【インタビュー】『ハリポタ』から『ファンタビ』へ...魔法界を知り尽くした監督&製作者の信頼関係

【インタビュー】『ハリポタ』から『ファンタビ』へ...魔法界を知り尽くした監督&製作者の信頼関係

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  • 更新日:2016/12/01
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『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(C) 2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C) JKR.

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「アクシオ!(来い)」

エディ・レッドメイン演じるニュート・スキャマンダーが、イタズラ好きな魔法動物ニフラーに向かって放った “呼び寄せ”呪文。このニフラーは、宝石やコインのようなキラキラしたものが大好き。魔法のトランクから逃げ出したニフラーをようやくつかまえるべく、ニュートが呪文をかけたのだが、もふもふのおなかから次々飛び出す“宝物”とともに、くるりと回転しながら呼び寄せられていくニフラーの超絶的なかわいらしさには、悶絶する人が続出。

このシーンは、『ハリー・ポッター』シリーズと同じ世界を舞台に新しい主人公と魔法動物たちが活躍する『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』を象徴する、印象的なシーンの1つとなっている。

約5年ぶりの完全新作にして、新シリーズの始まりとなる本作。映画はお馴染みの「ヘドウィグのテーマ」から幕を開けるが、冒頭から、『ハリポタ』シリーズにもたびたび登場した“日刊予言者新聞”の“アメリカ版”の紙面が続き、一気に魔法の世界へと誘われる。

「あれは、実は最後のほうに考えて付け足した部分だったんだ。最初からアイデアがあったわけでもないし、脚本にも書かれていなかったんだ」と、『ハリポタ』シリーズ後半4作、そして本作を手がけたデイビッド・イェーツ監督は語る。「後から追加したのは、あのシーンがあることで、一瞬にして世界観とその文脈が伝わると思ったからなんだ。自分たちがいまいる現実世界から、この映画の世界への入口になるし、映画の世界の空気感を一瞬にして感じることができると思った。あれを観た瞬間に、“さあ、この映画の世界を楽しもう”という気持ちになれると思うんだよね」。

その“日刊予言者新聞”には、アメリカ魔法界の最近の出来事や、『ハリポタ』での最大の敵ヴォルデモートとはまた違う“闇の魔法”の暗躍が、ページをめくるように次々と示されていく。

「嬉しかったのは、実際、(テスト試写で)あのシーンを気に入ってくれた観客がすごく多かったということ」と、イェーツ監督は続ける。「あのシーンで物語の序章のようなものを見せることで、この世界の文脈が理解できて、より物語を理解してくれる人が増えたんだよね。だから、あれを見せることで映画の本題にじっくりと入っていける、そういう大事な役割を果たしていたんだ」。

そんな監督の言葉を受け、これまでの『ハリポタ』全作をプロデュースしてきたデイビッド・ヘイマンも、「あれがなかったときは、映画がどこか落ち着きのない、ふわふわしたものになっていたんだよね」とふり返って語る。加えて監督も、「あの壮大なオープニングがなかったら、何かすごく穏やかで、気まぐれな感じになっていたんだよね。(作品が持つ)空気感そのものを変えてしまったんだよ」と語り、その決断に自信を覗かせる。

新しいシリーズを牽引する主人公の魔法動物学者ニュートを演じるエディは、そんなイエーツ監督について、超大作であるにも関わらず「まるで“インディ映画”を作るような親密さがあったところが好きだ」と語っていた。

「それは僕の中でも大事な哲学なんだ。ハリウッド映画は巨大で、どれも同じように思えてしまうことがあるかもしれない。だけど、インディ映画のようなパーソナリティがあれば、それぞれが自分たちが何ができるのかを考えられるし、自分の力をどう発揮すればいいのか分かる。そうやって、みんなの力が結集してこそ、1つの大きな素晴らしい映画ができると思っているからね。だから、僕にとって、みんながそう思える環境を作るのはすごく大事なんだ」。

一方、ヘイマンは「デイビッド(・イェーツ)が撮影現場で作り上げる空間は、巨大なセットがあっても、特殊効果があっても、究極的には非常に人間的なものなんだよね」と、監督の手腕に言及する。「この物語には魔法も出てくるし、ファンタジーではあるけど、でも、究極的には人間について描いたものなんだ」と、シリーズの神髄にも触れた。

