人事コンサルタントに聞く「働き方改革」を成功させる4つのヒント

人事コンサルタントに聞く「働き方改革」を成功させる4つのヒント

  • @DIME
  • 更新日:2018/02/11
No image

最近のニュースのキーワードとなっている、「働き方改革」。安倍晋三首相が政策方針演説の中で「働き方改革を断行する」と述べたことでもさらに注目を集めている。

現在、日本では少子高齢化が急激に進行しているため、労働力の不足が問題となっていることがその背景にある。

この問題を解消するためには、テレワークや時短勤務などの柔軟な働き方を普及させ、子育てや介護中の人でも無理なく働けるような仕組みづくりが必須となる。

ニュースで耳にしない日はないほど今ホットな「働き方改革」だが、現状ではどれほど普及しているのだろうか。また、推進するにあたってはどんな課題があるのだろうか。

企業への「働き方改革」導入を支援している人事コンサルティング会社、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 執行役員経営企画部長の本合暁詩氏、コンサルティング部ワークスタイルデベロップメントグループ マネジャー 山下健介氏にお話を伺った。

■企業によって微妙に異なる「働き方改革」の定義

一口に「働き方改革」と言っても、そのテーマは多岐にわたる。

一般的によく知られているのは「長時間労働の是正」「テレワークなどの柔軟な働き方ができる環境の整備」「同一労働同一賃金など非正規労働者の処遇改善」などだが、「外国人材の受け入れ」「高齢者の就業促進」などのテーマも、実は含まれているという。

これらはあくまで政府が掲げる目標であって、実際に一企業で導入する際には、それぞれの会社に合った具体的な目標を設定することが何よりも大切なのだそうだ。

「働き方改革についての説明はニュースなどでも色々とされているが、実際に企業で働いている人々にとっては、どこか漠然としている。『たしかにいいことを言っているが今のところ自分にはあまり関係ない』『自分事としてリアルに感じられない』というのが、多くの働く人々の本音だろう。経営トップが『我が社も働き方改革をするぞ』と言っても、現場では半信半疑のままとりあえずプロジェクトを取り繕っているということもよくある。だから、最初に上層部が具体的に何をやるのかという明確な目標を設定してあげることが何よりも大切(本合氏)」 「働き方改革を推進している段階によっても、何をやるのかがかなり変わってくる。経営トップから方針をおろす時、現場の課題というのはそれぞれ異なる。たとえば、テレワークといった比較的わかりやすい施策であっても、職場によっては『何のためにやるのか』という目的に対して納得感を感じにくいことがある。また、『大きい方針は出たけれども本当にやるのか?』と実現に対する本気度がわからず、様子見状態になってしまう。そして、「働き方改革」のような大規模な取り組みを実行するときに一番負荷がかかるのが、現場にいる中間管理職。「進捗報告のための仕事が増えた」、「現場への説明や理解を得るために時間がかかってしまう」、「時間短縮の中で自身が仕事を引き取らないと回らない」などの声も聞く。最終的に働き方を変えていくのは職場が重要であるため、推進の主体が中間管理職になるのはやむをえないが、負荷が高くなりすぎると結局改革は進みづらくなる。特に組織の規模が大きくなるほど、お互いの認識を合わせるのが難しい(山下氏)」

■何をもって「成功した」と言えるのかも、企業によって異なる。

「成功例も、企業が最初に設定した目標によってわかりやすかったり、そうでなかったりと様々。たとえば、”生産性の向上”という目標の場合も、実際に定量的な成果が得られたら成功と置く場合もあれば、無駄なことに割く時間が減ったという実感が現場で感じられるようになったら成功と置く場合もある。”テレワークの導入”の場合は、対象が育児・介護中の社員だけなのか、全社員に等しく認めるのかによっても成功の基準が変わってくる(山下氏)」 「何に目的を置いて、どこまでやりたいのかによっても、成果は違う。テレワークの導入レベルひとつでも、成功したと言えるかどうかは会社によってまったく異なる(本合氏)」

