高田馬場の真ん中に現れた「中国」異色の新ラーメン店に潜入してみた

高田馬場の真ん中に現れた「中国」異色の新ラーメン店に潜入してみた

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/08/10
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日本っぽくないラーメン店

高田馬場に変わったラーメン店ができている。

高田馬場はラーメン店の激戦区であり、店の入れ替わりが激しい。もう7年ほどその入れ替わりを細かくチェックしているが、今年になって妙な店ができた。ひとつは「張亮麻辣湯」というお店。もうひとつは「沙県小吃」である。

まず店名が読めない。

ここでは日本の漢字で表記しているが、お店の文字は中国の文字で書かれていて、たとえば「張」の字が「张」となっていて、いまは並べて書くと何とかわかるが、店の前でいきなりその文字を見ても、わからない。音に出せない。

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張亮麻辣湯の外観

「沙県小吃」のほうは、県の字の下の部分がデザイン化されてぐにっと曲がっていて、最初みたときは「沙具小吃」に見えて、それでググってみれば、県だとわかったという次第。これは無理矢理よめば、サ・ケン・ショウ・キツと音にはできるのだが、でも意味がわからないから、読みにくい(沙県は地名で、小吃はちょっと食べるものつまり軽食っていう意味らしい。わかれば読めなくもない)。

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沙県小吃の外観

つまり看板がすでに日本人を拒否している。少なくとも日本人に向けて看板を出していない。

この店が、変わっているのは、ここが日本人向けの店ではない、というところである。

日本語が通じにくいのだ。日本の高田馬場にあるのに。

特に「張亮」のほうがそうで、何人か店員がいるが、すべて中国人で、中国語は通じるが、日本語がまったく話せない店員が何人かいた。日本語で話しかけると、一切言葉を発せずにすべて身振り手振りで逃げながら説明してくれて(逃げないでとおもったが)、「私は日本語が話せないので、日本語の話せる店員に聞いてください、いま、その人がいないのでごめんなさい」という気配だけは伝わってきた。

ここはどこだ。高田馬場だ。

よく知らない食材から「具」を選ぶ

この店は、ずいぶん昔にコンタクトレンズ屋さんだったところだ。何年も何の店も開いてなかったところのはずで(私の記憶によるとそうである)、たしか21世紀に入ってからはずっと閉まっていた。前のコンタクトレンズ屋さんで保存液を買った記憶だけがある。

やっと新しい店ができたとおもってたら、日本語が通じにくい店だった。

運良く、よく日本語を喋るお姉さんがいると、彼女の説明が聞ける。

表には「333円」と書いてあるが、333円で食べられるわけではない。中国大陸ではそういう表示をしてもいいのかもしれないけど、日本だと、333円と外に看板に出して、中で333円で食べられないのは、いけないとおもう(さっき見てきたら、333円という数字は見えにくくしてあった)。

333円は基本のスープと麺の料金で、それだと素のラーメンの状態で、それだけでは売ってくれない(そうなんだとおもうが、そういう細かいことを聞ける言語状況ではない)。99円のトッピングを3つ以上選んで、それがもっとも安いラーメンである。合計630円で税金がついて680円。まあ、ちょっと安いくらいのラーメンである。そう書きなさいっての。

具材を3つ選んでください、と言われて、じゃあメニューをみて選ぶのかとおもったら、違う。奥の壁に具材が入った小さいトレー(文房具を入れるような網型の細長いトレー)が並んでいて、そこにずらっと具材が入っているのだ。

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具材を選べる

野菜から、肉類、きのこ、豆腐、麺まである(麺はデフォルトについているのだが、それにまだ麺を足すことができるのだ)。それぞれが透明な小袋に入れられて、そのトレーにたくさん入っている。中には少なくなっていたり、人気なのか、すでにない具材もある。

何の具材か手書きの文字書いてあるが、カタカナが親切についているが、ときどき漢字だけのものがある。中国の略字だ。読めない。読めません。つまりその具材が何物なのかがわからない。

一緒に入った学生が「これ何でしょう」と小袋に入ったつみれ状のものをぶらぶらさせる。見ると略字で示されていて、まったく読めない。

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漢字が読めない具材もある

「何かの肉をすりおろしたもんじゃないのか」「何の肉でしょう」「見る限りは魚だとおもうけど」「何の魚ですか」「わかんねえよ」「大丈夫でしょうか」「そりゃ食えるだろうよ。ここにあるんだから」

