私たちは「日本は先進国である」という概念を、一度捨てねばならないのではないか

私たちは「日本は先進国である」という概念を、一度捨てねばならないのではないか

  • 文春オンライン
  • 更新日:2019/08/23

最近結婚した27歳の知人は、転職活動で大変厳しい現実を目の当たりにした、と言います。転職サイトに「27歳/既婚/女性」と登録すると、今までは通っていた書類の審査がパタッと通らなくなり、ようやくこぎつけた面接では必ず「お子さんの予定は?」と聞かれ、どこの企業からもほとんど相手にしてもらえないようでした。彼女は私に「日本で女が仕事を頑張ろうと思ったって、潰されるだけ」と悔しさを吐露しました。

日本政府が「女性の社会進出」において革新的であるように見せている一方で、実は未だに男性の育児休暇取得率は5.14%(厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査」)であり、女性は出産後の復職はおろか、たとえ子どもがいなくても、「適齢期」だというだけで就職に不利になってしまう。そんな実情は間違いなく存在します。

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©iStock.com

私たちは、日本に対してたくさんの「違和感」を持っています。その一例が、国内における男女格差であり、あまりに低い労働生産性です。

「保育園落ちた日本死ね」の頃から、この国は何か変わったでしょうか。日本は一体いつまで、ハリボテでできた「理想的国家」を演じ続けるのでしょうか。

日本の男女格差指数は、G7で最下位

昨年の12月18日、世界経済フォーラム(WEF)による男女格差の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」の2018年版が発表されました。

この指数は経済、教育、健康、政治の4分野14項目のデータを元に、世界各国の男女格差を指数により表したものです。今回調査対象となった149ヵ国のうち、日本の順位は110位。G7(主要7カ国)では最下位、という結果でした。

この指数により「日本は男女平等において、相対的に途上国である」と評価されたわけですが、「ジェンダー・ギャップ指数」をはじめ、昨今の日本国内における諸々の動向を鑑みて「あれ、なんだか今まで聞いてた話と違うじゃん」と思う人は、私以外にも多くいるのではないかと思うのです。

これまで数十年間にわたって、国内では一般的に「日本は男女平等を実現している国家」「日本は先進国だ」という共通認識がある程度あったように思いますが、近年、急速な経済成長を遂げ、人権意識が大きく変化していく国々を尻目に「日本絶対先進国論」を盲信するには、さすがに無理があるように思えてなりません。私たちはいよいよ、この概念を改めなければ国自体がどうにもならない局面を迎えていると思うのです。

「今の時代にそれやるの?」という医大の入試不正問題

2018年に東京医科大学をはじめ、複数の医学部で女性の受験生や浪人生に対する不正な得点操作が発覚した問題は、まさに「今の時代にそれやるの?」というような事例の典型でありましたが、これを「単なる大学側の差別的意識ゆえの不正」として片付けてしまってはならなかったはずなのです。背景の根本には「医師の人員不足問題」などがあって、おそらく現場では過酷な労働環境に置かれている医師たちがいて、そんな中では「途中で辞めたり長期休暇を取らずに、長く働き続けてくれる人材を獲得したい」という切実な事情があったことでしょう。

しかし、大学側が女性を不利に扱った理由について「女子が男子よりも精神的な成熟が早く、受験時はコミュニケーション能力も高い傾向にあるため補正をする必要があった」とか変なことを言い出してしまったがゆえに問題がさらにややこしくなり、結果的には問題の本質が解決されるに至らず、なんとなく時間だけが経過して騒動自体が収束してしまったのは、大変残念なことです。

過酷な現場を見て来たであろう人たちが問題をひた隠しにするのではなく、「育児の負担が女性に大きくかかり、女性が長期休職・退職せざるを得ない日本社会の現状では、男女の雇用機会均等の実現は難しい。この件については、もはや私たちだけでは解決ができない」と言ってくれれば良かったのに。

出産後の女性の採用について、人事は……

先日、とある中小企業の人事をしている女友達に「実際、女性の採用ってどうなの?」と聞いてみたところ、ひどくにがにがしい表情で「難しいんだよねえ」という答えが返ってきました。