しかも、今回の『ファンタビ』は、『ハリポタ』シリーズの原作者J.K.ローリング自らが、映画のために脚本を書き下ろしている。「彼女と仕事できて本当に感動的だったよ」と監督は言う。「彼女には恐れのない想像力があるんだ。だから、それをいかにコントロールするのかも大事だった。彼女の想像力を最大限に活かしながら、僕らのアイデアも取り入れてもらい、アイデアを固めていくことが大事だったんだ」。

脚本は、何度も書き直しが行われたという。「例えば、初期の脚本はすごく若々しい感じで、少し重みに欠けていたんだよね。その段階では、この物語でいったい何を訴えたいのかが分かりづらい内容だったんだ。だけど、それを書くことが、ジョー(J.K.ローリング)にとっては物語を発展させていく上で重要なことだったんだよね。それに、初期に書いた脚本の多くの部分は、この映画の中にしっかりと残っているしね」。

しかし、「第2稿はすごく暗くて、ものすごく緊迫したものになりすぎてしまったんだ(笑)」と監督は明かす。「つまり、完全に逆の方向に振り切れてしまったんだよね。それで、6か月間の執筆期間を経て、少しずつジョーが、本当に演奏したいと思っているメロディを奏でられるような脚本に仕上げることができた。彼女は最終的には、自分でその方向性を見い出していったんだ」。

「いま僕らは、(『ファンタビ』シリーズ)2本目の制作に取りかかっているわけだけど、ジョーにあるとき、『とりあえず物語のアウトラインを12ページくらいで書いてほしい』とお願いしたんだ。彼女はすでに脚本を書き始めていたんだけど、その前に『現時点での基本的な道筋を書き出してほしい。それがあれば、僕らは目指すべき方向を目指して進んでいけるから』ってね。すると、それをお願いしてからたった2日後に、彼女は102ページの脚本を書き上げていたんだ。しかも、その102ページ分は本当に最高の内容だったんだよね」。

「本当に最高だったね」とヘイマンも頷くと、「そこにはまったく無駄がなかったし、しかも、彼女にはどうしても書かずにいられない、という独創性があったんだ」と監督は続ける。「ありきたりな方法で物語を描くことを常に嫌がる人なんだ。そのおかげで、これまでの映画は誰も観たことのないような作品になった。一番大事なのは、彼女が重要視する物語を伝えるプラットフォームを作ってあげることなんだよね」。

「それで、この脚本の2稿目を書いているときに、彼女が5本の映画にしたいと言ったんだよ」と、監督は打ち明ける。「『5本の作品がどういう展開になるのかも、もう分かっている。こういうふうに進んでいくの』って言ってね」。

また、ヘイマンはこう語る。「今回の作品の素晴らしいところは、『ハリー・ポッター』映画を観ていなかったとしても楽しめるということだよ。ただ、もし『ハリー・ポッター』映画を観ていたら、この映画の中に繋がっている世界観があるから、それに気づくと、絶対に違う意味でより楽しいとは思う。新しい世代にも響くものがあるからね。でも、この映画だけ観ても、意味は成立するんだ」。

そう、今回の『ファンタビ』は、これまでの魔法世界について何の知識もなくても、1本の映画として楽しむことができる。ヘイマンは原作がない分、「観ている人たちが『なるほど、あの部分は描かなかったんだ。ここは映画でも描いたんだ。次はこんなことが起きる』なんて思いながら観ることもない。それって観る人たちにとっても、すごく新鮮だと思うし、エキサイティングだと思うんだよね」と語る。

「最初から映画館という場所で観客が物語と結びつきを感じるというのは、すごくエキサイティングだよね」と、監督も言う。「何が起きるのか分からない状態で、映画館に観客が来るのは最高だと思うよ」とヘイマンが言えば、「何もかもが期待だらけだからね」と監督も応じる。

そんな魔法界の物語が、これだけ多くの人たちを惹きつけてやまない理由は何だろうか?

