燃料電池の本格普及は「鉄道」から、ディーゼルエンジンCumminsの提案

燃料電池の本格普及は「鉄道」から、ディーゼルエンジンCumminsの提案

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/11/22
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ディーゼルエンジンの最大手メーカーである「カミンズ(Cummins)」は、ゼロエミッション時代の到来を見据え、水素燃料電池などの新たなテクノロジーに意欲を燃やしている。同社のコア事業はトラック向けエンジンだが、今後は電車やバス向けのエンジンに大きなビジネスチャンスがあると考えている。

インディアナ州コロンバスに本拠を置くカミンズは、船舶や大型トラック、バス向けのディーゼルエンジンを製造している。同社は11月16日、「Hydrogen Day」と呼ばれる水素燃料電池技術に関するイベントを開催し、燃料電池や定置式発電システム、燃料タンクのほか、企業が自前で水素を製造するための電解槽を提供するという戦略を打ち出した。

同社の会長兼CEOであるTom Linebargerは、今後水素燃料市場が活性化する上では、運送業者や鉄鋼メーカーも水素を活用してCO2削減を図ることが望ましいと考えている。

「化石燃料から脱却しなければならないことは誰もがわかっている。問題は、規制緩和や他の理由によってゼロエミッション化の経済性がいつ改善するかということだ。補助金が支給されている分野では、既に経済的メリットが出ている。水素燃料電池の導入が進んでいるのは、電車やバスだ。なぜならば、これらは2地点間を往復するため、始点と終点に水素ステーションを設置すれば十分だからだ。投資効率を高めるためには、水素ステーションを大量に設置することを避け、個々の設備の稼働率を上げることが重要だ」とLinebargerは話す。

カミンズが水素燃料電池を強化する背景には、運輸業界全体のゼロエミッション化推進が挙げられる。トヨタやホンダ、ダイムラー、現代自動車は、過去10年間に渡って水素燃料電池車を販売しているが、水素ステーションの数が限られていることや、テスラに代表されるEVの普及が妨げとなり、乗用車の分野では苦戦が続いている。

イーロン・マスクは燃料電池を否定
しかし、EVに比べて軽量で燃料補給が短時間で済むことなどから、大型トラック向けでは事業機会が広がっている。トヨタや現代自動車、ダイムラー、スタートアップのニコラなどは数十億ドル規模の投資を計画しており、カミンズも大きなチャンスを見出しているのだ。

燃料電池はオンデマンドで発電し、排出されるのは水だけだ。クリーンな乗り物として数十年前から宣伝されてきたが、コストの高さや耐久性、水素ステーションの数が少ないことなどから普及は進まなかった。また、イーロン・マスクは、バッテリーに比べて燃料電池は非効率だとして、”fool cell”と馬鹿にしてきた。

しかし、水素を天然ガスからではなく、再生可能エネルギーから生産できるようになって低コスト化が実現すると、多くの自動車メーカーは燃料電池に大きな可能性を見出すようになった。

Linebargerは、マスクの発言について「1つのソリューションを保有している者は、自身のソリューションを擁護するものだ」と述べた。「製鉄所や製油所でも、運輸業界と同じように水素が大量に消費されるようになるだろう。これらの分野は、バッテリーでは対応できない」と彼は話す。

カミンズによると、水素を生成する電解槽の売上は、2025年までに4億ドルに達する見込みだという。

バイデン政権の追い風
米大統領選で、ジョー・バイデンがドナルド・トランプに勝利したことは、カミンズにとって追い風となるかもしれない。トランプ大統領は、化石燃料の開発を重視し、厳しい燃費規制を撤廃した。これに対し、バイデンは気候変動対策としてCO2排出を削減する政策を重視し、EV利用の促進を図ろうとしている。

カミンズの強みは、ディーゼルとバッテリー、水素という3種類の技術を網羅していることだ。「我々は、顧客に対してそれぞれの技術の利点を正直に説明していきたい。我々は、既にバイデン次期政権と連携し、我々の技術を奨励してもらうよう働きかけている」とLinebargerは話す。

カミンズで新電力事業部門を率いるAmy Davisによると、同社の究極のゴールは、大型トラック向けに燃料電池パワートレインを供給することだという。しかし、そのためにはディーゼルエンジンと同等の経済性を実現する必要があり、コスト低減を図るのにしばらく時間を要するという。

「電車」はコスト合理性が高い
「我々が短期的に電車向け事業に専念しているのは、パワートレインと燃料のコストが操業コストの50%と、大型トラックの80%に比べてはるかに低いことが理由だ」とDavisはプレゼンテーションの中で述べた。カミンズは、フランスのコングロマリット、アルストム(Alstom)と提携し、同社がドイツで展開する燃料電池列車「コラディア・リント(Coradia iLint)向けに燃料電池パワーシステムを提供している。

「電車は、トラックと異なり走行ルートが固定されている上、水素を補給するために必要なインフラのコストが少ない。さらに、公的な補助金を利用すれば、水素列車を購入する方が既存の鉄道を電化するよりも安く済む。これらの理由から、燃料電池の導入はまず電車やバスで進み、大型トラック市場に浸透するのはかなり遅れてからになるだろう」とDavisは述べた。

ニューヨーク証券取引所に上場するカミンズの株価は、11月16日に2%下落し、231.86ドルとなった。

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