである。記者も担当デスクも「中ロの連携は盤石」と思い込んでいたのか、プーチン氏の冒頭発言の異様さに気づかないほど鈍感だったか、あるいは、その両方だったとしか思えない。

私は9月16日朝の「虎ノ門ニュース」で、ピンぼけぶりを指摘したが、こんな調子では、日本でマスコミ不信に拍車がかかっているのも無理はない。

プーチンを切り捨てる習近平

それはともかく、ロシアは首脳会談後の19日になって、ニコライ・パトルシェフ安全保障理事会書記が訪中し、中国共産党の楊潔篪政治局員と会談した。ロシア側の発表によれば、合同軍事演習の実施や軍事部門の協力強化、参謀本部の連絡強化で合意した、という。

プーチン大統領は21日、国民向けの演説で、部分的な予備役動員を表明した。セルゲイ・ショイグ国防相によれば「30万人を動員する」という。同時に、核の使用についても、大統領は「はったりではない」と述べ、あらためて、核を使う可能性を示唆した。矢継ぎ早の動きに、ロシアの焦りがにじみ出ている。

No image

プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相[Photo by gettyimages]

中国は、どうするのか。

私は「ウクライナ戦争の結末と、プーチン氏の運命を見極めるまでは動かない」とみる。その間は「台湾侵攻は当面、棚上げする」だろう。これまで国内の反対論を抑え込んで、プーチン氏に入れ込んできただけに、もしも、ロシアが敗北すれば、その衝撃波は習氏の政治基盤を根底から直撃するからだ。

戦争に敗れた後も、プーチン氏が権力を維持できるかどうかは分からない。最悪の場合、プーチン政権が倒れ、後継政権はウクライナに全面謝罪し、親米路線に大きく舵を切り替える可能性もある。そうしなければ、経済制裁を解除できず、国が立ち行かないからだ。そうなったら、習氏にとっては「悪夢のシナリオ」である。

歴史の前例もある。

米国のリチャード・ニクソン政権は1971年7月に突如、訪中を発表し、劇的な米中和解を成し遂げた(第1次ニクソン・ショック)。これによって、中国は激しく対立していた旧ソ連に対する「米中包囲網」を形成しただけでなく、米国の支援を得て、経済発展の足がかりを築くことができた。

もしも、敗北した後の新生ロシアが米国と手を組むようなことになれば、攻守所を変えて、今度は「米ロによる対中包囲網」が完成してしまうかもしれないのだ。

これは、けっして夢物語ではない。私が夏にインタビューしたハーバード大学のステファン・M・ウォルト教授は3月21日に米外交誌「フォーリン・ポリシー」に寄稿した論文で、次のように指摘している。

〈欧州の防衛能力は一夜にして、回復しない。長期的には、米国とNATO(北大西洋条約機構)、欧州連合は欧州の安定性を高め、ロシアを中国への依存から引き離すために、ロシアを除外しない形で、欧州安全保障秩序の構築に務めるべきだ。こうした展開は、モスクワに新しい指導者が誕生するのを待たねばならないが、長期的な目標であるべきだ〉

いま、ロシアの劣勢が深まるにつれて、そんな事態が現実になる可能性が出ている。先のCNN記事も、その可能性を指摘していた。もっとも真剣に考慮しているのは、習近平氏に違いない。一歩間違えれば、プーチン氏と共倒れになる可能性があるからだ。

もちろん、別の展開もありうるが、成り行きをしっかり見極めずに、台湾に突撃するほど、習氏が愚かとは思えない。古今東西、独裁者にとって最重要課題は、自分自身の生き残りと権力維持だ。台湾奪取のような夢の実現ではない。

はっきり言えば、習氏にとって「台湾奪取=中国の夢」は、単なる理想にすぎない。独裁者に、理想は2の次、3の次だ。肝心なのは、何はさておき、自分自身の権力維持である。権力を失ってしまったら、理想の実現もへったくれもないからだ。

ロシアが敗北すれば、プーチン氏と手を組んだのは、習氏の戦略的失敗になる。それは当然、国内で批判を招く。そのうえ、台湾奪取のようなリスクのある博打を打てるか。そうではなく、習氏はまず自分自身の足元を固め直すことを優先するだろう。

バイデン政権はどう動くか?

逆に言えば、米国にとって、習氏の台湾奪取計画を抑止する最良の手段は、ウクライナでプーチンを打ち負かし、できれば失脚させることだ。今回の中ロ首脳会談は、ウクライナ戦争だけでなく、台湾問題でも重大な岐路にさしかかった事実を示している。

米国の戦略目標が「ロシアの弱体化」であるのは、4月のロイド・オースチン国防長官発言で明らかになっていた。ウクライナの反転攻勢の成功で、米国は目標を達成できそうな見通しが出てきた。

No image

ロイド・オースチン国防長官[Photo by gettyimages]

米国のジョー・バイデン政権で、ウクライナ支援の指揮をとっているのは、ジェイク・サリバン大統領補佐官とマーク・ミリー統合参謀本部議長である。この2人は、反転攻勢の立案も担っていた。作戦成功に自信を深めているに違いない。

バイデン大統領は9月18日、米CBSのテレビ番組「60ミニッツ」で「米軍が台湾を防衛するかどうか」と問われ「もし実際に前例のない攻撃があれば、イエスだ」と述べた。大統領が同じ質問を受けたのは、これで4回目だ。

9月17日付のニューヨーク・タイムズによれば、大統領は「プーチン氏が核で反撃する事態を恐れて、ウクライナが求めている『ATACMS』と呼ばれる長距離射程ミサイルの提供を躊躇している」という。米議会では、そんなバイデン政権の弱腰姿勢に批判が強まっている。

バイデン氏は、どう対応するのか。大統領の決断は、プーチン氏だけでなく、台湾と習近平氏の運命も握っている。

9月21、22両日に公開した「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は「高橋洋一が徹底解説する円安と物価高、景気対策」と題して、高橋さんの経済解説をお送りします。また23日には、私の1人語りで「ウクライナ戦争と中ロ関係」を公開します。ぜひ、ご覧ください。

また23日には「虎ノ門ニュース」に出演します。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加