「抱いて。私たち...このままじゃダメになる」苦悩する女にハイスペ夫が突きつけた、残酷な一撃とは

「抱いて。私たち...このままじゃダメになる」苦悩する女にハイスペ夫が突きつけた、残酷な一撃とは

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  • 更新日:2018/10/22

私たちには呪いがかけられている。

いつでもかわいらしく身ぎれいに、
だって「女の子なんだから」。
人の輪を乱さずに、まわりに気を配るの、
だって「女の子なんだから」
男性を立てて。プライドを傷つけちゃだめ、
だって「女の子なんだから」。

キャリアを手にし、妻や母となっても、影のようにつきまとう呪いの正体とは?

これまでに、“女子力おばけ”萌美や、“暴走アモーレ”綾女、そして、呪いを解いた女、留美子の過去と現在を紹介した。

さて、今回の呪われた女は、先週も登場した…

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〈呪われた女file.4〉
名前:みゆき(仮名)
年齢:34歳
職業:総合人材会社・営業
あなたにとって“女子力”とは?:彼女→妻→母とコマを進められる力

“人生のコマが進まない女”みゆき・34歳

「みゆきはさぁ、旦那のこと殺したいって思ったことないの?」

日曜午後3時、『雪ノ下銀座』のカウンター席。元同僚が唐突に放った一言に、堂場みゆき(34)は「国産レモンのパンケーキ」をつつく手を思わず止めた。

「…ないかー!あるわけないよね。みゆきの旦那、イケメンで稼いでてハイスペだし。うちとは大違い!」

みゆきの返事は待たず、うちなんてひどくて、とその後は延々と旦那の愚痴をこぼす。みゆきと同期入社の加奈(34)は、いつもこうだ。

独身の頃はよく2人で連れ立ち、コリドー街でナンパ待ちなどしたこともあった。

“彼女”から“妻”へ、女の人生のコマを先に進めたのはみゆきだ。31歳を目前にして、3年付き合った大手ディベロッパー勤務の彼氏とついに結婚を決めたのだ。

しかし“妻”から“母”へのコマを先に進めたのは–

「やばい、私も結婚したい!てか彼氏作らなきゃ!」とみゆきの結婚式で大騒ぎしていた、加奈だったのだ。

32歳、元同級生と交際半年で結婚。さらにその半年後には妊娠が発覚し、今や1歳の男の子のママである。

だからこうして2人で会うのも、実に1年半ぶりだ。

「みゆきはいつ会っても綺麗だねえ。全身お手入れ行き届いてます、って感じで、女子力高い!」

違う。こんなものは女子力でもなんでもない。

みゆきは、“妻”のまま4年間ずっとコマが先に進まない自分の人生を苦々しく思った。

そして今朝、夫の芳樹(35)が放った信じがたい一言…

–ごめん…無理。君とするなら、死んだほうがマシ

「あるよ」

甘酸っぱいパンケーキの欠片をコーヒーで流し込む。

「旦那を殺したいって思ったこと、私もあるよ」

夫がみゆきに放った、信じがたいモラハラ発言。夫婦はなぜそうなってしまったのか

こうして呪いは生まれた:「30歳までには」

–6年前–

「あの子さあ、“出回り物件”だよな」

みゆき(28)は、その後に続く男たちの下品な冗談にわざと聞こえないふりをした。

会社の先輩(33)に懇願され半ば引きずられるような形で参加した、大手ディペロッパーとのお食事会。その先輩が化粧直しに席を立った瞬間、この一言だ。

出回り物件。つまり、ずーっと売り出し中で買い手がつかない女のこと。

–ああはなりたくない

と切に思う。しかし、それと同時に

–私もああなるかもしれない

とも思うのだ。

20代後半から30代前半。人生が80年だとしたらその1/10に満たないこのわずかな期間で、女の人生はほぼ決まると言っていい。

かく言うみゆきも、彼氏いない歴1年近くになる。ここ数年が勝負だ。ふさわしい相手を見つけ、恋愛、結婚、出産とうまくコマを進めていかない限り、その後は–

「孤独死、まっしぐら…」

「は?誰が?」

斜め前に座っていた男と目が合った。
あろうことか頭の中の声がもれてしまっていたらしい。

「あ、あのですね、これは」
「…変な女」

戸惑うみゆきを見て、その男は実に面白そうにケタケタと笑った。クールなイメージだったが、トムフォードのウェリントンの下にある目は子犬のように人懐っこい。

それが、のちに夫となる堂場芳樹との出会いだった。

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「35歳までには」

おかしい。こんなはずじゃなかった。

みゆきがそう気づいたのは、結婚して「堂場みゆき」となり1年半が過ぎた頃だった。

–芳樹と最後にしたの、いつだっけ…?