そういうやりとりをしながら選ぶ。

スーパーでのもとの値段を知っていると、こんな量でえのきが99円だとお、とか、カニかまぼこがこれっぽっちで99円とは何事だ、油揚げがこれっぱかりで99円って近くのスーパーだと5枚で99円だぞ、という余計な主婦感覚を出すと選べません。

野菜を入れないと、とても寂しい見栄えになる、とあとでわかった。つまりそこそこカサのあるものを入れないと、麺ばかりの素ラーメンに見えてしまうのだ。

この小袋を選んでトレーに入れて、奥のカウンター前のお姉さんに渡す。スーパーでのお買い物みたいだ。麺も4種類あるので、それから選ぶ。うどんみたいなのもあるし、ラーメンぽい麺もあるし、見たことないような麺もある。どきどきする。

それを渡すと番号を振った伝票をくれるので、それを持って席に戻って待つ。

「砂糖」もトッピングできる

店内の表示も中国語ばかりなので、知ってる漢字を何とか拾い読みして書いてあることを想像する。

「DIY的食材をどうした、って書いてあるぞあそこ、つまり自分らで組み立てるラーメンってことなんだろうな」「こちらの写真は冷やし中華みたいになってますけど、あれはどうやったら出るんでしょうね」「頼むと出るんじゃないのか、でも、それを引き出すまでの言葉のやりとりが気が遠くなるほど面倒そうだから、ちょっとおれは頼む気にはならんけど」、などといいつつ、待つ。

店員も中国人だが、客もほとんど中国人である。でも、ときどき「333円」だとおもって何も知らずに入ってきたんではないかという日本人が入ったとたんに茫然とたたずんでいるので、その人は中国人でないことがわかる。

やがて、番号が呼ばれる。いちおう日本語読みの数字で呼んでくれるので、わかる。これが中国語読みだったらアウトだけれど、高田馬場では今のところそこまで中国式ではない。

丼に入ったラーメンを渡され、すぐ横にある無料トッピングエリアで、おもに辛味などを加える。

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トッピングを選べる

麻辣湯だから、辛いラーメンである。辛味が何種類もおいてある。また漢字がよくわからないけど、見るからにめちゃ辛そうなものから、やさしく辛そうなものまで何種類かあり、なぜか「砂糖」もあって、ラーメンに砂糖いれるのか、とか少しどきどきしてしまう。

殻付きのまま煮込んだ味付け玉子が積んである。殻はとても色づいてるけど、殻をむくとけっこう白かったりするから、よくわからない。ここ、日本じゃないから、とおもうしかない。ライスもあって、でも玉子かライスかどっちかを選んで持っていくらしい(気まぐれに説明しているのを、たまたま聞いた)。でも、いつも、どっちかしかないようにおもう。

そういうラーメン店である。

スープは基本がけっこう辛いので、辛味を入れると、どんどん辛くなっていく。この、自分で辛さをどんどん増やしていけるってのが、いいところなんだとおもう。真っ赤なスープにしてニコニコしている中国人の若い娘さんも見た。

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具材やトッピングの選び方で雰囲気が変わる

スープは、どんな具材が来ても大丈夫なように作ってあるから、日本のラーメンのスープとは違う。どっちかってえと、「鍋のつゆ」みたいなものだ。

はっきり言えば、深みもコクもない。そんなものには興味がないんだとおもう。ここは日本ではないから。日本ラーメンの鶏ガラや牛骨や豚やらの濃い味が複層的にからまってくる、というやつではない。あっさり、単純な味。

これは、ラーメン激戦区で勝ち残れるような味ではないとおもったけど、それは考えてみれば大きなお世話で、勝手に私が「ラーメン激戦区に殴り込みをかけた中国のラーメン店」だと勘違いしているからである。実態は「中国人の客がたくさん見込める高田馬場エリア」にやってきた「完全な中国人向けの店」でしかなかったのだ。

つまり、日本人客は、最初から計算外のようだ。来てもらっていいんだけど、でもそこがターゲットではないので、日本人にはやや不親切である。タイミングによっては絶望的に不親切なこともありそうだ。でも同胞中国人が来てくれるから、だいじょうぶよー、という雰囲気がしている。

