可愛くて、同時に考えさせる映画を! 『猫が教えてくれたこと』監督が語る

可愛くて、同時に考えさせる映画を! 『猫が教えてくれたこと』監督が語る

  • ぴあ映画生活
  • 更新日:2017/11/15
No image

トルン監督は11歳までイスタンブールで暮らした後に、ヨルダン、アメリカ、イギリスと住まいを移し、現在は撮影監督のチャーリー・ウッパーマンとアメリカで会社を設立。故郷に戻って、街で暮らす猫たちと、猫と暮らす人々の姿を描いたのが本作だ。

これまでにも様々な猫に関するドキュメンタリーが製作されてきたが、トルン監督は当初から「人間が猫をどう思っているのか?という映画は作りたくなかったですし、ストリートキャットの現状を扱うような問題提起の映画も目指していなかった」という。「私が目指したのは、とにかく猫が可愛らしく思えて(笑)、同時に観客が考えたり、想いをはせることができる映画をつくることでした」

そこで監督と撮影監督のウッパーマンは現地でリサーチを行いながら構想を練り“人間と同じように猫を撮影する”ことを決めた。「この映画では洗練されたカメラや特別なレンズを使用しているわけではないので、誰が、どのように撮影するのかが重要でした。私は人間を“肩ごし”に撮影するのが好きなのですが、チャーリーには猫であっても同じように撮影してほしいとお願いしましたし、人間の俳優と同じように顔のクローズアップも撮りたいと言いました。私の要求はそれだけで、後はチャーリーの才能によるものですね。彼のような素晴らしい才能をもった人がそばにいたのはラッキーでした」

本作ではカメラが猫の目線まで下がり、猫たちが狭い路地を歩く姿や、母が手に入れたエサを子どもたちに与えるまでの一部始終、自分でドアを開けて部屋の中にスルリと身体をもぐりこませる場面が丁寧に描かれる。一方で、本作は猫を“擬人化”するような表現は周到に退けられている。猫には人間が予想したり、立ち入ることのできない猫の視点と思考があるからだ。「犬がかわいそうなのは、長い時間をかけて人間によって繰り返し操作されてきたことです。オオカミやキツネなどの野生動物が家畜化されて、小さくて可愛い生き物になるよう人間の都合で操作されてきました。猫は、幸運なことに最近になるまでそのようなことは行われていません。結果として、犬は人間に服従するように進化させられてしまったのですが、猫はどの人間と一緒にいるのか自分で選びます。私はいろんな哲学者や詩人、芸術家にインタビューしたのですが、多くの人が猫好きでした。思い返せば、作家のアーネスト・ヘミングウェイも、フランスの哲学者ジャック・デリダも猫好きでした。彼らの多くが“猫は人間のすることをよく見ている”と言うんです。猫は誰と一緒にいるべきか自分で選ぶわけですから」

本作に登場する猫たちはみな自分で選んだ人間と暮らし、人間もまたフラリとやってきた猫を受け入れている。言語で意思疎通ができない、そしてこちらに服従しない相手を許容し、共に暮らしていく社会は、それらを排除する社会よりずっと幸福だ。「私も“他の生き物と同じ環境を共有できることが人間にとって幸福で健全である”と強く信じています。人間は産業革命以来、立ち止まることなく進んできましたが、その結果、土にさわることのない生活が増え、清潔であることを心がけ過ぎてアレルギーが出たりもしています。これってすこし変ですよね? 他の動物と一緒に、お互いを尊重しあって生きることは、“友愛”よりも“有益”の側面が大きいと思いますから、改善の余地があると思います。一方で、人間は、道で人がものごいをしていると“自分で責任を持つべきだ”と言いますが、猫がエサをねだると面倒をみたりします。ですから、先ほどの考えをおし広げることで、猫に敬意を払うように、人に敬意を、樹に敬意を、地球に敬意を持つことができるのではないでしょうか?」

トルン監督の想いを描く上で、舞台になったイスタンブールは重要な役割を果たしている。この街は古くから外国との貿易で栄えた街で、貿易船の積荷を狙うネズミを退治するために船に乗った猫たちがこの街にやってきて、あるものは定住し、またあるものは船に乗って港から去っていった。「人も猫もいろんな場所からイスタンブールにやってきて、何人かは去り、何人かはここに定住しました。だから、この街は面白いのだと思います。いろんな人やものの流れの中心にあるからです」

外から来るもの、そこに住みつくもの、どこかへ去っていくものをすべて受け入れる“交通の場所”で、お互いを尊重しながら共に暮らす人間と猫を描いた本作は、あなたに多くのことを教えてくれるはずだ。

『猫が教えてくれたこと』

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

コラム総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
営業スマイルを勘違いする男性客にイライラ...... 『接客業やってて一番クソだった客の話』マンガの衝撃の後日談に反応多数
ニトリ「カット式台ふきん」(205円)が衛生的で最高! キッチンに革命が起きる
これは美人すぎ!ベトナム人モデル「マイ」さんが和風美人すぎると話題に
ネットで話題!千葉・養老渓谷の「2階建てトンネル」を見逃すな!
意識不明の男性をラブホに放置した女が逮捕 「不倫がバレる」供述に呆れ

注目のキーワード

キーワードで気になるニュースを絞りこもう

  • このエントリーをはてなブックマークに追加