『あざとくて何が悪いの?』が示す新しい番組評価の形 芦田太郎Pが意識する“熱狂を生む要素”

『あざとくて何が悪いの?』が示す新しい番組評価の形 芦田太郎Pが意識する“熱狂を生む要素”

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/11/21
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●トレンド入りやTVerランキングを重視

中島健人『あざとくて』参戦 田中みな実「私があと10コ若かったら…」

10月にレギュラー化されたテレビ朝日系バラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』(毎週土曜21:55~ ※一部地域除く)が、新しい形で成果を出している。Twitterで毎週トレンド入りするのはもちろん、ドラマがトップを占める傾向にあるTVerの再生回数ランキングでバラエティでは異例の上位に入るなど、ネット上を中心に大きな反響が寄せられているのだ。

従来の絶対的価値基準だった世帯視聴率だけを見ると「苦戦」とレッテルを貼られてしまう数字だが、こうした新たな指標で番組が評価されるという次のステージに、テレビ局は移行しているようだ。演出・プロデューサーの芦田太郎氏に、その実感などを聞いた――。

○■視聴率以外の好反響からレギュラー化

山里亮太、田中みな実、弘中綾香アナウンサーとゲストが、“あざとい”男女のエピソードの再現VTRを見ながら、“あざとさ”について語り尽くす同番組。

昨年9月から3回の単発放送を経てレギュラー化したが、単発のときから「そこまで世帯視聴率をとっていた番組ではなかったんです」という。それでも、「SNSや見逃し配信の再生数の良さ、それから(放送)事後にネット記事になりやすいといった、視聴率以外の反響が良かったこと。それに加えて、若い女性が強い共感力を持って見ている番組ということで多方面から好反響が寄せられたことがあってのレギュラー化だと理解しています」と、芦田Pは話す。

その上で、「(視聴率の)数字を獲りにいってないと言ったらウソになるし、もちろん僕も獲りたいと思ってやってるんですけど、まずは単発の放送時以上にトレンド入りやTVerのランキングを圧倒的に伸ばしていこうというところを頑張っているので、うまく視聴者の方に反響をいただけているのかな、という走り出しですね」と、ここまでの手応えを語った。

特にTVerの再生回数は、バラエティでは異例の実績で、中島健人がゲスト出演した11月7日放送分は約40万回をマーク。テレ朝動画・ABEMA・GYAO!も含めた見逃し配信のトータルでは、10月10日放送分(有吉弘行ゲスト回)が約45万回を記録している。この好調ぶりに「ここまで配信に強いと思って企画書を書いたわけではなかったんです」と驚きながら、その大きな要因として、MC3人の存在を挙げる。

「美しさやあこがれといったことで、あそこまで強く発信し、かつ嫌悪感を抱かれずに同性から支持を受けるアナウンサーって、今までのテレビ史でもあまりいなかったんじゃないかと思うんです。単純にバラエティの面白さの前に、田中さんと弘中の2人が何を言うかに対して期待されるインフルエンサーとしてのパワーがあるんだろうというところと、そのインフルエンサーたちを山里さんがバラエティとしてイジって消化させるという良い掛け算になっている部分があるのかなと思っています」

○■再現VTRの人選、選曲にこだわり

また、番組制作においては、随所で盛り上げる要素作りを意識している。

例えば、再現VTRに登場する役者の人選では、「14日の放送に出てもらったアンジュルムの上國料萌衣さんのような、ドメジャーな音楽番組にはバンバン出てこないけど実力があって、コアなファンから『もっと日が当たってほしい』と思われている子が、スタジオの中島健人さんに絶賛されると、局所的にいろんな熱狂が生まれていくと思うんです」と意図。

音楽でも、「番組の世界観に合う邦楽という縛りを作って、ランキングトップ10に入る曲よりは、センスを感じる曲にこだわっていることに、分かる人が気づいてくれるような選曲にしています」という。

具体的には、芦田P自身がSpotifyで番組に合いそうな曲をリスト化し、それをプロの音効(音響効果)スタッフが参考にして選曲。使用された楽曲は、放送回ごとにSpotifyでプレイリストを公開しており、「最近は曲を使用させていただいたアーティストの方から直接ご連絡を頂いたり、SNSで『“あざとくて”で私の曲が使われた!』とつぶやいてくれたりしています」と反応があった。

中でも、単発時代にシンガーソングライター・Reiの曲を使用すると、「彼女が番組をイメージした曲を書き下ろして送ってくれて、それをレギュラー初回放送からオープニング曲にさせてもらったんですよ。僕は普通に好きでカッコいいと思って使っていたので、『番組オリジナル作ってくれるなんて最高かよ!』って思いましたね」と、新しい連鎖が生まれている。

こうして“熱狂を生む要素”を散りばめることで、「多角的に盛り上がれる番組でありたいというのを目指しています」とのことだ。
○■一画面で意味が分かる画に

編集で意識しているのは「一画面に切り取ったときに情報を全部詰めて、そこで完結して意味が分かるものになる」ということ。それを象徴するのが、TVerやTELASAのサムネイル画像だ。