現場で本音をいかに引き出せるかがカギ「働き方改革」の具体的な導入プロセス

実際に企業でコンサルティングを行ってきた山下氏に、「働き方改革」導入プロセスについて簡単に説明していただいた。複数の部署を抱える大規模な組織では、上層部と現場の認識にはかい離があるという。現場で働いている社員の本音をよく聞いて、いかに信頼関係を構築できるのかが、成功のカギとなるのだそうだ。

導入手順:

1.何のために働き方改革をするのか目的・方針を決める

「まず初めに自社に合った目的を設定する。この目的は、組織が達成したいことであると同時に、個人にとっても共感する余地のあるものであるかが大切。たとえば、私たちの会社では労働時間短縮によってできた余剰時間で「社会体験の充実」を図ることを推奨している。ボランティア、家事・育児、地域活動、仕事などのさまざまな社会での体験を増やすことを通じて個人が自己研鑽し、結果としてそれが企業としての目的である成長やイノベーション創出につながる。(山下氏)」

2.現場での課題、ありたい姿をヒアリング

「現場に上層部の想いをまずきちんと伝えることが、第一歩。実際にコンサルティングをしていると、「え? 何が始まるの?」と様子を伺っている方や、「労働時間を減らして評価されるのか?売上が減ったら逆に評価が下がるのでは?」などと戸惑っている方々が多いと感じる。そういう声を無視せず、一つひとつ耳を傾けないといけない。たとえば、ある大手メーカー企業では、エンジニアの労働時間が長いという課題があった。これまでも上層部の指示などで様々なプロジェクトにトライしてきたが、結局変わらなかったし、自分たちが本当に望んでいる成果は得られなかったという失望感があった。そこで、コンサルタント主導で、現場社員が本当にやりたいことやその障害となっていることなどを職場のみなさん同士で語り合う機会を設けた。中には、『子どもに誇れるような仕事をしたい』というその参加者の方の素直な気持ちもあった。そういった個人として「本当はやりたかったこと」が語られると、次第に本音に近い意見が集まるようになり、現実とのギャップが見えやすくなる。「本音が語れる、それを聞いてもらえる」という感覚が、『今回は違う』という信用感やその先の具体的なアクションに繋がる。もちろん、その次の意思決定をしっかりしないと、失望感に変わり成功しない(山下氏)」

No image

3.現場の「不」を情報として整理、上層部に伝える

「次に、現場から出た「不」安や「不」満の声や実際に起きている「不」便を情報として整理して上層部に伝える。上層部には、慢性的な人不足など部署だけの努力では解決しないことに取り組んでもらう。ただし、ここでも単純に効率化するという方向性だけで考えるのではなく、先々の自社を考えたときに何を実現したいか、という視点を検討する。その視点なしに効率性だけを考えて施策を検討すると、自社がお客様から支持されている強みまで削いでしまうかもしれない。

上記のような検討をした上で、上の方でするべき決定をして解決してもらわないと、現場の方の改革の動きが止まってしまう。現場からどのような課題が上がってくるのかによって、上層部がどのテーマに優先的に取り組むのかがこの段階で決まる(山下氏)」

4.テーマ別にプロジェクトを進める

「新制度やIT環境・ツールの整備など、テーマ別にプロジェクトを組んで全社で改善を進めていく。また、現場単位での動きが進まないと解決しないので、現場の中間管理職リードでもプロジェクト進めていく。このふたつのプロジェクトは、同時に進行することもある。『働き方改革』導入の中で結局一番大変な思いをするのが、中間管理職。たとえばテレワーク導入の場合は、ルールやガイドラインを整えるなど管理職をきちんとサポートしていくことが重要。1から4までのプロセスを何度も繰り返す。現場に戻してトライし、再び意見を吸い上げていく(本合氏)」