「バンメン」(480円)に挑む

「沙県小吃」は[SHAXIAN SNACKS]とある。スナックだそうだ。でもカラオケはないし、ママもいません。軽食店ってことでしょうね。

こちらは、かなり有名な店らしく、開店したとき、すごく行列が出来ていた。そして行列はどう見ても中国人だけの行列だった。

ここはもう十年以上ずっとラーメン店だったところで、古くは大分ラーメンをやっていて、とんこつ大学になって、豚マックスに一瞬なって、ハルクだったところである。

そこまできちんとこの店の素性来歴を覚えているのが自分でもすごいとおもう。豚マックスは一瞬で消えたな。大分ラーメンだったのはたぶん2010年ころだ。ずっと昔から2階もある店で、家賃が60万円少々くらいだった(インターネットで居抜き物件として出ていたのを見かけたことがある)。

「沙県小吃」では、メニューでも券売機でも「バンメン」が一番上にある。

バンメン。

よくわからない。でも480円と安い。

ほかにはワンタンと、蒸し餃子がある。だいたい480円である。ワンタンとバンメンセットがあって、それが券売機の一番目立つところに位置していて880円、単品2つ買うより80円ほどやすい。

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券売機の目立つところにある大きなボタンはだいたいトラップであることが多いのだけど(デフォルトの食品ではなく、ちょっと高いやつがその位置にある意地悪なラーメン店が多い)、でも、見渡すかぎり、腹がふくれそうなのはそのセットだけなので買ってみた。

出てきたバンメンは、「替え玉」みたいだった。博多ラーメンで替え玉を頼むと、皿の上に盛った麺だけが渡されるが、そのように見えたのだ。替え玉よりは量は多いけど。

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バンメンがきた! 一瞬、替え玉かと思う

えっ、これ、どうやって食うんだろう、と一瞬戸惑う。

じつは下にソースがあって、麺がのっかっていてソースが見えないだけである。混ぜないといけない。いわゆる「混ぜそば」みたいなものである。でも、日本の混ぜそばはもっと麺が太い。博多ラーメンのような細さだった。つまりこれ食べても全然、腹がふくれないのだ。いいんだろうか。

連れの学生は「中国人はみんな少食なんじゃないですか」という。「12億人もいるのにか」「13億でしょう、だからですよ」

よくわからない。

そして、このソースが、とてもジャンクである。

ナッツのような香りに、一緒にいる学生は「ちょっと、チョコの香りがしませんか」と興奮気味に言う。「スニッカーズみたいですよ!」と喜んでいる。まあ、カップラーメン(お湯を捨てるやつ)の変わり種、というところである。たしかにほかにない味で、ジャンクでキッチュだけど、ちょっとくせになるかもしれない。

ただ、この量で480円は微妙だよなあ、とおもう。牛丼くらいの380円だったらいいのに、でも、こういう味のカップそばが出てたらとても買いたいと、学生とそういう話になった。

一緒に頼んだセットのワンタンは、ふつうにおいしい。

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ふつうにおいしいワンタン

ただ、そもそもワンタンって食べ慣れないから、ワンタンを浮かしているのはスープなのかお湯なのか、つまり飲むものなのか、ただの置き場所なのか、ちょっとわからない。

飲んでみてもさほど味がしないので、「あ、ひょっとしたら、バンメンをここに入れて食うんじゃないのか」とおもいついてやってみたが、全然、うまくない。たぶん、間違っているとおもう。バンメンはワンタンと混ぜないほうをおすすめします(おれたち以外に入れてる人を見なかった)。

これは、中国版ケンタッキーなのか?

いちおう、中国で沙県小吃に行ったことがあるという中国人大学生に、バンメンの食べ方を聞いてもらったら、「中国ではバンメンを食べたことないのでわからないです謝謝」という丁寧な回答をもらった。なんだそりゃ。

二階席に案内されたので、まわりの人たちが何を食べてるのかを見物していたが、まあ、だいたいバンメンを頼み、ワンタンとのセットが多い。それ以外は揚げワンタンか、ツバメスープを飲んでいた。

しかしどれをとっても腹一杯にならないし、バンメンとワンタンセットも値段ほどは腹がふくれない。バンメンの量を増やしても、お菓子で腹をふくらませてしまったような感覚になってしまう。いったい、どういうときにどう食べるのがいいのか、いまのところはつかめていない。でも店にやってくる中国人たちは嬉しそうだ。

