安野モヨコ「後ハッピーマニア」、若さを失った“45歳シゲタ”が恐ろしくて笑えない

安野モヨコ「後ハッピーマニア」、若さを失った“45歳シゲタ”が恐ろしくて笑えない

  • サイゾーウーマン
  • 更新日:2017/08/12
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「フィール・ヤング」(祥伝社)8月号にて掲載された、新連載「後ハッピーマニア」。かつては稲森いずみと藤原紀香主演でドラマ化もされた、安野モヨコのあの名作『ハッピー・マニア』の続編である。1995~2001年にかけて連載された同作。現在20代である筆者は後追いの読者であるため、当時の盛り上がりを知り得ないのだが、今回「フィール・ヤング」8月号が完売状態になって、そのため同誌の次号に再掲載されるといった事態から、その求心力の強さを感じることができる。

16年ぶりに姿を現した主人公・シゲタと、友人・フクちゃんである。シゲタは45歳だし、たしかフクちゃんは彼女の6つ上、つまり51歳! よって、2人の目の周りには容赦なく小ジワが刻み込まれているし、久しぶりに姿を現す連載初回とあってか、互いの風貌に対するセリフも多い。新たな男が入れ代わり立ち代わり現れる程度には、見た目の良い若いおねえちゃんとして描かれていた、かつての2人を知っているからこそ、あまりにも克明に描かれる女の酷なリアルに怯みかけたが、美顔器でガンガンスチームを焚いていたフクちゃんが、こうなるのだ。ましてや、それを描いているのは『美人画報』(講談社)の安野先生だ。「美容にどれだけ費やそうと、老いは必ずやってくる。そこはもう抗い切れないから!」というメッセージを感じとり、前向きに開き直るマインドを授かったのは、筆者の間違いか。

しかしとにかく、今作のキモ「後ハッピーマニア」に漂う悲壮感の在り処は、そこじゃないのだ。

若さを失ったシゲタにハッピー要素はあるか?

「ふるえるほどのしあわせってどこにあるんだろう これからもそれを探していくのかな」――自身にゾッコンLOVEな男・タカハシと結ばれ、結婚式を挙げようとする寸前の、シゲタのこうしたモノローグで前作『ハッピー・マニア』は終わった。そして、そのタカハシに「好きな人ができた」と離婚を申し出され、かつてのごとくフクちゃんのところへ泣きつきに行くところから、今回の「後ハッピーマニア」は始まる。

「45歳で離婚で無職…」と、自分が身ひとつである様に肝を冷やすシーンがあったが、シゲタが丸腰なのは今に始まったことじゃない。「すてきな奥さん」になることを夢に見て、いい男とのセックスチャンスを追いかける傍らで、書店店員、陶芸家のアシスタント、美容部員、試食販売員、水商売、編集アシスタントと何のキャリアも積まず職を転々。現実にはおそらくできっこない、家賃を4カ月滞納する場面だってあったが、それらのどんなシーンも『ハッピー・マニア』がギャグマンガだから見ていられた。

しかし、そのギャグを支えていたのは、ほかでもない20代後半女性・シゲタカヨコの若さ、そこから漲るバイタリティではなかったか。全財産が7,000円でも無職でも、ヤった男に嫁がいてもボケていられたのは、まだまだ可能性の秘められた明日がやって来たからではなかったか。若さを失ってなおガチで丸腰のシゲタを、一体誰が笑えるのだ。

正直言って、今回の「後ハッピーマニア」、懐かしい顔ぶれに再会できること以外、ハッピー要素が皆無なのである。どーしようもない女が家庭に収まってなんとかやってると思ってたら、最悪の状態で出戻ってきたこの事態。ましてや、唯一の友人と言っても過言ではないフクちゃんとも、ここ5年ほど会っていなかったという。子どもは作っていないようだし、この15年間、マジで一体なにして過ごしてたんだよ、シゲタ……。

現在ちょうど「ハッピー・マニア」時代のシゲタと同じ年の頃を生きる読者としては、「自分の幸せを結婚の一本柱で構成させるのはやめとけ」という教訓と共に、「失くなりゆく若さを引き換えに、何かを得なければ……」という強迫観念を連れて、じんわりとした腹痛を呼び起こさせる、恐ろしい1話なのだった。

次回作が描かれるのは、現在連載中の「鼻下長紳士回顧録」次巻を描き上げた後、おそらく来年あたりになるとのこと。最強に焦れったいけど、首を長くして余裕で待つ!
(岡山今日子)

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