過剰サービスを求められる場合は?「働き方改革」の難易度は業界ごとに違うのか

では、業界によって「働き方改革」導入の難易度は異なるのだろうか。

日本のブラック労働の原因のひとつとされてきたのが、「お客様は神様です」というフレーズに代表される過剰サービスだ。飲食・小売など一般消費者向けのサービス業では、その傾向がより顕著だ。

最近では、これらの業界でも正月休みが拡大するなど少しずつ変化が見られ始めているが、コンサルタントの目にはどう映っているのだろう。

「ヤマト運輸さんなど宅配便大手が値上げをしたことも話題になったが、サービス業界も少しずつ変わってきていると実感している。コンサルティング・サービスを提供している弊社の競合の中には、昼夜を問わずどんな要望にも対応することをいとわない外資系コンサルティング会社も含まれる。当社が同じような対応をしないと顧客を取られてしまうケースもあるにはある。でも、そこで自社の方針を曲げてはいけない。自社の従業員にとって魅力的な労働環境、働きやすさというのも成長のために大切だ。世の中全体の意識も、少しずつ変化している。サービス提供者も、売り手であると同時に買い手でもあるということを忘れてはいけない。売り手企業と買い手企業が、もっと対等な立場になってよいと思う(本合氏)」

昨年末にリクルートマネジメントソリューションズが発表した「『働き方改革』の推進に関する実態調査 2017」でも、『働き方改革』の推進上の課題としてもっとも多く挙げられたのが「社外を含めた商習慣を変える難しさ」(62.1%)だった。長時間労働問題の裏には、顧客のわがままも大いにあるのかもしれない。自社内だけで働き方改革を頑張っていても、限界があるのだろうか。

「社外を含めた商慣習を変えるのが難しいのは、ある意味当たり前と言えば当たり前。『難しい……』と言っているだけではいつまでも何も変わらないので、現状がどうあれとにかくまず決める、実行するという強い姿勢が大切。たとえば、不採算案件については受注しないと経営トップが断固として決めている会社もある。『こういう経営方針に決めましたので』と社長自身が直筆の手紙を取引先に出したという事例もあった。とくに、飲食などは人不足が死活問題になるので、人材を集めるために経営トップも真剣に取り組んでいる。一企業だけでは世の中全体を変えることはできないが、このような一社一社の強い決意が波及して社会全体を少しずつよい方に動かしていくのかもしれない(本合氏)」

【参考】
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ-【調査発表】『働き方改革』の推進に関する実態調査 2017

【取材協力】

No image

本合 暁詩(ほんごう あかし)

新日本製鉄、スターンスチュワート日本支社長などを経て現職。立教大学、国際大学講師。慶應義塾大学法学部卒業、国際大学大学院修了。国際基督教大学博士。著書に、『会社のものさし―実学「読む」経営指標入門』(東洋経済新報社)、『英語で学ぶコーポレートファイナンス入門』、『図解 ビジネスファイナンス(第2版)』、『組織を動かす経営管理』など。近著に『組織を動かす働き方改革』(以上中央経済社)。

No image

山下 健介(やました けんすけ)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズに新卒入社。中央大学法学部卒業。採用・新人若手育成領域、営業力強化領域のコンサルティング部門などを経て現職。現在は、クライアントの働き方改革を支援するコンサルティング部署WorkStyleDevelopmentグループのマネジャー。

文/吉野潤子

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
大王製紙の没落...創業家がカジノ狂いで横領事件、抗争に明け暮れ業界再編に乗り遅れ
「月10万円生活」? 安いといわれる地方移住後の生活費、思わぬ出費に要注意
AIで「仕事が変わる」は6割以上 「労働時間は変わらない」も6割超える
「ドンキ×ユニー」の1号店が初公開、GMS事業再建の一歩となるか
一夜にして5千万円近くが消失、“恐怖指数”金融商品の恐怖
  • このエントリーをはてなブックマークに追加