ラーメン店は、腹減ったときにふつうの食事として食べるものだが、ここはそんな感じでもない。ケンタッキーとかマクドナルド的なものかもしれないが、狭い店で長く居続けにくいところでもある(でもカウンターで、食べ終わったあと、ずっとスマホでゲームやってる中国人若者もいたけど)。

「沙県小吃」では、日本語はそこそこ通じそうだった。

前に3人ほど並んでいてそれはすべて中国人で、その人たちには店員さんは中国語で話しかけていて、で、おれたちの番になると、きちんと日本語で話しかけてきた。その切り替えは見事だった。

まあ、おれたちは並んでるときも日本語で話してたから、わかったとはおもうけど、でもぱっと見で、日本人か中国人か、見分けている気がする。まあ、中国人の若い男性は、髪型が日本人とまったく違うことが多いから、だいたい喋らなくても見分けられますけどね。

ちょっとアウエーな雰囲気

ラーメンの街の麺類として食べると(ラーメン調査員として行っているので)、まあ、日本のラーメンと比較してもしかたがないとはおもうが、スープにコクがないし、麺にも工夫がない。勝負になるレベルではない。

でも中国人の多い街高田馬場の店としては、たぶん正解だろう。中国人が居心地がよさそうだった。日本人は、かなりアウェー感を感じます。

「沙県小吃」はけっこう行列ができてる。中国ではかなり有名店で、その日本での初めての店らしい。だいたい映画館の早稲田松竹の向かいあたりです、でも、日本人がわざわざ電車のってやってきて食べるほどのものではないとおもうけどね。

中国人なら、電車のってわざわざやってきて食べるほどのもの、みたいだ。

不思議な店である。少し考えさせられる。

中国人が、日本人をまったく相手にしない中国人向けの店を開こうとしているという空気が少し衝撃であった。うちの近所で、観光客気分(しかも不安な方向のやつ)を味わえるのだ。海外の食堂で、注文したのはいいが、おれはまちがってたんじゃないかとおもってしまう、あの、不安である。

おもしろいといえばおもしろいが、なかなか奇妙である。

店内の客も大半が中国人なので、かなり疎外されている気分にもなる。

ただ、お客さんはたぶん留学生などが多く、つまりみんな中国語で話してるけど、こちらが「ちょっとすみません」と通ろうとするとすぐに「あ、ごめんなさい」と日本語で返してくれるやさしげな人たちが多い。

でも、疎外感は疎外感である。

たぶんメニューや、看板や、そのほかの文字がわからない、というところが大きいのだとおもう。文字が読めないと人間、かなり不安になる。まだ英語だけのほうが不安にならないだろう。

これまでだったら成り立たなかったタイプの店

これまでも高田馬場では、中国人が出しているラーメン店はいくつも見かけてきた。ただ、あくまで日本人向けのラーメン店を出して、日本で成功したい、という気配の店だった。私の見る限り(ここ7年くらい高田馬場・早稲田間にできたほぼすべてのラーメン専門店を把握してるつもりだけど)、だいたい失敗している。

想像する風景としては、あいだに立った口がうまい中国人の口車に乗せられて(高田馬場でラーメン店やれば絶対成功するよ、家系ラーメンってのやれば必ず大儲けだね、というような口舌)、それにうかうかとのっかってやってきてしまったというものである。でもまったく客が来ずに、3ヶ月から6ヶ月で、ほぼ遁走してしまう。そういう店を何軒も見てきた。

ところが2018年になって、もう日本人相手ではなく、こちらにいる中国人だけ相手にすれば成功するかも、という店が出てきたのだ。そして、その2軒は、いまのところそこそこ成功している。かつての失敗店をいやほど見てきたから、それと比べればすごく混んでいるのがわかる。半年で逃げ出すことはないだろう。

あきらかに何かが変わってきている。

日本では日本式で商売しなければいけない、という感覚が捨てられ、日本にいる中国人相手でも商売は成り立つ、と考え出したのである。やり始めたところは、まず成功している。慧眼ということだろう。

高田馬場はミャンマー人も多いエリアである。日本人以外の住民が多い。

ただ、国際都市というような風貌でもない。

古くからの住民は、下町ぽい心情の人たちが多い。

そのエリアで「日本人が入りにくい中国人向けの店」が開かれ、いわば中国人たちだけの空間が作られているのだ。どうなるのだろう。少し心配でもある。

また、中国人が日本をどう考えているのだろう、と座っているだけで考えさせられる店でもある。不思議な方向に日本が回転している気がしてしまった。

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