このままでは危ないという兆候はあった。結婚前の2年に及ぶ同棲期間で、芳樹とみゆきはひとときの情熱よりも互いの睡眠時間の確保を優先するようになっていた。

–まあ、そのうち変わるかもしれないし

正直、当時のみゆきは結婚を焦っていた。30歳を過ぎ、ここで決めなければ“出回り物件”コースは確実だから。

芳樹は、すこし口が悪く気遣いに欠けるところがあるものの、勤務先、年収、見た目、どれを取ってもみゆきがこれまで付き合ってきた男の誰よりもハイスペックだった。逃すという手はない。

–いつか、いつかね…

だがそのいつかは来ることのないまま、時計の針は容赦なくみゆきを責め立てる。

それは、35歳を過ぎると妊娠しづらくなるという説だ。

職場にも、30代後半で過酷な不妊治療に挑んだものの実を結ばなかった例は多くあると聞く。

34歳の誕生日、みゆきは意を決して夫に告げた。

「子どものことなんだけど。その…私の年齢的に、もう後がないと思うの」

「まあそろそろだよね、努力するよ」

芳樹の返事はどこか他人事で、ポンとスイッチを押せば、子どもはみゆきが勝手に産んでくれると捉えている節さえあった。

そして、その「努力」が何かの形で示されることのないまま–子づくり以前に、触れられることさえ一切ないまま–1日、また1日と時は過ぎていく。

ある朝、みゆきは思い切った行動に出た。

夫の寝起きを狙う。自分がこんなことをする女になるとは、28歳のあの時には想像すらしなかった。

–既成事実を作ってしまえば、勢いがつくかも…

芳樹を失いたくない。子ども以前に、このままでは夫婦として危ない。そんな切実な思いだったのだ。

そこで浴びせられたのが、あの一言だ。

–ごめん…無理。こんなことするなら、死んだ方がマシ

みゆきは、あまりのみじめさに「シャワー浴びてくる」と言い放つと、洗面所で声を殺して泣いた。

子づくり以前に、女として夫から否定されたみゆき。次の一手は…?

みゆき(34)は、覚悟を決めた。

あの日『雪ノ下銀座』で、パンケーキを喉に詰まらせながら夫への呪詛を吐き散らかすみゆきに、元同僚の加奈がかけてくれた言葉が背中を押したのだ。

「夫婦なんていつかはその領域に行くんだよ。みゆきの目的が子どもなら、色々と打つ手はあるんじゃない?」

不妊治療の成功率で名高い、某レディースクリニック。

加奈の言うとおり打つ手はある。要は、子供さえ、できればいいのだ。

待合室には何人もの神妙な面持ちの女たちが、じっと順番を待っている。皆それぞれに「こんなはずじゃなかった」という思いを抱えてここにいるのだろうか–

「22番でお待ちのお客さま」

やっとだ。ようやく順番が来た。しかし、診察室でみゆきを待ち受けていたのは、更に残酷で容赦ない一言だったのだ。

「残念ながら、当院ではご協力いたしかねます」

みゆきが希望した人工授精は、自由診療のはず。

「どういうことですか?」

「検査結果を拝見したところ、堂場さんは排卵周期も正常、子宮内部に異常は見られませんし、卵子の残量を示すAMHの値も4.86と問題ありません。つまり、自然妊娠が十分可能です」

みゆきの一周りほど年上に見える上品な女医は、幼児に言って聞かせるかのように声のトーンをやわらげた。

「差し出がましいようですが…今の堂場さんに必要なのは、治療に通うよりも、ご夫婦でよく話し合われることではないでしょうか」

話し合う。それで子どもができるなら苦労しない。

「試しに、でもいけませんか?費用なら…」

「堂場さん。不妊治療は、あくまでも治療です。お金でラクをしたり命を買うということではないんですよ」

「分かりました!もういいです!」

病院からどうやって帰ったのかは覚えていない。
やり場のない怒りと惨めさで、頭が沸騰しそうだった。

あの上品な女医先生はきっと知らないのだ。

正論が、人をいちばん傷つけるのだということを–

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「で…うちは駆け込み寺じゃないんだけど」

留美子さん(49)は、やれやれ、というように大げさに手を振った。巨大なイエローダイヤの指輪が光る。

銀座8丁目路地裏の2階にある、カウンター10席ほどの小さなバー、というかスナック。そこのオーナーでもある“ルミ姐”こと留美子さんの元に通うようになってもう4年になる。

通うといっても、幸せで充実している時は思い出しもしない。ここに足を運ぶのは決まって、今のように、どうしようもない袋小路にいる時だ。

留美子さんは、相変わらず絶好調である。

事業のいくつかを大手IT企業に売却し、十分潤っているにも関わらず新規事業に着手し始めたらしい。年齢はもう50にも届こうというのに、肌艶などはむしろ会うたびに若返っているようにも見える。

「どうしたら留美子さんみたいになれるんですか〜」

「なりたいの?女も結婚しないって決めてかかれば、それなりのことはできるのよ」

見えないところは傷だらけだけどね、と言って、留美子さんはジンジャーエールを差し出した。妊活中と伝えたから気を遣ってくれたのだろうか。

「まあ、でもあなたにはそんな覚悟も甲斐性も使命感もなさそうだから…」

カラ、ン。

その時、バーの扉が静かに開いた。

「ちょうど来た。みゆきちゃんに紹介したい人がいるの。久しぶりねー!玲子さん」

年齢は留美子さんと同じか少し下くらいだろうか。玲子さん、と呼ばれた中年女性は、欧米の女性政治家のように真っ白な歯を見せてにっこり笑った。

そう。それはまさに、運命の出会いだった。

この女性との出会いが、その後のみゆきの人生を大きく変えていくことになる。

▶︎NEXT:10月23日 火曜更新予定
みゆきに訪れた“運命の出会い”とは?ハイスペ夫の心を取り戻し、母になることはできるのか…!?

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