同じ女性として、そしてこれから結婚・出産を考えている身としては、友人も「子どもがいる女性を積極的に採用して、出産後のキャリア形成を応援したい」と考えているものの、実際のところ、未だに育児や子どもの送り迎えに関しては女性に比重が大きくかかっているのが一般的です。そのため「社会全体が女性の社会進出を後押しする体制を整えている、または努力している」とは言えず、会社の長期的な利益を考えると、彼女たちの採用に対して消極的にならざるを得ないし、男性の応募があればそちらを優先している、と言うのです。

本来、国が本気で「女性が輝ける社会づくり」を推し進めようとしているのであれば、保育士の処遇改善を含む「待機児童問題」の解消や、女性の復職に対して消極的である民間企業からどのように協力を得るかなど、より「現実的な」指針が必要なはずです。「日本は女性の社会進出を実現していますよ!」と掲げるだけ掲げて、にもかかわらず内情は何も変わっていないし、大きな問題が発覚するまでは見て見ぬ振りを続けるから、ふとした拍子にボロボロとメッキが剥がれていくのであって。

とはいえ、多分世間一般の「常識」を変えることは容易なことではなくて、相当な時間を要するので持続的な取り組みが必要なのだろうな、と思う部分もあります。

22歳の春、入社式の日、齢70歳くらいの会長から「お前ら女たちは結婚すればここを辞めるだろうから、それまではこの会社で面倒を見てあげます。男性社員は末長くよろしくな」的な祝辞をいただいたときには思わず会長室で暴れまわりそうになりましたが、ああいう認識の人たちが実権を握っている会社ではとくに、女性の社会進出はなかなか浸透しづらいだろうなあ、と。だからこそ、上層部の意識改革に重きを置いて「組織のあり方」を根本から変えていかないことには、「女性が輝ける日本」は実現が難しいと思うのです。

男女格差のみならず

「とりあえず形だけ整っていれば問題ないでしょう」みたいなことは他にもたくさんあって、例えば2020年に開催が予定されている東京五輪では、満を持して招致したはいいものの、気温が高すぎたりトイレの臭いがする環境で泳がされるなど、選手は命がけで試合に臨むことを余儀なくされています。ボランティアは炎天下の過酷な状況下で長時間働き、熱中症で死人が出るかもしれないのに「暑さ対策は自己管理」という始末です。鬼か。

また、政府が長年掲げている「生産性革命」に関しても、なかなか内実が伴わない状況が続いています。公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2018」によると、日本の時間あたり労働生産性は47.5ドル。こちらもG7では、データ取得が可能な1970年から、48年連続で最下位という結果でした。

少子高齢化が進む中で、未だに日本では長時間労働で、効率の悪い働き方を強制されるというのは、非常に深刻な問題です。今でさえどこの企業も人手不足で喘いでいるのに、近い将来、労働人口がどっと減り、介護が必要な後期高齢者が溢れてゆく社会を、日本はどうやって支えていくつもりなのでしょうか。20代の私からすればこの先、まだ40年以上も働いて税金を納めなければならないわけですが、このままでは、日本が破綻する未来しか見えず、早くどうにかしなければ、と日々焦燥感に駆られています。「残業こそが正義」みたいな風潮、無駄なことしかないし、効率悪いし、本当に早くなくなってほしい。

日本はもう限界だよ

「欲しがりません、勝つまでは」と、戦後70年以上経ってもとかく「忍耐」を強いられる国、ニッポン。体罰とか、根性論とか、腹を痛めて産んだ子じゃないと愛せないとか、「日本って本当に先進国なんだっけ」という部分が多いものの、次世代を担う者たちがここで心折れずに踏ん張って、改革の緊急性をしつこく唱えていかなければ、そのうち老人から子どもまで全員共倒れするのは目に見えているので、とにかくみなさん、ぜひ選挙に行ってください。

もともと真面目で勤勉な気質なところは素晴らしい長所であると思うのですが、私を含め日本の人たちは、人にも自分にももっと寛容であればいいのに、と感じることが増えました。自分たちが我慢しているから、してきたから人にも我慢を強要するのではなく、「みんなが我慢しなくていい社会」を目指さなければ、日本はもう限界だと思うのです。

(吉川 ばんび)

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