元プロ、NTT東日本・井端弘和コーチの「野球脳」と指導法

元プロ、NTT東日本・井端弘和コーチの「野球脳」と指導法

  • 毎日新聞
  • 更新日:2022/06/23
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都市対抗野球大会の東京2次予選で、試合前のノックで笑顔を見せるNTT東日本の井端弘和コーチ=東京都大田区の大田スタジアムで2022年6月1日午前9時45分、浅妻博之撮影

社会人野球の経験はないが、大学の同期に誘われ、ユニホームを着ることになったNTT東日本の井端弘和コーチ(47)。プロ野球・中日時代は「アライバコンビ」の愛称で親しまれ、巨人でも内野手として活躍した。そして今、社会人野球で感じることがある。

1回戦の対戦カードは 都市対抗野球組み合わせ

社会人の選手に意識させたこと

5~6月にかけ、都市対抗野球大会の東京2次予選が行われた東京都大田区の大田スタジアム。NTT東日本のチームの中に、ユニホーム姿で試合前のノックを打つ井端コーチの姿があった。攻撃の時にはストップウオッチ片手に一塁コーチに。試合後のミーティングでも、選手の輪に入って試合の感想を話す場面があった。

「最初は(元プロ野球選手で)選手と距離を感じましたけど、今は一緒になってできている。今年から練習でもユニホームを着るようになって、距離が縮まった気がします。ユニホームって非常に大事なんだなと思いました」

井端コーチは、NTT東日本の出身でもなければ、社会人野球の経験もない。飯塚智広前監督と亜細亜大で野球部の同期だった縁から、プロ時代にNTT東日本のグラウンドで自主トレをしたことがあった。それがきっかけでチームの指導を頼まれ、2019年から臨時でコーチを務めてきた。飯塚前監督は「彼のすばらしい野球脳というか、プロで培ってきた考え方を伝えてほしかった」と語る。

井端コーチが3年間の社会人野球指導で感じたことは何か。「プロに近い技術があっても試合で生かせない。練習でどんなにできても自信にはなりません。失敗してもまずやることが次につながる。そこを意識させました」

4年目の今季からはユニホームに袖を通し、一塁コーチに立った。「プロはリーグ戦だけど、都市対抗はトーナメントで負けられない。受けてしまうから序盤から積極性が出てこない」。負けられない思いが強すぎて、社会人は気づかないうちにグラウンドで受け身になりがちだと指摘する。

膠着(こうちゃく)状態が続いている時こそ、一つ先の塁を狙う走塁に突破口を見いだすべきだと考える。「取り返せる序盤のミスはいいけど、それができなければ勝負どころの中盤、終盤ではもっとできなくなる。四球やエラーなど相手からもらったチャンスを有意義に生かさないといけない」と強調する。

プロと社会人の違い

東京オリンピックでは日本代表「侍ジャパン」の内野守備・走塁コーチとして金メダル獲得に貢献した。「一塁コーチをやっていても『走っていいよ』と言えばプロの選手はすぐ走る。一発勝負の怖さを感じながらもやりきるのがプロの中の一流。社会人は怖さを知ってしまうと動けなくなる」。五輪も社会人と同じ短期決戦。重圧のかかる舞台で比較しても、プロとの違いが浮き彫りとなった。

自身も13年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表として活躍した。「試合開始前に震えるぐらいの緊張感を味わいました。それでも食うか、食われるかの試合をしているので、やられる前に仕掛けられるのがプロの日本代表だと思う」

では、社会人の選手にどういう言葉を投げかけているのか。「いい投手なら、打てる球は1球くるかどうか。自分の打席で1度も打てる球がこないこともある。わずかなチャンスも逃さない意識を持たせるようにしています」

NTT東日本で今季、ヘッドコーチから昇格した平野宏監督は「スタッフは私も含めて現役時代から気心知れた同じ環境で育ってきたので、視点が同じ。その点、違う世界で野球を経験した井端コーチは、ベンチにいて『えっ』って思うところが出てくる。第三者の目を入れながらチームの地力を上げたい」と話す。井端コーチの「野球脳」は選手だけでなく、首脳陣にも影響をもたらしている。

7月18日に開幕する都市対抗野球大会。東京都・NTT東日本は大会第4日、21日の第2試合で浜松市・ヤマハと対戦する。井端コーチの雄姿が東京ドームで見られるか。【浅妻博之】

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井端弘和(いばた・ひろかず)

1975年生まれ。神奈川県出身。東京・堀越高を経て入学した亜細亜大では、NTT東日本前監督の飯塚氏と俊足の1、2番コンビを組んだ。大学卒業後は日本生命に入る予定だったが、中日からドラフト5位で指名を受け、98年に入団した。2013年シーズンオフに巨人へ移籍。現役時代は、プロ18年間でゴールデングラブ賞を7回受賞するなど守備の名手としてならし、プロ通算1912安打の勝負強い打撃でも存在感を示した。

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