例えば、11月7日放送分では、<好きをサラッと言って包囲する好きサラ男子を実演>のサイドテロップ、<ツンデレだな カワイイ>と声をかける中島健人とそのテロップ、そして言われた弘中アナがときめいている姿の静止画を採用しており、「この日に起きていることを報じるスポーツ新聞の見出しみたいなものですね」と、分かりやすさを重視。結果として、番組をキャプチャした静止画がSNSで拡散されるという波及効果も生まれている。

●「あざとい」は日本語特有の表現も…アジア各国で配信
反響は国内にとどまらず、韓国、中国、台湾をはじめとするアジアの13の国と地域でも番組が配信されている。単発時代よりアジア諸国から大きな反響とオファーがあり、ここまで拡大したのだという。

芦田Pは「世界にウケると思って作ってなかった」というが、テレ朝の国際部署の担当者によると、日本の女性たちに対して興味があること、かわいい女性がどんな努力をしているのかを知るすべがなかったこと、男性と話す姿のリアルさが勉強になること…と要因を推測。それに加え、シンプルに田中と弘中アナのかわいさがウケていると分析しているそうだ。

興味深いのは、「あざとい」という意味の言葉が日本語にしか存在しないにもかかわらず、従来はネガティブだったこの言葉の価値基準を見直すという視点で作られた番組が、海外でも受け入れられていること。

ちなみに、各地域での番組タイトルを直訳すると、台湾は『恋愛策略、それが何か?』、中国は『ちょこっと思惑、それが何か?』、韓国は『キツネ(=小悪魔)っぽくて何が悪いの?』。英語圏の国では「wily=ずる賢い」という言葉を「あざとい」に置き換えているという。

○■前のめりに制作側としても参加する田中みな実

芦田Pと言えば、田中みな実が『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)の密着中に『あざとくて何が悪いの?』の放送後、番組に対して意見の電話を入れた相手だ。あれは密着カメラを意識した行動ではなく、普段から番組に対して気づいたことを、実際に電話やLINEで、意見や提案をしてくるのだという。

「『こうしたらもっと面白いんじゃないか』『こういう企画はどうか』と思いついたら連絡をくれるんです。『プロフェッショナル』では俺へのダメ出しでしたけど(笑)、ポジティブな提案もしてくれます。あそこだけ切り取ると、“田中みな実が演出に口出しして、スタッフがその言いなりになってる”と見えちゃうかもしれないですけど、『絶対こうじゃなきゃ嫌だ』という人ではなく、ディスカッションができる方なので、すごく前向きな1人のディレクター・プロデューサーとして参加してもらってる意識が強いと思いますね。もともと、田中さんありきで企画書を書いて、その思いや意図もキャスティングのときに伝えたので、それが彼女にとってとてもモチベーションになっていると思うんです。だから、ここまで前のめりに制作側としても参加してくれている番組って、うちだけだと思います」

ちなみに、11月12日放送のドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ)で、ゲスト出演した田中が「あざとくて、何が悪いのよ!!」と叫ぶシーンがあったが、「(事前には)全く聞いてなかったです(笑)。でも、局を超えてああやって番組の名前を出してくれるのはありがたいですね」と感謝していた。

●面白いと思ったものをそのまま吐き出せる番組

これまで、水曜19時台の『あいつ今何してる?』を主に担当してきた芦田P。この時間帯は「僕の世代(※85年生まれ)はほぼ家にいませんし、我々の親とか、小さいお子さんを持っている家庭の方々を主にターゲットにしているので、楽しくてやりがいはあるんですけど、そこでノビノビ自由な思考で作るというのは、正直クリエイティブとしては結構苦しい部分があったんです」と本音を吐露する。

そうした思いを抱える中で立ち上げた番組が、『あざとくて何が悪いの?』。「自分の面白いと思ったものをそのまま吐き出せるピュア度がかなり高くて、反響もいただけているので、今のところはありがたいことにいい感じかなと思ってます」と充実の様子だ。

○■“あざとい”切り口に新企画続々構想

“あざとい”エピソードは、「いろんな人に『ネタなくなるでしょ』って死ぬほど言われます(笑)」というが、このワードを切り口に、様々な企画を展開していく計画。

「1話5分くらいで5話完結のあざとい女性を描いた連載ドラマを毎週やるとか、男性が女性を2人きりでデートに最初に誘うちょうどいい店を紹介する“あざといい店”とか、『こういうあざとい人いるわ~』って女の人に密着した風のフェイクドキュメンタリーとか。“あざとい”という処世術・自己プロデュース力を多角的に見せる企画をどんどんやっていきたいと思います」と構想を明かしてくれた。

●芦田太郎1985年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、08年にテレビ朝日入社。以来バラエティ制作で『雑学王』『爆笑問題の検索ちゃん』『ナニコレ珍百景』『関ジャニの仕分け∞』『関ジャム 完全燃SHOW』などを担当し、現在は『あざとくて何が悪いの?』のほか、『あいつ今何してる?』『シタランドTV』『さまぁ~ず論』『なにわ男子と一流姉さん』の演出・プロデューサーを務める。

中島優

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