イェーツ監督は「キャラクターたちにあると思うよ」と断言する。「ジョーはそういうキャラクターたちを作り上げる才能の持ち主だからね。彼らがどんなふうに見えようとも、“自分の仲間にしたい”と思うような人たちばかりだと思うんだ。『ハリー・ポッター』では、ハリーとロンとハーマイオニーがいて、本作ではニュートとティナとジェイコブとクイニーがいる。みんな、ものすごくかわいい。それは世界の人たちに通じると思うんだ。それから、僕が一番好きなビーストは、サンダーバードだね。すごくかわいいと思うから」。

すると、ヘイマンは「この映画が人気があるのは、魔法動物も“より人間らしく”描かれているからだと思う」と続ける。「僕らは魔法動物を人間と同じような視点で見ている。だから、彼らがいじめられたりすると、人間がいじめられているように思えてしまう。僕らが一番描きたいのは、結局は人間だと思うんだ」。

「だから、恋愛関係も描きたい、というのは当然だよね」とヘイマン。本作では、ニュート&ティナ、ジェイコブ&クイニーという、“かわいい” 2組の大人のカップルが誕生する。すでに映画を目にした人たちは、エディをはじめ、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドルら、演じたキャストたちにもすっかり夢中になっている様子だ。

では、本シリーズでの“闇の魔法使い”グリンデルバルトについては…?

「グリンデルバルトのほうが(ヴォルデモートより)危険だと思うよ」と、監督はズバリ言う。「グリンデルバルトは、彼の哲学で人々の思考や心を奪うことができたからね。ヴォルデモートのやっていることは、より分かりやすくて。弱者をいじめるし、誰であっても押しのけたいと思っているような人なんだ。そして腕力によって支配しようとする。だけど、グレンデルバルトは、頭のいいやり方をするから危険だよ」。

そんな監督の言葉を受け、ヘイマンも「彼のやっていることには同意はできなくても、なぜやっているのか理解はできる。この映画の中でも、『なぜ僕ら(魔法使い)は隠れていなくてはいけないのか?』と言っているしね」と語る。アメリカの魔法界と人間界は、完全に分断された状態にあるためだ。2作目以降は、よりダークさを増していきそうだが…。

つい先日、『ファンタビ』シリーズ全5作も手がけることが決まったイェーツ監督は、「これから数年も、素晴らしい物語を語り続ける機会を得られる。それが何より嬉しい。僕らには、この世界を愛してくれた人たちのために、映画を観に来てくれた人たちのために、自分自身に挑戦して、より良い作品を作っていくという責任がまた生まれるということなんだ」と真摯に語る。

そして、監督とともに『ファンタビ』シリーズを育てるヘイマンも、「僕らの関係性でいいのは、お互い、エゴがないこと。お互い、自分たちが作っている作品に対して同じような野心があること。それから、自分たちがこれまでやってきたことに同じように感謝していて、一緒に仕事をしてきた人たちにどれだけ恵まれてきたのかにも感謝していること」と語る。「幸い、僕らの友情関係は確固としているし、信頼できるものだ。だから、お互い挑戦し続けることができるんだ」。

では最後に、『ハリポタ』シリーズの主人公たちとの現在の友情は?

ヘイマンは、「子どもの成長をものすごく誇りに思っている親戚のおじさんになった気分だよ」と言う。「例えば、エマ(・ワトソン)が国連で“He For She”キャンペーンのためにやったスピーチを見たかい? 俳優として彼女がいまやっている活動は、本当に素晴らしいことだと思うんだ」。

「かと思えばダン(ダニエル・ラドクリフ)も、彼が選ぶ映画を観ると、その勇気が素晴らしいよね。必ずしも、誰もが好きになるような映画ではないかもしれないけど。彼は失敗を恐れていない。勇気がある証拠だ。エマとは今週ランチを食べたし、ダンにも数か月前に会ったんだ。彼らに毎日会うことはないし、ルパート(・グリント)とは1年くらい話してない。だけど、彼らが僕の人生にとって、いまだにすごく大事な存在であることに変わりはないよ」と明かす。

特に最近のエマについては、「彼女のおかげで、“He For She”での活動は、ものすごい数の人たちが注目することになった。だから、彼女が人間として成長している姿を見て、本当に誇りに思うよ」。

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